本コラムは全4回シリーズです。
システム運用改善の考え方や伴走型支援について解説します。
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目次
日々の障害対応に追われる運用現場が、改善を継続するための3つの判断軸を解説
「運用を改善したい」と思いながら、「気づけば今日も障害対応や問い合わせ対応で一日が終わっていた」―― 24 時間 365 日の安定稼働が求められるシステム運用の現場では、日々の対応に追われ、改善まで手が回らないことは少なくありません。
さらに、業務が特定の担当者に依存していると、何が課題で、どこから直すべきかの全体像も見えにくくなります。その結果、改善の必要性は感じていても、着手順を決められず、活動が後回しになりがちです。
本記事では、システム運用改善を進める際の優先順位付けの考え方を紹介します。あわせて、改善を一度きりで終わらせず、継続的に回すための体制づくりや、外部支援との役割分担について詳しく解説します。
1. 改善したいのに進まない――システム運用改善が停滞する理由とは
システム運用の現場では、改善の必要性を感じていても、日々の障害対応や問い合わせ対応に追われ、着手できないケースが少なくありません。これは担当者の意欲の問題ではなく、改善が後回しになりやすい構造に原因があります。
日常業務に追われ、改善の時間を確保できない
24 時間 365 日の安定稼働が求められる運用現場では、障害対応、監視アラート確認、定常作業が優先されるため、改善の時間を確保しにくいのが現状です。
属人化で課題の全体像と優先順位が見えない
運用ノウハウが特定の担当者に集中していると、どの作業に時間がかかり、どこにリスクがあるのかを組織として把握しにくくなります。課題を棚卸しする土台がなければ、適切な着手順も決められません。
改善が個人の熱意・余力に依存し、続かない
仮に改善へ着手できても、その活動が担当者個人の頑張りや残業時間に依存していると、繁忙期や異動をきっかけに停滞しやすくなります。
2. 失敗する運用改善の典型パターン
運用改善に着手したものの、期待した成果につながらず、途中で止まってしまうケースは少なくありません。失敗しやすいパターンをあらかじめ把握しておくことで、同じ落とし穴を避けやすくなります。
場当たり着手で優先度の高い課題が後回しになる
目についた課題や対応しやすい作業から着手すると、本当に効果の大きい課題が後回しになりがちです。改善件数は増えても、障害対応の負荷やサービス停止リスクが下がらなければ、成果として実感できません。
着手前に、どの課題を優先すべきかを客観的に判断する共通の軸を持つ必要があります。
ツール導入・手順書作成が目的化し定着しない
監視ツールの導入や手順書の作成は、改善策としてわかりやすい一方で、それ自体が目的化しやすい側面を持っています。導入や作成の段階で満足し、実際の運用に組み込まれなければ、すぐに形骸化してしまうでしょう。
ツールや手順書は作って終わりにせず、現場で使われ続けることを前提に設計しなければなりません。
効果測定とナレッジ移転がなく、再現性が残らない
改善前後でインシデント件数や対応工数を測定していなければ、周囲へ効果を説明できず、活動を継続しにくくなります。また、改善の過程で得た知見が担当者個人にとどまると、別の領域や次の担当者へ活かせません。
「測る」「残す」というプロセスまで含めて設計して初めて、改善は一度きりの作業ではなく、再現性のある活動になります。
特に多くの現場で見られるのが、どの課題から取り組むべきかを判断できず、場当たり的に改善へ着手してしまうケースです。
3. 何から手をつけるべきか――運用改善の優先順位を決める3つの判断軸
「何から手をつければよいかわからない」という状態を抜け出すには、課題を感覚ではなく、共通の軸で並べ替えることが重要です。ここでは「影響度」「再発頻度」「対応工数」の 3 軸で優先順位を整理する方法を紹介します。
「影響度 ・ 再発頻度 ・ 対応工数」の3軸で棚卸しする
まず、現在抱えている運用課題を一覧化し、「影響度」「再発頻度」「対応工数」の 3 つの軸で評価します。ここでいう運用課題は、障害対応だけに限りません。
属人化、ナレッジ共有不足、手順書と実機設定の乖離、定常作業の手戻り、同じ問い合わせの繰り返しなども、改善対象として棚卸しします。
| 評価軸 | 属人化 | ナレッジ共有不足 | ドキュメントと実機の乖離 |
|---|---|---|---|
| 影響度 |
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| 再発頻度 |
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| 対応工数 |
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影響度
影響度とは、その課題がサービス品質、顧客対応、作業遅延、担当者の負荷、引き継ぎリスクにどれだけ波及するかを示す軸です。
再発頻度
属人化やドキュメントの乖離など、障害として顕在化しにくい課題については、「再発頻度」を「同じ確認・問い合わせ・手戻りが繰り返し発生している頻度」として読み替えると評価しやすくなります。
たとえば、属人化であれば「特定の担当者への確認が週に何回発生しているか」、ドキュメント乖離であれば「実機を直接確認しなければならない場面が月に何回あるか」 を見積もることで、ほかの課題と同じ土俵で比較できます。
対応工数
対応工数とは、 1 回あたりの対応、確認、調査・調整にかかる時間、必要な人数、担当者に求められるスキルの大きさを示す軸です。
3軸でスコア化し、着手順を決める
3 軸で評価することで、「重大だがめったに発生しない課題」と「軽微だが毎日のように発生する課題」を同じ基準で比較できます。単発の障害だけでなく、日常的に現場の時間を奪っている属人的な作業やナレッジ不足も、改善対象として扱えるようになるでしょう。
課題を比較する際は、各軸を高・中・低の 3 段階(高= 3 点、中= 2 点、低= 1 点)で数値化します。まず影響度と再発頻度の合計点で優先度を絞り込み、同点になった課題については、対応工数が小さいものを先に着手する順で進めると判断がスムーズです。
すぐ着手すべき領域と後回しでよい領域の見分け方
最優先で着手すべきなのは、影響度と再発頻度がともに高く、対応工数が小さい領域です。少ない労力で現場の負担を直接減らせるため成果を実感しやすく、標準化や自動化による負荷削減を早期に享受できます。
影響度は高いものの対応工数も大きい課題は、いきなり全面的に改善しようとせず、対象範囲を分けて段階的に進めるとよいでしょう。たとえば属人化した作業であれば、問い合わせ頻度が高い手順や、障害時に確認が集中する手順から文書化するのが現実的です。
一方、年に 1 〜 2 回しか発生せず、影響も限定的な課題について手順をメモ程度に残すだけにとどめ、思い切って後回しにする判断も合理的です。
効果が見込める範囲を見積もるポイント
着手前には、「月に何時間の作業が減るのか」「インシデントが月に何件減るのか」といった見込みを具体的な数値で置いておきましょう。あらかじめ目標値を設定すれば改善後の効果を測定しやすくなり、次の改善に取り組む際、周囲から承認を得るための説明材料になります。
4. 改善を一度きりで終わらせないために――運用改善を回し続ける体制設計とは
優先順位を付けて改善に着手できても、それが一度きりで終わってしまえば、現場はまた元の状態に戻りやすくなります。運用改善を定着させるには、改善を単発の取り組みではなく、継続的な活動として設計することが重要です。
改善を「継続的な活動」として設計する
改善は、思いついたときに行う特別な作業ではなく、通常の運用業務に組み込む必要があります。たとえば、毎月決まった日にインシデントを振り返り、課題の優先順位を見直す場を設けるといったアプローチが有効です。
重要なのは、改善の時間を「余ったら使う時間」ではなく、あらかじめ確保された予定として扱うことです。小さくても構わないため、改善を回す定位置を作ることが、継続への第一歩となるでしょう。
改善サイクルを回す
改善活動は、計画、実行、評価、改善、標準化の流れで進めるとスムーズに整理できます。計画フェーズでどの課題に着手するかを決め、実行フェーズで手順の見直し、自動化、監視設定の改善などを実施する流れです。評価フェーズでは、対応工数やインシデント件数がどれだけ削減されたかを測定します。
そして、その後の改善と標準化フェーズでは、評価結果を踏まえて内容を調整し、効果が確認できた施策を標準化します。改善内容を手順書、運用ルール、チェックリストなどに落とし込み、同じ課題が再発しにくい環境を整えましょう。特に標準化が抜けると、担当者が変わったときに改善効果が失われやすいため注意が必要です。
役割分担と判断基準を明確にする
改善を継続するには、誰が主導し、誰が実作業を担い、どこまでを現場判断で進めてよいのかを明確にしておく必要があります。役割が曖昧なままだと、課題は見えていても誰も着手しない状態になりかねません。
また、優先順位の判断基準もチーム内で共有しておきます。たとえば、顧客影響がある課題を最優先する、毎月一定時間以上を消費している作業を改善対象にするといった基準です。判断基準が共有されていれば、担当者が変わっても改善の方向性がぶれにくくなります。
あわせて、改善課題を挙げた人がそのまま担当になる運用は避けることが望ましいです。言い出した人がタスクを抱え込む状態になると、現場が課題を提案しにくくなるため、課題を挙げる役割と実行する役割は出来るだけ切り離して考えましょう。
5. どこを任せ、どこを残すか――外部支援との役割分担
日々の運用を止めずに改善まで進めるには、自社だけで抱え込まない発想も必要です。ただし、外部支援を活用する場合もすべてを丸投げするのではなく、自社と外部の役割を分けることが重要です。
運用負荷の高い業務(監視・一次対応・定常作業)は外部を活用する
24 時間 365 日の監視、アラートの一次対応、定型的な定常作業は、負荷が高い一方で外部に任せやすい領域です。こうした定常業務を外部と分担すれば、自社の担当者は障害原因の分析、改善計画、設計見直しなど、より付加価値の高い業務に時間を使いやすくなります。
業務影響の判断や改善の優先順位といった事業判断は自社に残す
一方で、どの課題を優先するか、どこまで品質を担保するかといった判断は、自社に残すべき領域です。これらを外部に委ねてしまうと、自社に適切な判断軸や運用ノウハウが蓄積されず、ベンダーへの依存度が強まるおそれがあります。
課題整理・改善提案・標準化・ナレッジ移転は自社と外部で連携する
外部支援は、判断そのものを任せる相手ではなく、判断に必要な情報整理や実行を支える相手として位置付ける必要があります。課題の棚卸し、改善提案、手順の標準化、ナレッジ移転は、自社と外部が連携して進めたい領域です。
たとえば、外部が課題整理のフォーマットや分析を担い、自社担当者と一緒に棚卸しを進める、あるいは外部が手順の標準化を支援しながら自社への定着まで伴走するといった形が挙げられます。ここで重要なのは、単に作業を代行するだけでなく、改善の考え方や進め方のノウハウを自社に残してくれるパートナーを選ぶ視点です。
負荷の高い実務は外部と分担し、優先順位や判断軸は自社に残すことで、運用改善を無理なく継続できる体制を構築できます。
6. まとめ
運用改善が進まないのは、担当者の力不足ではなく、優先順位を決める軸と、継続して回す仕組みが不足しているためです。
まずは課題を「影響度」「再発頻度」「対応工数」の 3 軸で棚卸しし、効果が大きく着手しやすい領域から改善を進めましょう。そのうえで、計画、実行、評価、改善、標準化のサイクルを定例化すれば、改善は一度きりの作業ではなく、継続的な活動へと変わります。負荷の高い監視、一次対応、定常作業は外部と分担しつつ、優先順位や業務影響の判断は自社に残す体制を設計してください。
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Tag: システム運用改善
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