目次
Azure 仮想マシンのシリーズラインナップ、ユーザー事例等、サイジングに関するポイントをご紹介
DX 化推進、テレワーク環境の普及を背景に、クラウドで Windows OS のデスクトップが利用できる VDI、DaaS サービスを導入する企業が増えています。Microsoft 社が提供する Azure Virtual Desktop (以下 AVD ) はマルチセッション、従量制課金等といったクラウドサービスならではの様々なメリット活かすことができ、利用する企業が増えています。
しかしその反面、AVD 環境のサイジングを誤ると、過剰なコストが発生したり、リソース不足により業務に支障が発生したりするため、AVD を展開する時や、運用していく中での性能(スペック)の見積は非常に重要です。
本記事では、どのように最適なスペックを選定するかのポイントについて、Microsoft 社の推奨事項、ガイダンスと共に紹介します。
1. Azure Virtual Desktop 導入のメリット
AVD は、2019年にMicrosoft社が発表したデスクトップ仮想化( VDI )サービスです。デスクトップ環境をサービスとして利用する、Desktop as a Service( DaaS )に分類されるサービスであり、近年 VDI や DaaS サービスはテレワークのような場所を問わない働き方の普及に伴い、大変注目されているサービス分野です。本記事では AVD のメリットについて3点紹介します。
メリット 1 :既存のライセンスを活用できる
既に物理的なパソコンで Windows10 Enterprise ライセンスや Microsoft 365 の E3 以上のライセンスを利用している場合、AVD の利用もバンドルされている為、VDI 環境にスムーズに移行することができます。詳しくは Microsoft の公式ライセンスガイドをご参照ください。
メリット 2 :マルチセッションにより複数人でシェアできる
AVD は仮想マシンを複数人のユーザーでシェアすることができるマルチセッション機能に対応しています。一人一台パソコンが必要な物理環境と比較するとコストメリットが大きいと言えるでしょう。
メリット 3 :使った分だけの従量課金制
AVD は仮想マシンの起動時間に応じ、使った時間の分だけ課金される従量課金です。利用しない夜間や休日に仮想マシンを停止するなど、運用を工夫することでコストを節約する事が可能です。
それでは次にクラウド上で AVD を動作させるために必要な仮想マシンについて解説します。
2. 仮想マシンのシリーズラインナップについて
クラウド上で AVD 環境を用意するためには仮想マシンを展開する必要があります。この時、仮想マシンの性能を設定することを「サイジング」といいます。 主に vCPU、メモリをサイジングすることになりますが、その時 vCPU やメモリなどシステムのパフォーマンスを適正な状態に保つための使用率の指標を「ワークロード」といいます。
AVD の仮想マシン環境をサイジングする上で、Microsoft 社はワークロードに基づき、予め仮想マシンをシリーズ化しています。まずはこのシリーズをご紹介します。記載内容は参考である為、実際の利用時には公式ドキュメントで詳細を確認の上、利用する事をお勧めします。なお、各シリーズの利用事例はあくまでも仮想マシンの各シリーズにおける一般的な内容であり、AVD に特化した表記ではありません。
シリーズ名 | 内容 | 利用事例 |
---|---|---|
A シリーズ | 開発とテストに適した小規模、初心者、お試し向けのエントリレベルのシリーズです。 |
|
B シリーズ | 低い使用率から中程度の使用率に基づくワークロードを想定しつつ、突発的な需要増加時(バースト)にも対応するコストパフォーマンスに優れた経済的なシリーズです。 |
|
D シリーズ | 幅広いワークロードに基づく要件を想定した万能型シリーズです。 |
|
E シリーズ | メモリを大量に消費するアプリケーションに最適化されたシリーズです。 |
|
F シリーズ | 集中型のワークロード向けコンピューティングに最適化された仮想マシンシリーズです。 |
|
G シリーズ | 負荷の高いアプリケーション向けに最適化されたシリーズです。 |
|
H シリーズ | すべてのワークロードにおいて高いパフォーマンス確保するハイパフォーマンスコンピューティング向けに最適化されたシリーズです。 |
|
L シリーズ | ストレージ最適化され、高いスループット、レスポンス、大きなローカルディスクストレージと高いI/Oを必要とするアプリケーションに適したシリーズです。 |
|
M シリーズ | 高負荷のメモリを必要とし、超並列コンピューティング能力を必要とするビジネスクリティカルなアプリケーションに対応したシリーズです。 |
|
N シリーズ | 負荷の高いコンピューティング処理やグラフィック処理のワークロードに最適なGPUに対応したシリーズです。 |
|
このように、用途によって様々なシリーズが存在します。ご紹介したシリーズには、さらに vCPU やストレージのタイプによって細分化されたラインナップが存在します。詳しくは Microsoft 公式サイトにてご確認の上、利用する事をお勧めします。
それでは AVD のような VDI 環境では、どのようなシリーズが向いているのでしょうか?次項ではサイジングのポイントを解説します。
3. 仮想マシンのサイジングのポイント
AVD サービス利用で想定されるユーザー・利用ケースに対する推奨スペック(次項に記載)は Microsoft の公式サイトで詳細が紹介されています。
特筆するポイントは、シングルセッションでは少なくとも 2 つの vCPU コア、マルチセッションでは 4 つの vCPU が推奨されているという点です。企業規模にもよりますが、マルチセッションに対応しながら、AVD サービスを利用するのであれば、D シリーズ且つ最低限 vCPU4、メモリ 16 GB 以上の仮想マシンが最適と言えるでしょう。
記載内容はあくまで参考である為、実際の利用時には公式ドキュメントで詳細値を確認したうえで検討することをおすすめします。
また、AVD は「ホストプール」と呼ばれる仮想マシンの集合体で動作させます。ホストプール内の仮想マシンは全て同じスペックでなくてはならず、かつ、スペックを変更するにはホストプールを作り直す必要があります。
一方で、ホストプールへ参加する仮想マシン数の増減は簡単にできるため、一般的にはワークロードを指標にスペックを決め、ユーザーが状況をみながら仮想マシンを増やしていく運用方法が良いでしょう。
当社で AVD を導入する場合の進め方
AVD スペックは、業務内容に強く依存し実際に使ってみないとわからないという面があるため、当社で AVD を導入支援する場合は、以下のステップで進めています。
- AVD 導入設計・PoC をご支援するサービス:
- AVD(Azure Virtual Desktop)導入設計
- Azure 導入・移行 PoC
4. 仮想マシンのサイズ設定について
Microsoft 社は AVD サービスについて想定されるユーザー例(利用ケース)を以下のように予めモデリングしています。
- 基本的なデータ入力タスクを実行するユーザー
- コンサルタントと市場調査員
- ソフトウェア エンジニア、コンテンツ作成者
さらに Microsoft 社はこれらの想定されたユーザーに対し、AVD サービスについて推奨スペックを定めています。これはあくまでワークロードに基づく一般的なガイドラインとして紹介されているものです。
基本的なデータ入力タスクを実行するユーザー
項目 | 内容 |
---|---|
vCPUあたりの最大ユーザー数 | 2 |
vCPU / RAM / OS ストレージの最小値 | 4 vCPUs、16 GB RAM、32 GB ストレージ |
仮想マシンシリーズ | Dシリーズ、Fシリーズ |
利用アプリケーション例 |
|
コンサルタントと市場調査員
項目 | 数量 |
---|---|
vCPU あたりの最大ユーザー数 | 2 |
vCPU / RAM / OS ストレージの最小値 | 4 vCPUs、16 GB RAM、32 GB ストレージ |
仮想マシンシリーズ | D シリーズ、F シリーズ |
利用アプリケーション例 |
|
ソフトウェア エンジニア、コンテンツ作成者
項目 | 数量 |
---|---|
vCPU あたりの最大ユーザー数 | 2 |
vCPU / RAM / OS ストレージの最小値 | 8 vCPU、32 GB RAM、64 GB ストレージ |
仮想マシンシリーズ | D シリーズ、F シリーズ |
利用アプリケーション例 |
|
グラフィック デザイナー、3D モデル メーカー、機械学習研究者
項目 | 数量 |
---|---|
vCPU あたりの最大ユーザー数 | 1 |
vCPU / RAM / OS ストレージの最小値 | 6 vCPUs、56 GB RAM、340 GB ストレージ |
仮想マシンシリーズ | D シリーズ、F シリーズ、N シリーズ |
利用アプリケーション例 |
|
5. 仮想マシンの見積方法について
ここまで、Microsoft社が想定するワークロードに基づく一般的なガイドラインとして、AVDのサイジングについて紹介してきました。しかし、実際どの程度コストが発生するかは利用状況によって様々です。利用料のシミュレーションは「料金計算ツール」を使って利用料を予め算出することができるので、仮想マシンを展開する前に確認することをお勧めします。
5.1 AVD 価格シミュレート
また、AVD 価格シミュレートを記載した「<VDI 導入ガイド> 安全なリモートワークを実現!Azure Virtual Desktop と AWS WorkSpaces の比較表・価格例付き!」もご参照ください。
6. まとめ
本記事では、AVD のメリット、仮想マシンのシリーズ化されたラインナップ、スペックを選定する上でのポイント、AVD の料金計算ツールについて紹介しました。 実際の環境は企業規模やユーザー利用状況に応じて要件が異なる為、Microsoft 社のガイダンスは一定の参考になりますが、そのまま運用し続けることは難しいと言えるでしょう。
AVD はクラウド環境であるので、そのメリットを活かしながら小規模で手軽にスタートし段階的に導入することも可能です。導入に際しご不明な点やご不安な点があればお気軽にご相談ください。
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