Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

Azure Virtual DesktopのDisaster Recoveryとは?災害復旧性を高めビジネスの継続性を確保する方法を解説

Category: 入門編

2024.06.07

Disaster Recovery 実現に必要な要素や手順とは?ビジネスの信頼性を高める方法を解説

近年、デジタル化が進むビジネス環境では、企業が直面するリスクも増大しています。特に、自然災害、サイバー攻撃、システム障害などの予期せぬ事態は、企業活動に重大な影響を与えかねません。こうしたことを背景に、ビジネスの継続性とデータの安全性を確保することが、企業にとって避けられない重要課題となっています。

企業がこれらのリスクから迅速に復旧し、ビジネスのダウンタイムを最小限に抑えるためには、効果的な Disaster Recovery 計画が不可欠です。本記事では、 Azure Virtual Desktop の Disaster Recovery の基本、 Disaster Recovery の手順、そしてベストプラクティスについて詳しく解説します。

1. Azure Virtual DesktopのDisaster Recoveryの基本

Azure Virtual Desktop は今や企業のインフラとして重要な役割を果たしています。企業がどのような状況下においても業務継続性を確保するために、 Disaster Recovery を実現する必要があります。

Disaster Recoveryとは

Azure Virtual DesktopのDisaster Recoveryの基本

Disaster Recovery とは、自然災害、サイバー攻撃、ハードウェア故障など、予期せぬ災害が発生した際に、 IT システムやデータを迅速に復旧させ、ビジネスの継続性を保つための計画や実現方法、体制などを指します。

具体的には、企業が事業継続困難となった際に、システムの復旧ポイント( RPO )、復旧までの時間( RTO )、復旧時の状態( RLO )を定義し、それらを守るために重要なデータのバックアップや、システムの冗長化、災害発生時の操作手順などを整備します。

ビジネス継続計画( BCP )の一環として、企業が事業を継続し、財務的損失やブランドイメージの毀損を最小限に抑えるために、 Disaster Recovery 計画は欠かせないものと言えます。

Azure Virtual Desktop環境におけるDisaster Recoveryの概要

Azure Virtual Desktop は、高可用性を目指して設計されており、複数の Azure リージョンにわたって分散されたインフラ上で運用されます。そのため、一部のコンポーネントに障害が発生しても、トラフィックは自動的に残存するインスタンスへ転送されるか、別のリージョンへのフェールオーバーが行われます。

ただし、ユーザーが管理するセッションホスト VM (仮想マシン)については、リージョン全体の停止時でもアクセスが可能であるよう、 Disaster Recovery を考慮して設計する必要があります。一般的な Azure Virtual Desktop では、プライマリサイトが停止した場合に備えて、Azure Site Recovery( ASR )を利用して VM をセカンダリサイトにレプリケートする方式を取ります。

ASR は、 VM の状態、データ、および構成を継続的に同期し、整合性を維持しながら障害発生時にはセカンダリサイト側への迅速なフェールオーバーを可能とするサービスです。 ASR により、レプリケーションとフェールオーバー管理が自動化され、災害発生時に迅速かつ効果的に切り替えを実施し、システムの可用性レベルを保つことが可能となります。

2. Azure Virtual DesktopのDisaster Recovery手順

次に、 Azure Virtual Desktop の Disaster Recovery に必要な構成要素と具体的な復旧方法について解説します。

Disaster Recovery 計画に必要な構成要素

Disaster Recovery 計画に必要な構成要素

Azure Virtual Desktop の Disaster Recovery に必要な構成要素は下記の通りです。

仮想マシン(VM)

セッションホストとして機能する VM は、災害発生時に迅速に復旧できるよう、 ASR を使用して地理的に離れたセカンダリサイトにレプリケートします。プライマリサイトがダウンした場合でも、セカンダリサイトからのサービス提供が可能になります。

仮想ネットワーク(VNET)

仮想ネットワーク(VNET)は、災害時にフェールオーバーできるよう、セカンダリにも仮想ネットワークを事前に設定しておく必要があります。災害時は ASR によってプライマリネットワークの設定をそのまま引き継げるようになります。

ユーザーID/プロファイル

ID 管理を行うドメインコントローラー( DC )は、災害時にもセカンダリサイトで DC の機能を使用できる必要があります。セカンダリサイトに個別の DC を構築する、 ASR で DC をレプリケートするなどの方法があります。ユーザープロファイルの管理には FSLogix (ユーザーのプロファイル管理ツール)を使用することで、災害復旧時にも迅速にプロファイルを復元できるようになります。

データのバックアップ

Azure Virtual Desktop のデータバックアップには複数の方法があります。 VM のデータは Azure Backup 、ストレージデータは使用するストレージのバックアップ機能、 Azure Files 共有を使用している場合は Azure Files のバックアップ機能など、対象によってバックアップを使い分けます。

アプリ間の依存関係

アプリケーションが他のアプリケーションやデータベースとの連携をセカンダリサイトへそのまま引き継げるよう、必要な設定データや、データベースなどのサービスもセカンダリサイトにコピーまたはレプリケートしておく必要があります。

Azure Site Recoveryを活用した復旧方法と手順

ASR を使用することで、以下の手順に従って災害発生時の復旧プロセスを自動化し、簡素化することができます。

レプリケーションの設定

ASR を使用して、必要な VM とデータをセカンダリサイトにレプリケートします。レプリケーションは自動化されており、常に最新の状態が維持されます。

フェールオーバーの実施

災害が発生した際には、 ASR を通じて自動的にフェールオーバープロセスが開始されます。システムのダウンタイムを最小限に抑え、迅速に復旧作業を行うことができます。

フェールバックと復旧

状況が安定した後、オリジナルのプライマリサイトが復旧するまでの間、セカンダリサイトがプライマリサイトの役割を果たします。プライマリサイトが復旧次第、 ASR を使用してフェールバックを行い、通常の運用に戻すことが可能です。

3. Azure Virtual DesktopのDisaster Recoveryのベストプラクティス

最後に、 Azure Virtual Desktop の Disaster Recovery を最適な構成で実施するためのベストプラクティスについて解説します。

Disaster Recovery のベストプラクティス

Azure Virtual Desktop の Disaster Recovery を効果的に実施するには、計画的かつ継続的なアクションが重要です。

定期的なバックアップ

Azure BackupやAzure Files等の機能を使用し、全ての業務データとアプリケーションに対して定期的なバックアップを実施し、データの安全を保証します。

自動レプリケーションの利用

ASR などのツールを使用して、データと VM 、連携関係にある VM やデータベースなど、依存関係にあるサービスを自動的にセカンダリサイトにレプリケートし、迅速なフェールオーバーを実現します。

Disaster Recoveryの定期的なテスト

実際にDisaster Recoveryプランを定期的にテストし、システムが計画通りに機能するか確認します。

Disaster Recovery計画の継続的な更新

システム構成やビジネス要件の変更に応じてDisaster Recovery計画を定期的に見直し、必要に応じて更新を行います。

Azure Site Recoveryを活用した Disaster Recovery の事例

横河電機(※1)は、中期経営計画「 Accelerate Growth 2023 」の下でデジタル変革( DX )を進め、その一環としてオンプレミスの仮想デスクトップ環境から Azure Virtual Desktop への大規模な移行を行いました。

この移行により、約 700 台の VDI が Azure へと移され、テレワークやリモートワークが必要な社員に対して、より柔軟で安定したデスクトップサービスが提供されるようになりました。このプロセスでは、 ASR が Disaster Recovery の確保に利用され、企業の業務継続計画( BCP )と IT リソースの最適化に貢献しました。

この技術的な移行とモダナイゼーションを通じて、横河電機は VDI 環境のクラウド移行だけでなく、将来のスケーラビリティと業務の柔軟性を大幅に向上させることができました。今後、横河電機はこのクラウド基盤を活用して、さらなるビジネスモデルの革新や新しいサービスの提供を目指し、グローバル市場での競争力を強化する計画を進めています。

※参考1:AMM を活用して、オンプレミス仮想サーバー環境からAzureへのシステム移行を完遂!さらなるDX化を推進する横河電機

4. まとめ

本記事では、 Azure Virtual Desktop の Disaster Recovery の基本、やベストプラクティスについて詳しく解説しました。適切な Disaster Recovery 計画とAzureサービスの活用により、 Azure Virtual Desktop の利便性と信頼性を最大限に引き出すことができます。ぜひ、専門家の助けを借りながら導入を検討してみてください。

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Tag: Azure Virtual Desktopの Disaster Recovery

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