目次
FinOps を実現できる Azure サービスも紹介
クラウドサービスの普及により、企業はこれまでにないスピードで IT リソースを活用できるようになりました。一方で、使用量の増大に比例してクラウドコストの管理が難しくなり、無駄な支出が経営課題となるケースも増えています。こうした背景から注目されているのが「 FinOps 」です。
FinOps は、クラウドコストの最適化を実現しつつ、ビジネスの成長を支援する新たなアプローチを指します。本記事では、 FinOps の基本概念から導入プロセス、 FinOps の実践に役立つ Azure 機能まで体系的に解説します。
1. FinOpsとは

FinOpsとは、クラウド利用におけるコスト最適化と価値最大化を目的とした運用モデルです。「 Finance (財務)」と「 DevOps (開発( Development )と運用( Operations )担当が密に連携し、迅速かつ効率的に開発を行う手法)」を組み合わせた造語であり、財務部門、 IT 部門、ビジネス部門が連携してクラウドコストを管理・最適化するアプローチを意味します。
単なるコスト削減活動ではなく、「適切なリソースに適切なコストを支払う」文化を組織内に根付かせることが FinOps の本質です。
FinOpsが注目される背景
近年、企業のクラウドシフトが加速する中で、リソース利用量の増減が柔軟かつ高速になっています。クラウドでは従量課金制が基本であり、使用状況に応じてコストが大きく変動します。
一方、従来のオンプレミス型では、サーバーなどの IT 資産を一括購入し、一定期間で減価償却するなどしてコストを管理していたため、予算計画を立てやすい特徴がありました。こうした違いから、従来の予算策定・管理手法ではクラウドのコストをコントロールしきれない課題が顕在化しています。
また、クラウドベースのビジネスモデルでは、スピードとイノベーションが競争優位性に直結するため、単なるコスト抑制だけでなく「適切なコストの使い方」が求められるようになっています。こうした背景から、リアルタイムなコスト可視化と柔軟な最適化を実現する FinOps への注目が高まっているのです。
2. 従来のITコスト管理との違い
従来の IT コスト管理は、物理サーバーやデータセンターなど「固定された設備投資」が中心であり、数年単位の予算策定と精緻なコスト予測が可能でした。しかし、クラウド環境ではリソース使用量が流動的であり、短期間でコスト構造が変化します。
FinOps はこの前提に適応した管理モデルであり、リアルタイム性や透明性、各部門の自律的な最適化行動を重視する点が大きな特徴です。また、コスト管理の主体が財務部門だけでなく、 IT 部門やプロダクトチームにも広がる点も、従来型との明確な違いといえます。
3. FinOpsの実践プロセスと注意点
FinOps の実践は「 Inform 」「 Optimize 」「 Operate 」という 3 段階で進めるモデルが基本です。
Inform(情報の可視化)
クラウドリソースの使用状況とコストを正確に把握し、関係者に情報を提供します。部門別やサービス別にコストを分類・可視化し、誰がどのリソースをどれだけ使っているかを把握することが重要です。現状のコスト構造を可視化することで、各チームが自らの消費状況に責任を持つ意識改革にもつながります。
Optimize(最適化)
収集した情報をもとに、無駄なリソースの削減や、コスト効果の高いインスタンスタイプへの変更などを行います。技術的なアプローチだけでなく、購買戦略や設計改善などのビジネス判断の両面から改善策を講じます。単なるコスト削減ではなく、パフォーマンスとコストのバランスを意識しながら最適化を進めることが重要です。
Operate(運用と改善の定着)
リソース利用状況やビジネス環境は常に変化するため、継続的なモニタリングと改善活動を定着させます。定期的なコストレビューやダッシュボードによる可視化を続け、問題の兆候を早期に検知・是正する体制を構築することが重要です。
FinOps の実践にあたっては、いくつか注意すべきポイントがあります。
- 目標の明確化:コスト削減だけでなく、サービス品質維持・向上といった目的も整理し、それらを KPI として具体化する。
- スモールスタート+継続的な改善:一度に完璧を目指さず、小さな単位で PDCA サイクルを回す。
- 部門横断的な協力体制:IT 部門だけでなく、財務・経営層も巻き込んだ体制を構築する。役割分担を明確にしつつ、定期的にレビューを実施して成果や課題を共有する。
4. FinOps実践に役立つAzure機能
Azure には、 FinOps を実践するうえで役立つツールが数多く揃っています。
Azure Cost Management
クラウドリソースのコストと使用量をリアルタイムに可視化するサービスです。コスト分析機能により、リソース単位や部門別に支出状況を細かく把握できるため、無駄の発見や改善ポイントの特定がしやすくなります。
予算設定やアラート機能も搭載されており、あらかじめ予算を超えそうなタイミングで通知を受けることもでき、コストに関する「気づき」を得る段階である Inform (情報の可視化)に最適です。
Azure Advisor
リソース最適化の推奨事項を提供するサービスです。コスト削減に有効なリザーブドインスタンスの購入提案や、不要なリソースの特定、よりコスト効率の良いプランへの移行推奨など、具体的なアクションをサポートします。
推奨事項は優先度やインパクト別に整理されるため、どこから着手すべきか判断しやすい点も大きなメリットです。これらはコスト削減や効率化といった Optimize (最適化)フェーズで効果を発揮します。
Azure Policy
リソースの適正利用を促進するためのポリシー設定機能です。ルールを自動的に適用し、非推奨なリソース使用を防いでコスト最適化を支援します。
ルール違反が発生した場合は即座に検知できるため、運用負荷を増やすことなくガバナンスの強化が可能です。コストガバナンスの維持やセキュリティの確保といった Operate (運用と改善の定着)フェーズにおいて、継続的な管理体制の構築をサポートします。
これらを活用することで、 FinOps の実践に必要な可視化や最適化、継続的な改善の基盤を Azure 上で構築できます。
5.まとめ
FinOps は、クラウドコストを単に抑えるだけでなく、企業の競争力を高めるための戦略的な取り組みです。 FinOps 導入によりクラウドコストを継続的に見直し、コスト削減で得たリソースを新たな技術革新や事業成長に再投資できます。 Azure では FinOps 実践に役立つツールが豊富に揃っているため、ぜひ活用してみてください。
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Tag: FinOps
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