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RPO・RTOの短縮を実現するための、Azureの主要サービスも紹介
自然災害やシステム障害のリスクが高まるなか、企業の IT インフラにおいては、トラブル発生時に「どれだけ早く、どこまで復旧できるか」が重要な経営課題となっています。特に、オンプレミス中心で業務システムを運用している企業では、クラウドの導入を進めるうえで、復旧戦略の見直しが求められているのではないでしょうか。
本記事では、災害復旧の指標である RPO (目標復旧時点)と RTO (目標復旧時間)の基本から、これらを短縮する方法、クラウドを活用した具体的な改善策までを解説します。
1. RPOとRTOとは
障害や災害発生時の業務停止リスクに備えるうえで、あらかじめ定めておくべき指標が RPO と RTO です。それぞれの意味と違いを解説します。
RPOとは
RPO ( Recovery Point Objective /目標復旧時点)とは、障害発生時に過去のどの時点までのデータを復元対象とするかを定める指標です。
例えば、 RPO を 1 時間と設定した場合、障害発生時から 1 時間前のデータを復元できる状態が求められます。つまり、障害発生時に最大で 1 時間分のデータ損失が発生するリスクを許容していることになります。
RTOとは
RTO ( Recovery Time Objective /目標復旧時間)とは、障害が発生してからどれくらいの時間内にサービスやシステムを復旧させる必要があるかを定める目標値です。
例えば、 RTO を 2 時間と設定した場合、障害が発生してから 2 時間以内にシステムを復旧できる状態が求められます。
RPOとRTOの違い
RPO はデータ損失の許容範囲、 RTO は業務停止の許容範囲を示しており、それぞれ異なる観点での復旧要件です。
指標 | 意味 | 対象 |
---|---|---|
RPO (目標復旧時点) | 障害発生時に「どの時点まで」のデータを復元させるか | データ |
RTO (目標復旧時間) | 障害発生から「どれくらいの時間内」にサービス・システムを復旧させるか | サービス/システム |
RPO も RTO も災害復旧計画( DR /ディザスタリカバリ)を考えるうえで不可欠な軸です。
両者ともゼロに近づけるほど理想的に見えますが、それを実現するには復旧体制の強化が必要となり、運用コストも増大します。自社の業務要件やリスク許容度に応じて、復旧要件とコストのバランスを取ることが重要です。
2. RPOとRTOを短縮する方法
ここでは、 RPO ・ RTO を短縮するために効果的な 4 つの方法を紹介します。
バックアップとデータ同期の最適化
RPO を短縮するには、できるだけ新しい状態のデータを保管しておく必要があります。そのためには、定期的なバックアップに加えて、リアルタイムに近いデータ同期を組み合わせるのが有効です。
バックアップについては、差分・増分バックアップの活用や、世代管理の適切な設計により、保管容量を抑えつつ頻度を高められます。また、データ同期はアプリケーションやシステムの特性に応じて、ブロックレベルやファイルレベルなど適切な方式を選定することで、整合性とパフォーマンスのバランスを最適化できます。
システムの冗長化によるサービス継続性の確保
RTO を短縮するには、障害が発生してもすぐにサービスを切り替えられる仕組みが必要です。その基本となるのが、サーバーやストレージ、ネットワーク機器の冗長化です。あらかじめ同一構成の機器を複数用意しておけば、一方が故障してももう一方で処理を継続できます。
さらに、障害時に自動的に待機システムへ切り替えるフェイルオーバー構成を導入すれば、復旧時間を大幅に短縮できます。
復旧手順・体制の整備による復旧精度向上
技術面の対策だけではなく、現場で対応する運用体制の整備も重要です。復旧手順はあらかじめマニュアル化し、誰が・いつ・何をするのかを明確にしておきましょう。さらに、定期的な復旧訓練や障害シナリオに基づくシミュレーションを実施することで、復旧の精度とスピードを高められます。
クラウドを活用したデータ保護と迅速な復旧
クラウドを活用すれば、バックアップの自動化や、復旧用環境の即時立ち上げなど、柔軟かつ迅速な復旧体制を構築しやすくなります。例えば、オンプレミスのファイルサーバーとクラウドストレージを連携させ、変更が発生したファイルをクラウド側へ反映するような構成をとれば、障害発生時にも最新のデータに近い状態で復元可能です。
加えて、クラウドは地理的に分散された拠点を持っており、災害時でもデータ消失リスクを抑えつつ、復旧先を柔軟に選択できる強みがあります。
3. RPO・RTOの短縮を支えるAzureの主要サービス
クラウドを活用して RPO や RTO を短縮するには、目的に合ったサービスを適切に選ぶことが重要です。ここでは、 Azure が提供する主要な 3 つのサービスと、それぞれの活用ポイントを紹介します。
Azure Backupで定期バックアップの自動化
Azure Backup は、 Azure 上の仮想マシン( VM )やオンプレミスのサーバー、 SQL Server などを対象に、定期的なバックアップを自動化できるサービスです。バックアップポリシーを設定することで、フルバックアップ・増分バックアップをスケジュール通りに取得し、ヒューマンエラーによる取得漏れのリスクを回避できます。
また、日次・週次・月次・年次ごとに最大で 99 年間の保持設定が可能で、用途に応じた世代管理や復元ポイントの設計により、 RPO の短縮と保管コストのバランスを取りやすい点も特長です。
Azure File Syncでデータ同期の最適化
Azure File Sync は、オンプレミスのファイルサーバーと Azure Files (クラウドストレージ)間で、一定間隔で自動的にデータを同期するサービスです。オンプレミスのファイル変更が Azure 側にも比較的短時間で反映され、障害発生時にも直近のデータを保持できるため、 RPO の短縮に貢献します。
Azure Site Recoveryで復旧時間と精度の向上
Azure Site Recovery は、災害発生時にシステムを迅速に切り替えるための DR (ディザスタリカバリ)サービスです。オンプレミスや他リージョンの仮想マシンを Azure 上にレプリケート(複製)し、数秒〜数分単位で変更を反映することで、 RPO の短縮に寄与します。
また、障害時には事前に設定した復旧プランに従って自動的に切り替えを行うことで、手動対応による復旧遅延を防ぎ、 RTO も短縮できます。さらに、復旧プランを事前にテンプレート化できるため、復旧手順の標準化と精度向上にも貢献するでしょう。
4. まとめ
自然災害やシステム障害のリスクが高まるなか、 RPO (目標復旧時点)と RTO (目標復旧時間)は、企業の事業継続性を左右する重要な指標です。両者を短縮するには、バックアップ・データ同期の最適化、冗長化構成、復旧体制の整備、クラウド活用といった多面的な取り組みが欠かせません。特に Azure のサービスは、自動化や高速復旧を実現し、コストと可用性のバランスを取るための強力な手段となります。
Rworks では、オンプレやクラウド基盤など幅広い選択肢に対応し、設計・構築から運用支援までを一貫してサポートします。自社の要件に合った復旧戦略を検討中の方は、ぜひご相談ください。
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