目次
移行計画書を理解して適切なシステム移行を実施しよう
移行計画書は、システムを新しい環境へ移行する際に、関係者の認識を揃え、円滑かつ確実に作業を進めるために欠かせません。業務継続性の観点から、想定外の事態も考慮した計画を立てることが重要です。
近年は Azure などクラウドサービスの普及により、クラウド移行を検討するケースも増えています。本記事では、移行計画書に含めるべき主な項目と、Azure移行を想定した検討ステップをわかりやすく解説します。
1. 移行計画書とは
移行計画書とは、システムの移行前に作成する計画書です。
システムを新しい環境へ安全かつ確実に移行するための実行計画を文書化したもので、システムを移行する目的や範囲、移行方法、体制、スケジュールといった移行に必要不可欠な項目が体系的にまとめられています。
移行計画書の目的と役割
移行計画書の目的と役割は以下のとおりです。
移行計画書の目的 |
|
---|---|
移行計画書の役割 |
|
移行計画書の作成タイミング
移行計画書を作成するタイミングは要件整理と現状分析をしたあと、移行方式の方針が決定した段階で行います。
システムを開発する流れはシステム企画、要件定義、設計、開発、テスト、システム移行、カットオーバー、運用に分かれます。移行計画書は要件定義から設計フェーズにて移行方針が固まった段階で策定されます。
2. 移行計画書に盛り込むべき項目と考慮点
移行計画書に盛り込むべき主な事項は以下のとおりです。
- 移行の目的・範囲・方式
- 体制とスケジュール
- リスクと代替策(コンティンジェンシープラン)
移行の目的・範囲・方式
移行計画書に盛り込む内容として、移行の目的、移行する範囲、移行の進め方を明確にすることが重要です。
移行の目的にはビジネス環境の変化、新規ビジネスの立ち上げなどといったものがあります。技術的な目的もあり、ハードウェアや OS の保守・サポート終了対応、新技術への対応などが挙げられます。
移行する範囲は、企業のシステム全体を移行するのか、システムの一部を移行するといった点を考慮することが重要です。
主な移行の進め方は以下のとおりです。
移行の進め方 | 移行ステップ | 適したケース |
---|---|---|
一括移行 | 既存環境を一斉に移行する | 小規模なシステムで変更箇所が少ない |
順次移行 | 業務単位や機能単位に分けて順次移行する | 中規模~大規模なシステムで複数の業務が連携している |
並行運用移行 | 既存環境と新システムを変更稼働させながら移行する | ユーザー教育に時間を要し、リスクを極小化したい |
パイロット移行 | 一部機能や業務を先行してから本格的な移行を実施する | 移行したシステムの評価期間を設けたい |
スケジュールと体制
本番移行を進めるにあたり、具体的なスケジュールを策定します。
スケジュールには、移行準備期間・当日作業・事後対応を含め、全体の流れが把握できるように構成します。計画を立てる際は、最終完了の目標時点から逆算して、適切な作業期間を見積もることが重要です。
体制については、関係チームとメンバーを明確にし、移行作業の担当分担や連絡系統が把握できるように整理します。各作業の実施者や報告先、予期せぬ事象が発生した際のエスカレーション経路も定めておくことが重要です。
リスクと代替策(コンティンジェンシープラン)
システム移行時には、業務影響を最小限に抑えるためのコンティンジェンシープランをあらかじめ用意します。
検討すべき主な代替策は以下のとおりです。
- 既存環境への切り戻し手順の整備
- 一時的な業務継続策(ワークアラウンド)の検討
移行準備段階で可能な限り検証を行い、有効性を確認するとともに発動タイミングや判断基準も明確にしておく必要があります。
3. Azureの移行計画書を作成する際の3つの準備ステップ
ここからは、 Azure 移行を例として、移行計画書を作成する際の3つの準備ステップを解説します。
ステップ1:現行環境の棚卸と要件整理のうえ移行対象を整理
まずは現行環境の棚卸と要件整理を行い、移行対象を整理します。
現行環境の棚卸で洗い出す項目は以下のとおりです。
- サーバーの台数とスペック
- 各サーバーで稼働しているOS・アプリケーション、および提供機能
- サーバ間の依存関係
Azure には、「 Azure Migrate 」という包括的なプラットフォームがあり、既存環境の構成情報やアプリ間の依存関係を自動で収集・可視化できます。これにより、移行対象の選定、コスト試算、最適な移行方式の検討を効率的に進めることが可能です。
ステップ2:移行方式とAzureサービスの選定
要件に適した移行方式の検討を行います。業務システムの重要度や依存関係、性能要件などを加味し、どの方式で Azure に移行するかを判断する必要があります。
移行方式 | 具体的な内容 | 該当するAzureサービス |
---|---|---|
リホスト( Re-Host ) (リフトアンドシフト) |
オンプレミスサーバーを単純移行でクラウドへ移行 | Azure Migrate / Azure Virtual Machines |
リプラットフォーム ( Re-Platform ) |
OS やミドルウェアの更新を含めてクラウドへ移行 | Azure App Service / Azure SQL Managed Instance |
リファクタ ( Refact ) |
一部コード修正を行い、クラウドネイティブ環境に最適化して移行 | Azure Kubernetes Service / Azure Container Apps |
リアーキテクト ( Re-Architect ) |
システム構造を見直して再構築し、スケーラビリティや柔軟性を向上 | Azure Kubernetes Service / Azure Cosmos DB |
リパーチェス ( Re-Parchase ) |
既存製品をやめて SaaS など新しいサービスに置き換え | Microsoft 365 / Dynamics 365 |
リタイア ( Retaire ) |
不要なシステムや機能を廃止・統合 | – |
リテイン ( Retain ) |
要件上クラウド移行せず、既存環境を維持 | – |
より具体的な業務・技術課題に対して、どのような Azure サービスが対応し得るかというユースケース視点で整理すると、例えば以下のような分類ができます。
課題のケース | ソリューション |
---|---|
VMware を使用した仮想化基盤を移行したい | Azure VMware Solution |
OS のサポート期限が迫っている( End of Service ) | Extended Security Update が一定期間無料となる基盤への置き換え( Azure Stack HCI、Azure VMware Solution など) |
オンプレミスのストレージをクラウド化したい | Azure Storage の利用( Azure Files、Azure NetApp Files など) |
SQL Server をクラウドに移行したい | SQL Server on Azure VM 、 Azure SQL Managed Instance 、 Azure SQL Database |
ステップ3:スケジュールと体制整備
移行方式に基づき、 Azure 上でのリソース展開や移行作業のスケジュールを立てます。
その際、所要時間の見積もりや、リージョンごとのリソース制約や構成変更の影響を加味して、業務へ影響を与えないように計画することが重要です。
例えば、新しい Azure 環境で DNS 設定を変更しても、世界中の DNS キャッシュが反映されるまでに一定時間かかることがあり、移行直後正しくアクセスできない利用者が出る可能性も考慮します。
4. まとめ
移行計画書は既存システムを新たに移設、構築し直すときに作成する計画書で、移行計画書作成時には、始めに既存環境の棚卸と移行方式を明確にします。
既存環境を Azure に移行する際には、 Azure で提供されているサービスを理解し、既存環境で実現できている機能をどのように移行するか考慮することが重要です。
Rworks ではオンプレミス環境から Azure へ移行する際の計画書作成支援・ PoC 設計・導入展開まで中立的な立場で適切な導入支援を行います。システム移行の際にはぜひご利用ください。
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