Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

マルチクラウドの未来と今後のトレンドは?効果的に活用するための技術動向

Category: 入門編

2024.09.17

トレンドを理解して効果的なマルチクラウド戦略を立てよう

近年マルチクラウドの導入が急速に進んでおり、多くの企業は複数のクラウドサービスを組み合わせることでパフォーマンスの最適化や冗長性の強化、リスク分散を図っています。

しかし、マルチクラウド戦略を効果的に実施するためには、最新の技術トレンドとビジネストレンドを理解することが不可欠です。本記事では、マルチクラウド市場の現状と成長要因から、注目すべきトレンド、さらに今後の展望や注意点まで詳しく解説します。

1. マルチクラウド市場の概況

近年多くの企業で複数のパブリッククラウドを組み合わせて利用するマルチクラウドの導入が増加しています。

日本オラクルによるグローバルと日本におけるマルチクラウド利用動向の調査では、エンタープライズ企業の 1500 名の回答者のうち、 98% がマルチクラウドをすでに導入している、もしくは導入計画があることがわかりました。

出典:マルチクラウドが新たな常識に | オラクル | Oracle 日本

また Fortune Business Insights によるマルチクラウド管理市場レポートでは、マルチクラウドの市場規模は 2022 年に 70 億米ドルと評価されており、 2030 年までに 500 億 4,000 万米ドルまで成長すると予測されています。

出典:マルチクラウド管理市場規模、シェア | レポート [2030]

このようにマルチクラウド環境はスタンダードになりつつあり、今後もさらに規模が拡大していくことが予想できます。

2. マルチクラウドのトレンド

利用拡大が続くマルチクラウドですが、より効率的に利用するために注目されるトレンドについて解説します。

マルチクラウド運用管理プラットフォーム( MCMP )の導入

MCMP ( Multi-Cloud Management Platform )は、複数のクラウドサービスプロバイダのリソースやサービスを一元的に管理、監視、最適化するためのプラットフォームです。

マルチクラウド環境の普及に伴い、異なるプロバイダのサービスを個別に管理することの煩雑さが課題となっています。 MCMP は、こうした課題を解決し、企業がマルチクラウド戦略を効果的に展開するためのツールとして注目されているのです。

具体的には MCMP には次のような機能があります。

機能 内容
統合ダッシュボード 複数のクラウドプロバイダのリソースや使用状況を一元的に監視し、リアルタイムで確認できる。
リソース管理と最適化 各クラウドのリソース利用を分析し、コスト効率の良い利用方法を提案する。自動スケーリングやリソースの再配置もサポートする。
セキュリティ管理 各クラウドのセキュリティ設定を一元的に管理し、一定のセキュリティレベルを保つ。
自動化とオーケストレーション 複雑なワークフローやプロセスを自動化し、異なるクラウド間での操作をシームレスに行う。
アラートとレポート リソースの異常やコストの過剰使用を通知し、定期的にレポートを生成する。
マルチクラウドのトレンド

AIaaS(AI as a Service)との統合

AI は現在非常に注目を集める技術ですが、膨大な量のデータや計算能力などを扱う専門知識が必要です。

しかし、近年さまざまなクラウドサービスプロバイダが、専門知識がなくても AI を利用できる AIaaS ( AI as a Service =サービスとしての AI )を提供し始めています。たとえば Azure Machine Learning や Amazon SageMaker などがあります。

マルチクラウド環境下でも、異なるクラウドプロバイダの AI サービスを組み合わせることでより効果的に利用することが可能です。たとえば異なるクラウド環境でトレーニングされたモデルを比較し、最も優れたものを選択することもできます。

データ分析の最適化

ビジネスにおける迅速な意思決定を可能にするために、市場トレンドや顧客の行動を即座に把握するリアルタイムなデータ分析がますます重要になっています。各プロバイダはこれらのニーズに対応するために、高速で信頼性の高いデータ処理プラットフォームを提供しています。

マルチクラウド環境では、各クラウドプロバイダの異なる分析ツールを組み合わせることで、より柔軟で強力なデータ分析が可能です。たとえば、リアルタイムデータ処理とストリーミング分析に強みがある Google Cloud Dataflow と、データウェアハウスの機能と高度な分析ツールを統合した Azure Synapse Analytics を組み合わせて利用するといった方法があります。

この場合、 IoT デバイスや Web アプリケーションから収集した大量のデータを Dataflow ですぐに処理・変換し、 Azure Synapse Analytics で複雑な分析を行ったうえで、 BI ツール( Power BI など)と連携させることも可能です。

単一のクラウドに依存する場合よりもメリットが多いため、企業はより迅速かつ正確な意思決定が可能となり、競争優位性を維持できます。

3. マルチクラウドの今後の展望と注意点

最後に、今後のマルチクラウド環境に予想される展開と、運用における注意点について解説します。

マルチクラウドの普及と標準化

マルチクラウドの利用は今後さらに普及し、企業において標準的な IT 戦略の一つとなると予想されます。異なるクラウド間での相互運用性を向上させるための標準化や、ツールの提供がこれまで以上に進み、マルチクラウド環境の管理はよりシンプルになるでしょう。

たとえば高度なオーケストレーションツールや、 AI や機械学習を活用した自動化技術の進展などが期待されます。

セキュリティリスクの増加

複数のクラウド環境にデータを分散することで、攻撃対象となる範囲が増えセキュリティリスクが増加するおそれがあります。とくにデータの移動中や各クラウド間でのアクセス管理の脆弱性を狙われる可能性が高いです。全体的なセキュリティ戦略を見直し、各クラウドプロバイダのセキュリティ機能を統合的に活用する必要があります。

スキルギャップの発生

単一のクラウド環境よりも、マルチクラウド環境のほうが運用は複雑になるため、高度な知識・スキルをもつ人材が必要です。しかしこうした人材は不足していることが多く、今後さらにスキルギャップは深刻になるでしょう。解消するためには人材育成に投資したり、専門業者へアウトソースしたりすることも検討すべきです。

4. まとめ

企業におけるマルチクラウドの導入が増加しているなかで、競争優位性を確保するためには技術的・ビジネス的なトレンドをキャッチして効果的に取り入れていくことが大切です。とくに MCMP などのツールや AI などの最新技術は今後さらに重要視されるでしょう。セキュリティ面での注意点もありますが、ぜひ今度の動向にも注目してみてください。

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