Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

Azure Functionsとは?効率的かつ高い機敏性と保守性を確保した開発手法を解説

Category: 入門編

2025.03.13

企業がサービスを素早くリリースするためには?アジャイル時代の最適な方法を解説

近年、システム開発において、マイクロサービスアーキテクチャを採用する例が増えています。マイクロサービスアーキテクチャとは、マイクロサービスと呼ばれる小さなコンポーネントを組み合わせてシステムを実装する手法です。

個々のサービスごとに独立して開発できる柔軟性と、他のサービスへの影響を最小限に留める保守性の高さがメリットです。マイクロソフトのクラウド「 Microsoft Azure 」では、マイクロサービスアーキテクチャを実現するためのサービスとして Azure Functions を提供しています。

Azure Functions とは、 Azure 上でコードをサーバーレスで実行するサービスで、こうしたサーバーレスの技術を活用することでマイクロサービスを実装することが可能です。

本記事では、サーバーレスとマイクロサービスアーキテクチャの概要やメリットを踏まえ、 Azure Functions の概要と実現できる処理シナリオについて解説します。

1. Azure Functionsとは

Azure Functions とは、マイクロソフトのクラウド「 Microsoft Azure 」が提供するサービスのひとつで、サーバーレスアーキテクチャを実装するためのサービスです。Azure Functions を活用することで Azure 上にマイクロサービスアーキテクチャを実現できます。

Azure Functionsの概要

Azure Functionsの概要

Azure Functions とは、 Azure 上で関数(コード)をサーバーレスで実行できるサービスです。 Azure Functions によりサーバーの構築や保守が不要となり、必要に応じてスケーリングも行ってくれるため、利用者はサーバーを意識することなくアプリケーション開発に集中できます。

また、 Azure Functions は C# 、 Java 、 JavaScript 、 Python など多くのプログラミング言語に対応しており、トリガーとバインドという機能により他のアプリケーションを起動し、アプリケーション実行結果の受け渡しを行うことができます。

これらの機能により、マイクロサービスアーキテクチャに必要なコンポーネント間通信や、同期/非同期通信などを実現することが可能です。

Azure Functionsの料金体系

Azure Functions は基本的に従量課金制ですが、下記の 3 通りのプランがあります。

  • 従量課金プラン
  • Premiumプラン
  • App Serviceプラン

従量課金プラン

従量課金プランでは、 Azure Functions により関数が実行された際のリソース使用量と、実行時間、実行回数に基づいて課金されます。

Premiumプラン

Premium プランでは、 Azure Functions により関数を実行した際の vCPU とメモリ使用時間に基づいて、 1 秒単位で課金されます。

App Serviceプラン

Azure の Web アプリケーションサービスである App Service の料金プランとして課金することも可能です。 App Service を他のアプリケーションのために使用する場合は、追加コストを支払うことなく、同じプランの中で関数を実行することが可能です。

Azure Functionsのメリット

Azure Functions を導入するメリットは下記の通りです。

コストの最適化

Azure Functions は従量課金モデルを採用しており、実行時間とリソース消費に応じて料金が発生するため、無駄なインフラコストを削減できます。無料枠も提供されているため、小規模なアプリや試験運用ではコストを抑えた利用が可能です。

スケーラビリティの向上

イベント駆動型の実行モデルを採用しているため、需要に応じてリソースを自動的にスケールできます。負荷が増加した場合でもシステム全体のパフォーマンスを維持しながら動作するため、大規模なシステムでも安定した運用が可能です。

開発の簡素化

Azure Functions ではインフラ管理が不要で、開発者はビジネスロジックの実装に集中できます。 C# 、 JavaScript 、 Python などの多様なプログラミング言語に対応しており、ローカル環境でも開発やデバッグが可能です。イベント駆動型の特性を活かし、複雑なワークフローをシンプルに構築できます。

他のAzureサービスとのシームレスな連携

Azure Functions は他の Azure サービスと統合できるため、システムの自動化やデータ処理の効率化が可能です。 Azure Logic Apps を活用すればノーコードでワークフローを作成でき、 Azure Event Grid を利用すればリアルタイムなイベント処理が可能です。 Azure Storage と連携すれば、データの変更をトリガーに自動処理を実行できます。

2. サーバーレスアーキテクチャとは

Azure Functionsはサーバーレスアーキテクチャを実現するサービスです。ここでは、サーバーレスアーキテクチャの特徴とメリットについて解説します。

サーバーレスとは

サーバーレスとは、サーバーに依存することなくプログラムを実行する技術で、サーバーレスの考え方を採用してシステムを設計・構築する手法をサーバーレスアーキテクチャと呼びます。サーバーレスにより開発者はサーバーの調達や構築、保守を行う必要がなく、開発リソースをアプリケーション開発に集中できます。

また、システムはサーバーが稼働していることを前提としていますが、 24 時間 365 日稼働している必要はありません。処理が実行される時だけサーバーが動作していればよいのですが、処理が実行されない時間は無駄なコストとなってしまいます。

この問題を解決する手法がサーバーレスアーキテクチャです。サーバーレスは、処理が実行された分のコストで済むため、サーバーレスを活用することにより、低コストで効率よくサーバーを運用できるようになります。

サーバーレスアーキテクチャの特徴とメリット

サーバーレスアーキテクチャの特徴は下記の通りです。

  • サーバーが不要
  • 高い可用性と拡張性
  • 利用した分だけコストがかかる

この特徴を活かすことで下記のメリットを得ることができ、俊敏で生産性の高い開発が可能となります。

  • サーバーの構築・運用コストがかからずコスト削減につながる
  • 可用性と自動スケールできる高い拡張性を持つ
  • 処理を実行しない時間はコストがかからずコスト削減につながる
  • モダンアーキテクチャの実現

イベント駆動型コード実行

イベント駆動型コード実行とは、ファイル受信やデータの更新など、定義されたイベントが発生すると、実行基盤(コンテナ等)が起動してあらかじめ設定しておいたプログラムを実行する仕組みです。コードを実行している間だけ CPU やメモリなどのリソースをコンテナとして確保するので、常時稼働のサーバーに比べて無駄なリソースが発生しにくいというメリットがあります。

この仕組みによって、コード実行時間での従量課金を実現しています。イベント駆動型コード実行の仕組みによってサーバーレスアーキテクチャは実現されていると言ってもよいでしょう。

3. マイクロサービスアーキテクチャとは

次に、マイクロサービスアーキテクチャについて解説します。マイクロサービスアーキテクチャという言葉を聞きなれない方も多いと思います。まず、マイクロサービスアーキテクチャとは何か、概要とメリット、使われている技術について解説します。

マイクロサービスアーキテクチャの概要

マイクロサービスとは、システムが提供するサービスを、マイクロサービスと呼ばれる小さな独立したコンポーネントを組み合わせて実装する手法です。サービスを小さなコンポーネント単位に分割することで、コンポーネント間の関係性をシンプルにして、それぞれのマイクロサービス単位に独立して開発、デプロイ、アップデートすることを可能とした開発手法です。

マイクロサービスアーキテクチャの特徴とメリット

マイクロサービスは、下記の特徴を持っています。

  • 疎結合で独立したプロセスとして動作する
  • 独立してデプロイやアップデートができる
  • ネットワーク経由で通信してタスクを実行する

マイクロサービスアーキテクチャは、この特徴を活かすことで下記のメリットを得ることができ、俊敏で生産性の高い開発が可能となります。

  • 高い機敏性とスケーラビリティ
  • 小規模チームによる高い生産性
  • 依存関係を最小限に抑えられる
  • 最適なテクノロジーの選択

高い機敏性とスケーラビリティ

マイクロサービスは個別にリリースが可能なため、バグ修正や機能単位のリリースが行いやすくなります。アプリケーション全体をリリースせずにサービスの更新が可能なため、バグ改修を行いながらも新機能を素早くリリースすることが可能です。また、マイクロサービス単位で拡張・縮小が可能となるため、アプリケーション全体をスケールアウトする必要がなく、柔軟なスケールが可能となります。

小規模チームによる高い生産性

マイクロサービスは規模が小さい機能であるため、小規模なチーム編成で機敏性の高い開発が可能です。大規模なチームにありがちなコミュニケーションコストや管理オーバーヘッドが不要のため、生産性を高めることが可能です。

依存関係を最小限に抑えられる

マイクロサービスは個々のサービスが他のサービスと依存しない疎結合のアーキテクチャです。疎結合の実現により、他のサービスが障害を起こしても影響なく動作可能です。また、マイクロサービスごとにデータを分離するため、データ更新時の影響を最小限に抑えることが可能です。

最適なテクノロジーの選択

マイクロサービスは独立性が高いため、他のアプリケーションに流用することが可能です。アプリケーションの必要に応じて適切なマイクロサービスを選択・組み合わせることで最適なテクノロジーを選択することが可能です。

マイクロサービスアーキテクチャで使われる技術

マイクロサービスアーキテクチャの特徴である独立性の高さは、共通的に使われる下記の技術により実現されています。

  • コンポーネント間通信
  • 同期/非同期メッセージ通信
  • サービスメッシュ

コンポーネント間通信

マイクロサービスアーキテクチャでは、各マイクロサービスがほかのマイクロサービスと「メッセージ」と呼ばれる情報をやり取りして処理の実行を行います。基本的に、メッセージのやり取りが処理のトリガーとなります。

同期/非同期メッセージ通信

マイクロサービス間でやり取りされるメッセージは、同期通信と非同期通信の2種類の通信方法があります。同期通信では、メッセージ送信元は送信先の処理結果を受け取るか、検知するまで処理を一時停止します。

一方、非同期通信では、送信されたメッセージは「メッセージキュー」に格納され、メッセージキューへの格納が完了したらすぐに次の処理に取り掛かれます。同期通信と非同期通信を必要に応じて組み込むことで複雑な処理を素早く柔軟に実行できるようになります。

サービスメッシュ

各マイクロサービスは、 IP アドレスなどの識別情報が動的に変動することが多いため、通信先のマイクロサービスを特定するための仕組みが必要です。このように動的に変動する識別情報を管理し、適切な送信先にメッセージを送信するための仕組みをサービスメッシュと呼びます。

4. Azure Functionsの使い方

Azure Functions を利用することでサーバーレスアーキテクチャ、マイクロサービスアーキテクチャの構築が可能です。では、具体的にどのように使えばよいのでしょうか。ここでは、 Azure Functions の基本的な使い方の例について解説します。

1.関数アプリ(Function App)の作成

Azure Functions を利用するには、まず「関数アプリ( Functions App )」を作成します。関数アプリは、関数の実行環境を提供するリソースであり、 Azure ポータル、 Azure CLI 、 Visual Studio Code などのツールを使用して作成できます。作成時には、サブスクリプション、リソースグループ、関数アプリ名、ランタイムスタック、リージョンなどの設定を行う必要があります。

2.関数の作成とトリガーの設定

関数アプリを作成したら、その中に実行したいコード(関数)を作成します。関数は、さまざまなイベント(トリガー)によって起動されます。例えば、 HTTP リクエストを受け取る HTTP トリガー、タイマーによる定期的な実行を行うタイマートリガー、ストレージの変更を検知する Blob トリガーなどがあり、用途に応じて適切なトリガーを選択し、設定します。

3.関数のテストとクリーンアップ

デプロイ後は、関数が正しく動作するかをテストすることが重要です。 Azure ポータルの「テストと実行」機能を使用するか、 Postman や cURL を利用して HTTP トリガーのリクエストを送信することで、動作確認を行います。また、 Azure Monitor と連携すれば、ログを確認しながら問題の特定が可能となります。

不要になった関数アプリやリソースは、 Azure ポータルや Azure CLI を使用して削除できます。クリーンアップを適切に行うことで、無駄なコストを削減し、環境の整理が容易になります。

4.ローカル開発とデプロイ

Azure Functions の開発は、ローカル環境で行うことが可能です。 Azure Functions Core Tools をインストールし、 Visual Studio Code などの開発環境と連携させることで、ローカルでの開発やデバッグが容易になります。

開発が完了したら、 Azure ポータルや Azure CLI を使用して、ローカルで作成した関数を Azure上の関数アプリにデプロイします。デプロイ先としては、従量課金プランや Premium プラン、 App Service プランなどがあり、ニーズに合わせて選択できます。

5. Azure Functionsのスケーリングとパフォーマンス最適化

Azure Functions は、負荷の変動に応じたスケーリング機能を備えており、適切なパフォーマンス管理が必要です。ここでは、 Azure Functions のスケーリングとパフォーマンス最適化について解説します。

スケーリングの仕組み

スケーリングの仕組み

Azure Functions には「従量課金プラン」というホスティング・オプションがあり、リクエスト数に応じてインスタンスが自動的に増減する仕組みを持っています。従量課金プランは、リソースを最小限に抑えつつ、必要なときにのみ関数を実行するため、コストを削減しながら柔軟なスケーリングが可能です。

一方、 Premium プランでは、事前に確保したインスタンスを用意することで、後述するコールドスタートを回避し、より安定した応答時間を確保できます。

コールドスタート問題への対策

サーバーレス環境では、リクエストが少ない状態が続くとインスタンスが停止し、次のリクエスト処理時に起動遅延が発生することがあります。これをコールドスタートと呼びます。 Premium プランを利用するか、定期的に関数をトリガーすることでコールドスタートの回避が可能となります。

メモリ・CPUリソースの最適化

関数の実行パフォーマンスを向上させるには、適切なメモリ割り当てが重要です。 Azure Monitor を活用し、実際のリソース使用状況を分析することで、最適なメモリ設定を調整できます。

負荷テストの実施

本番環境でのパフォーマンスを確認するために、 Azure Load Testing などのツールを利用して負荷テストを行うことが重要です。関数のスケール動作を事前に確認し、必要な最適化を施すことで、安定したパフォーマンスを維持できます。

6. Azure Functionsの活用シーンとユースケース

Azure Functionsを活用すると、具体的にどのようなことができるようになるのでしょうか。ここでは、Azure Functionsを活用して実現できる下記のシナリオについて紹介します。

  • Web APIの構築
  • データ処理の自動化
  • バッチ処理のスケジューリング
  • IoTデータのリアルタイム処理他のAzureサービスとの統合

Web APIの構築

Azure Functions は、軽量な Web API のホスティングに適しています。例えば、フロントエンドアプリケーションと連携するバックエンドAPIを構築することで、データの取得や処理を効率化できます。

HTTP トリガーを活用することで、シンプルな RESTful API を迅速にデプロイ可能です。また、 C# 、Java 、 JavaScript 、 Python など様々な言語に対応しています。

データ処理の自動化

データの変換、フィルタリング、統合などの自動処理にも Azure Functions は有効です。 Azure Blob Storage や Azure Cosmos DB などのデータストアと連携し、新しいデータが追加された際に関数を実行することで、リアルタイムのデータ処理を実現できます。

バッチ処理のスケジューリング

定期的なデータの集計やレポート生成などのバッチ処理にも適しています。タイマートリガーを利用することで、毎日、毎週、特定の時間に自動的に関数を実行し、業務の効率化を図ることができます。

IoTデータのリアルタイム処理

IoT デバイスから送信されるデータをリアルタイムで処理する用途にも適用できます。 Azure IoT Hub と組み合わせることで、センサーデータの収集・解析を行い、異常検知やリアルタイムの通知を実現できます。

他のAzureサービスとの統合

Azure Functions は、 Azure Logic Apps や Azure Event Grid などのサービスと統合することで、より高度な自動化を実現できます。例えば、 Azure Cognitive Services を活用して画像や音声データを解析し、その結果を基にさらなるアクションを実行するワークフローを構築可能です。

7. まとめ

サーバーレスやマイクロサービスアーキテクチャは、企業がサービスを素早くリリース・改修し、目まぐるしく変化する市場に合わせてビジネスを発展させるためのアーキテクチャです。Azure Functionsはサーバーレスやマイクロサービスアーキテクチャを実現するためのサービスのひとつですが、ひとつの技術に囚われず、要件に合わせて柔軟にサービスを使い分けることが重要です。

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Tag: Azure Functions Azureコンピューティング マイクロサービスアーキテクチャ

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