目次
自信を持ってVDI導入を行うための性能向上のポイント
リモートワークや BCP 対策に有効な VDI (仮想デスクトップ基盤)ですが、導入後に十分なパフォーマンスを得られない事例が少なからず発生しています。
VDI に求められる性能を出すスペックの見極めには、パフォーマンスに影響を及ぼす各要素の理解が必要です。また、推奨されるスペックは利用用途によって異なること、オーバースペックは利用コストの増大を招くことなどから、バランスの取れたスペック選定のポイントを知ることが大切です。
本記事では VDI スペックに関する多数の要素を紹介し、それらの検討方法とスペック最適化のポイントを解説いたします。
1. VDIスペックの考え方
十分なパフォーマンスが得られる VDI 環境を構築するには様々な要素を考慮する必要があります。ここでパフォーマンスに影響を与える主な要素について紹介します。
ハードウェア
ハードウェア関連要素には以下のものがあります。
- CPU:コンピュータの中心的な処理装置で、演算や制御を行う。
- GPU:リアルタイム画像処理に特化した処理装置。
- メモリ:プログラムの実行やデータの読み書き時に作業領域として使われる記憶装置。
- ストレージ:データやソフトウェアをファイルとして保存し、必要に応じて読み書きできる保管装置。
- ネットワーク:ホストサーバー上の仮想デスクトップにクライアント端末から接続するための通信経路。

ソフトウェア
VDI のミドルウェアや仮想デスクトップの OS の他、VDI 上で使用するアプリケーションのパフォーマンスを最適化するプラグインなどもあります。
また、アンチウイルス・ソフトやアプリケーションの更新タスクなど、パフォーマンスに悪影響を与えうる要素も含まれます。
チューニング
一般に業務環境は変化し続けます。それに伴い VDI に求められるスペックも変化するため、定期的な性能のモニタリングとその結果を反映したチューニング作業が必要になります。
利用用途
例えば事務作業と 3D CAD を用いた設計業務とでは求められるスペックが異なります。利用用途は VDI スペックを考える上での重要な要素の一つです。
コスト
コストを度外視して最高性能のハード・ソフトを揃え、十分な時間をかけてチューニングを行うわけにはいきません。限られた予算とパフォーマンスのバランスをとる必要があり、その意味でコストはスペック選定に影響を及ぼす要素と言えます。
2. VDIに必要なスペックの基礎知識
VDI のパフォーマンスに関係する各要素のうち、主にハード面について性能にどのような影響を与えるかを解説します。
CPU
CPU の使用率が高いと、ホストサーバー上にある仮想マシンの実行待ち行列および待機時間が増加し、アプリケーションのパフォーマンスに悪影響を及ぼします。 VDI クライアントの端末数が数万という単位になると、 CPU 使用率の数パーセントの上昇でも深刻な影響を与えます。
また、物理プロセッサのコア数と仮想 PC 数の関係にも注意が必要です。
GPU
GPU のない環境では CPU に大きな負担が掛かり、処理全体のパフォーマンスが悪化します。
たとえば Windows 10 ではグラフィック処理のハードウェアアクセラレーション(特定の処理を専用のハードウェアに任せて効率を高める技術)が前提となっているため、 CAD などの高度なグラフィックス用途に限らず一般的な用途でも影響が出ます。
メモリ
ホストサーバーのメモリ量が不足すると、メモリのストレージへの退避(スワップ)が頻繁に発生し、パフォーマンスの低下を起こします。
ゲスト OS のメモリ割り当て量が少ないと Windows ページングによりストレージ I/O に悪影響が出ます。逆に割り当て量が多すぎる場合、ページングファイルや各仮想マシンのスワップファイルが大きくなり、ストレージ容量を圧迫します。
ストレージ
ストレージは容量に目が行きがちですが、パフォーマンスの観点からは容量よりも I/O 性能が重要です。
朝の始業時間帯に多くの端末が一斉に起動する「ブートストーム」など、アクセスが集中する時間帯はストレージの I/O 性能がユーザーの使用感にダイレクトに影響します。
ネットワーク
通信が切断されたり通信速度が遅くなったりするなど、ネットワーク環境が安定しない環境では仮想デスクトップが「かくつく」などの現象が起きます。
また、 VDI ホスト環境のネットワーク構成にボトルネックが存在すると業務トラフィックがドロップしてしまう問題も起こり得ます。
3. VDIスペックの最適化ポイント
VDI パフォーマンス向上のための推奨ポイントを解説します。
まず、ゲスト OS のパフォーマンス最適化として以下の設定が推奨されます。
- 高パフォーマンスの電源オプションを選択し、スリープ設定は行わない。
- スクリーンセーバーをオフにする。
- 不要なサービスを無効にする。
- アンチウイルスソフトなどの更新をオフピークの時間帯にスケジューリングする。
次に、構成要素別のポイントを記載します。
CPU
物理プロセッサのコア数に比べて仮想 PC が多すぎるとパフォーマンスが悪化します。目安として 6 ~ 8 台の仮想 PC に 1 コアを割り当てましょう。
その上でホストサーバー上の全体的な CPU 使用率を監視し、安全マージンを考慮して 80% をほとんど超えないようにチューニングしていきます。
GPU
Windows 10 の仮想 PC を用いる場合、特にグラフィックスに特化した業務用途でなくとも GPU を利用できる VDI 環境を選択し、仮想 PC に vGPU を適用することが推奨されます。

CAD や 3DCG など、グラフィックス性能が重視される用途の場合、より高性能な vGPU が必要となる場合もあるでしょう。 Azure Virtual Desktop に代表されるクラウドベースの VDI は、 vGPU の変更などを容易に行える利点があります。
メモリ
物理メモリに余裕がある状況でも、仮想メモリが不足しているとシステムが不安定になるので、これら 2 つのメモリ使用量を確認する必要があります。
まずは仮想 PC あたり 4GB 程度のメモリを割り当て、物理メモリと仮想メモリの使用状況を監視しつつ調整を行いましょう。
ストレージ
パフォーマンスにとって重要とされる I/O 性能は、仮想 PC あたり 20 ~ 30IOPS が一般に必要とされます。
容量の最適化のためには以下を実施しましょう。
- インターネットキャッシュに割り当てられた領域などの不要なファイルを削除する。
- 復元ポイントの Windows サービスをオフにする。
ネットワーク
一般に仮想 PC あたり 150 ~ 200Kbps の容量が必要となります。
Windows の仮想 PC の場合、以下のレジストリ値をデフォルト値から変更することでネットワークトラフィックを削減し、パフォーマンスを向上させることができます。
- FileInfoCacheEntriesMax: 64 から 1024 へ
- DirectoryCacheEntriesMax: 16 から 1024 へ
- FileNotFoundCacheEntriesMax: 128 から 2048 へ
ビデオ会議の用途では「音声や映像が乱れる」といった現象を防ぐ目的で、音声と動画のトラフィックをバイパスさせるプラグインをインストールするのが一般的です。
4. まとめ
ここまで VDI スペックに関する要素とパフォーマンス最適化の方法を解説しました。
自社の利用用途に合った最適なスペック選定の方法を具体的にイメージしていただけたと思います。これで自信を持って VDI インフラの導入を進められることでしょう。
「VDI スペックの考え方」で触れたように、パフォーマンスとコストのバランスも大切です。 Azure Virtual Desktop のようなクラウドベースの VDI であれば、高い性能が必要になった場合にはデプロイをスケールすることで対応が可能であり、コストとパフォーマンスのバランスを取ることに優れています。
VDI の導入にあたっては、様々なノウハウと実績を持ったプロフェッショナルに相談するとよいでしょう。
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Tag: VDI
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