Azure Managed Service Column ＜Azure運用コラム＞オンプレミス回帰とは？理由や注意点、ハイブリッド環境向けサービスも紹介

自社に最適な環境を見極めてインフラ課題を解決しよう

クラウドを導入したものの「コストが想定以上にかかる」「セキュリティや規制対応に不安がある」と感じ、再びオンプレミスへ戻すことを検討する企業が増えています。この「オンプレミス回帰」は、一部の課題を解決できる一方で、初期投資や運用負荷の増大など新たなリスクも伴うため注意が必要です。

本記事では、オンプレミス回帰の定義や背景、注意すべきリスクを整理したうえで、オンプレミスとクラウドを組み合わせるハイブリッド環境について解説します。さらに、ハイブリッド環境を支援する Azure の代表的なサービスも紹介するため、参考にしてください。

1. オンプレミス回帰とは？

オンプレミス回帰とは、クラウドへ移行したシステムや業務を、再び自社のサーバーやデータセンターに戻すことです。「脱クラウド」とも呼ばれますが、オンプレミス回帰は必ずしもクラウドを否定するものではなく、システム最適化の一環として行われる場合も多くあります。

近年はクラウド利用を前提にシステム設計を進める企業が主流です。しかし、一部ではコストや運用上の課題からオンプレミスに戻す動きも見られ、オンプレ回帰はクラウド時代における選択肢の一つとして注目されています。

2. オンプレミス回帰の主な理由

オンプレミス回帰を検討する主な理由を解説します。

クラウドコストの高騰と円安の影響

クラウドの料金体系は従量課金制が基本であり、利用拡大に伴い費用が膨らみやすい点が特徴です。さらに、クラウドベンダーの多くはドル建てで請求するため、円安の進行がコスト増加を加速させています。

導入当初は柔軟性や初期投資削減を期待していたものの、数年経過した段階で「オンプレ運用よりも割高になっている」と気づき、回帰を検討するケースがあります。

セキュリティとコンプライアンス対応の課題

クラウド事業者は高度なセキュリティ機能を提供しますが、企業が求める水準をすべて満たせるわけではありません。特に金融機関や官公庁など、厳格な法規制や独自のコンプライアンス要件を抱える組織では、クラウド標準の仕組みだけでは対応しきれないケースがあります。

その結果、より厳格なセキュリティ管理を自社で柔軟に行えるオンプレミスを再評価する動きにつながっているのです。

システムの制御性とベンダーロックインへの懸念

クラウド環境は利便性が高い反面、サービス仕様や提供範囲に縛られるため、細かなカスタマイズや独自要件への柔軟な対応が難しい場合があります。また、障害時の対応をクラウド事業者の判断に依存せざるを得ず、自社で原因追及や再発防止を進められないことに不満を抱く企業も少なくありません。

さらに、特定のベンダーに依存すると、料金改定やサービス終了といった外部要因の影響を受けやすい点もリスクとされます。こうした制御性の欠如やベンダーロックインへの懸念も、オンプレ回帰を検討する要因です。

3. オンプレミス回帰における注意点

オンプレミス回帰は一部の課題を解決する選択肢となり得ますが、同時に新たなリスクや負担を伴う点に注意が必要です。

初期投資および設備更新コストの負担

オンプレミスはクラウドと比べ、利用規模に応じて調整できる柔軟性に乏しいのが難点です。サーバーやストレージ、ネットワーク機器を一括で調達する必要があり、導入時に多額の初期投資を要します。

さらに、数年ごとにハードウェアの更新が必要となり、そのたびに予算や調達の手間が発生します。クラウドの従量課金制に不満を持って回帰したはずが、今度はオンプレミス特有の固定的な支出が負担となりかねません。

運用・保守人材の確保と属人化リスク

オンプレミス環境を安定的に運用するには、障害対応やパッチ適用、セキュリティ監視などを担う専任の人材が不可欠です。しかし近年はクラウドスキルを持つ人材需要が高まっており、オンプレ経験を持つ人材の確保は難しい傾向があります。

結果として、限られた担当者に業務が集中し、属人化によるリスクが増大しかねません。担当者の退職や長期離脱が即座にシステムトラブルに直結する可能性もあります。

拡張性の低さと新技術導入の難しさ

クラウドが強みとするのは、柔軟な拡張性と最新技術へのアクセスです。これに対してオンプレミス環境では、利用規模が急激に増えた際のキャパシティ不足にすぐ対応することは難しくなります。

また、 AI や IoT 、クラウドベースのセキュリティサービスといった新技術の導入にも制約が多く、最新の IT 活用で差をつけることも難しい傾向です。オンプレミスを選んだことで、将来的な成長機会を逃してしまう懸念も否めません。

4. オンプレミス回帰とあわせて検討すべきハイブリッド環境

オンプレミスとクラウドそれぞれの課題を解決するため、両者を組み合わせたハイブリッド環境が注目されています。ハイブリッド環境であれば、自社での制御性やセキュリティ確保を維持しながら、クラウドの柔軟性や最新サービスを活用できます。

特に Azure は、ハイブリッド利用を前提としたサービスを提供しており、前章で挙げた課題を補う手段として有効です。ここでは、代表的なサービスを紹介します。

Azure Arc｜運用・保守人材不足を補う統合管理基盤

オンプレミスや複数クラウド環境をまとめて管理できるサービスです。監視やパッチ適用、ポリシー設定など、これまで個別に行っていた作業を Azure 上から一元的に操作可能にします。限られた人員に依存していたオンプレ運用の属人化を解消し、人材不足のなかでも効率的な管理体制を構築できます。

Azure Stack Hub／Azure Local｜設備更新負担を抑えた自社環境の最新化

自社データセンターに Azure の一部機能を導入できる仕組みです。クラウドと親和性の高いアーキテクチャをオンプレミスで利用できるため、既存設備を活かしながら最新の基盤にリプレイスすることが可能です。これにより設備更新コストを抑えつつ、クラウドとの統合性を高めたシステム運用を実現できます。

Azure ExpressRoute｜拡張性と最新サービス活用を支援

自社環境と Azure を専用線で接続できるサービスです。高いセキュリティと低遅延を確保した通信を実現し、オンプレミスを基盤に据えながらも必要に応じてクラウドリソースを柔軟に利用できます。これにより、オンプレ回帰の課題である拡張性不足を補うと同時に、 AI や IoT といった最新技術を活用しやすくなります。

5. まとめ

オンプレミス回帰は、クラウド利用で顕在化したコスト増や規制対応の難しさに対応する選択肢の一つですが、初期投資や人材確保といった新たな課題も伴います。

その解決策として注目されているのが、オンプレとクラウドを組み合わせたハイブリッド環境です。自社での制御性を保ちながら、クラウドの拡張性や最新技術を活用できる点が大きな強みとなります。

Azure には、ハイブリッド環境を前提としたサービスが揃っています。自社に適したハイブリッド基盤の構築を検討する際は、 Rworks にご相談ください。ハイブリッド環境およびオンプレへの移行、運用をサポートします。

Microsoft Azureを利用したシステムの設計・構築を代行します。お客様のご要件を実現する構成をご提案・実装いたします。

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