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VMware環境の今後の選択肢と対応も紹介
vSphere+ は、オンプレミスの vSphere 環境をクラウドで一元管理できる仮想化基盤です。導入時にはオンプレミス側に vCenter Cloud Gateway を構築し、接続することで、クラウド上での管理が可能となります。
vSphere+ のライセンス体系は、従来の永続ライセンスとは異なる点に留意が必要です。ライセンス体系の見直しを受け、 vSphere+ の導入・継続利用に加えて、ほかのクラウド基盤への移行も視野に入れた比較検討が求められています。
1. vSphere+とは
vSphere+ とは、オンプレミスに構築された vSphere 環境を維持しつつ、クラウド上の VMware Cloud Console から管理・運用できる統合基盤です。オンプレミスの vSphere 上に vCenter Cloud Gateway を構築して vCenter や VMware Cloud と接続します。
導入後は、複数の拠点に分散する vSphere 環境が一元的に可視化されるため、アラート監視や VM ライフサイクル管理などの運用をクラウド側で効率化できます。

vSphere+と従来のvSphere製品の違い
従来の vSphere は、各拠点にある vCenter をそれぞれ個別に管理する必要がありましたが、 vSphere+ ではそれらを一元的に可視化・操作が可能です。
vSphere+ は先述した統合管理に加え、 VMware Tanzu Mission Control Essentials を搭載しており、仮想マシンと Kubernetes 環境の混在運用にも対応しやすい特徴があります。仮想マシン中心ではなく、 Kubernetes 基盤も含めた統合管理ができ、モダンな環境構築にも対応可能な点が、従来製品と比較した強みです。
従来の vSphere は「オンプレで完結する仮想化基盤」でしたが、 vSphere+ では「クラウドと連携するハイブリッド運用前提の基盤」へと進化しました。 vSphere+ は進化を通じて、オンプレミス環境の管理をクラウドライクにしつつ、既存資産を活かす構成を推進しています。
2. vSphere+のライセンス体系
vSphere+ はサブスクリプションモデルを採用しています。従来の vSphere 製品は、初期に永続ライセンスを購入し、別途サポート費用を年間で支払う形式が一般的でした。また、 1 CPU ライセンスで最大 32 コアまで対応という形でした。
一方で vSphere+ のライセンスは、物理 CPU 単位で最低 16 コア分のライセンス購入が必要な方式となっています。
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- VMware 新ライセンスについて解説
vSphere+ は vSphere 環境がすでにある企業向けに、オンプレ環境の延命と運用改善を目的とした SaaS 管理製品という位置付けです。新規発売が停止された永続ライセンスを使用している既存ユーザーの場合、サブスクリプションライセンスに切り替えれば vSphere+ を利用できます。

3. vSphere+の導入手順
vSphere+ を導入するにあたっての技術要件は以下のとおりです。
- オンプレミス環境の要件
- – vCenter のバージョンが 7.0 U3g 以降、または 8.0.x 以降であること
- – ESXi のバージョンが上記と互換性があること
- vCenter Cloud Gateway の要件
- – 最小で 8 vCPU、 28 GB メモリ、 224 GB ストレージがあること
- – 接続できるvCenterは最⼤ 8 つまでであること
- – vCenter Cloud Gateway と VMware Cloud間のネットワーク遅延が 300 ms 以下であること
- – ポート( 5010~5019, 443, 5480, 7444 ) が通信できること
vCenter Cloud Gateway の構築手順は以下のとおりです。
- vCenter Cloud Gateway デプロイ
- a. VMware Customer Connect にログインし、 vCenter Cloud Gateway の ISO イメージを取得する
- b. ISO ファイルを展開し、構築作業を実施する
- i. 接続する vCenter または搭載する ESXi 情報を入力する
- vCenter Cloud Gateway と VMware Cloud を接続
- a. vCenter Cloud Gateway の GUI にアクセスし、ログインする
- b. VMware Cloud の認証情報を入力して VMware Cloud と vCenter Cloud Gateway を連携させる
- vCenter Cloud Gateway と vCenter を接続
- a. vCenter Cloud Gateway の GUI から vCenter の情報を入力する
- ライセンス適用
- a. VMware Cloud Console にて vCenter に vSphere+ のサブスクリプションを割り当てる

4. vSphere+の活用場面と今後の選択肢
vSphere+ はオンプレミスの vSphere 環境を残したいユーザーに有効です。しかし、昨今のライセンス変更を受け、オンプレミスの vSphere 環境を今後も活用するのか、ほかの製品に切り替えるのかを見直すタイミングとも捉えられます。
vSphere+が有効な活用場面
vSphere を導入済みで、今後もオンプレミスの VMware 製品を中心に運用したい企業の場合、 vSphere+ 導入は有力な選択肢です。例として以下の企業が想定されます。
- 複数拠点・複数クラスタを持ち、統合的な可視化・管理をしたい
- vCenter の管理が属人化・分散しており運用負荷が高い
- VMware 環境を維持しつつ、クラウドネイティブ運用へ段階的に移行したい
- VMware 製品に投資しており、資産を引き続き活用したい
vSphere+に変わる今後の選択肢
vSphere+ を選択せず、 VMware 以外の仮想化基盤へ移行する選択肢もあります。主な選択肢は以下の3つです。
- 商用仮想化基盤
- – Nutanix AHV や Microsoft Hyper-V などは、エンタープライズ向けのサポートと GUI 操作に強みがある
- OSS 系仮想化基盤
- – Proxmox VE や oVirt などのオープンソースの仮想化ソリューションは、ライセンスコストを抑えつつ、自社での技術的な内製化を進めたい場合に有効となる
- – ただし、商用製品に比べてサポート体制や導入・運用ノウハウの確保が必要となる
- クラウド基盤
- – AWS や Azure 、 GCP などのクラウド上に仮想マシン環境を構築することで、インフラ運用の一部または全部をクラウド側に委ねられる
- – 将来的なスケーラビリティやサービス連携の柔軟性に優れ、モダンな運用基盤を構築できる
- – 特に AVS ( Azure VMware Solution )を活用すれば、既存 VMware 資産を活かしつつクラウド移行が可能
仮想化基盤を移行する場合、自社のインフラ戦略、予算、運用体制に応じて適切な選択肢を検討することが重要です。
以下の記事で詳細を解説しているので、併せてご覧ください。
5. まとめ
vSphere+ は、オンプレミスの vSphere 環境を VMware Cloud Console で統合管理できるサブスクリプションプランです。
導入方法はシンプルで、 vCenter Cloud Gateway の展開と登録によって、既存の環境をクラウドから一元管理する体制を構築できます。特に、複数拠点の vCenter を管理している企業や、段階的にクラウド化を進めたい企業にとって有効です。
一方で、将来的なクラウド全面移行や VMware 依存からの脱却を視野に入れる企業は、その他の商用仮想化基盤、 OSS 系仮想化基盤、クラウド基盤への移行などを検討するとよいでしょう。
Rworks では、既存 vSphere 環境の移行や維持について検討中の企業をご支援いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
Tag: vSphere+
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