目次
VDIの導入・運用で欠かせない対策を徹底解説
VDI( Virtual Desktop Infrastructure )とは、仮想空間上にデスクトップ環境を構築する技術のことです。 VDI はテレワークでよく利用されており、場所を問わずに同じデスクトップで業務を実施できます。 VDI を安全に使うためには、導入・運用でよくある問題点やセキュリティリスク、対策について理解しなければなりません。
本記事では、 VDI の導入・運用でよくある問題点と対策について解説します。 VDI で必須のセキュリティ対策も紹介しますので、参考にしてください。
1. VDIの導入における一般的な問題点と対策

VDI を導入する際は、下記の 3 つが問題になるケースがあります。
- 初期コストの高さ
- 導入の複雑さ
- 既存のITインフラとの統合
それぞれの問題点と対策について解説します。
初期コストの高さ
VDI の導入では、専用のサーバーやストレージ、ネットワーク機器、仮想化ソフトウェアなどの初期費用が発生します。加えて、ライセンス費用やメンテナンス費用などもかかるのが一般的です。
【対策】
クラウド型のVDIを利用する
VDI には、オンプレミス型とクラウド型( DaaS )の 2 種類があります。クラウド型の VDI は自社で物理的なサーバーを用意する手間がないため、オンプレミス型よりも初期費用を抑えることが可能です。
また、従量課金制のクラウド型の VDI であれば、使った分だけ費用が発生するため、最初からすべてのリソースを購入する必要がなく、初期費用の削減につながります。
ハードウェアの再利用
既存の PC をシンクライアント端末として再利用することで、新しいデバイスを購入するコストを削減できます。シンクライアント端末とは、ローカルでの処理能力を最小限に抑え、主にサーバー側で処理を行う端末のことです。
導入の複雑さ
VDI を導入する際は、サーバーや仮想化の設定、デスクトップの構築、セキュリティ管理など、多くの作業を実施する必要があります。担当者には、高度な専門知識が求められます。
【対策】
VDI ソリューションを提供しているベンダー( VMware や Citrix 、 Microsoft など)やパートナー企業は、 VDI の設計・構築に関する知識や経験が豊富です。ベンダーが導入サポートを実施しているのであれば、技術的なサポートを受けることをおすすめします。サポートを受けることで VDI をスムーズに導入でき、担当者の負担を軽減できるでしょう。
既存のITインフラとの統合
VDI を既存の IT インフラに統合する際には、ネットワーク構成やセキュリティ設定、既存の業務システムとの互換性などの問題が発生するケースがあります。通信の遅延やセキュリティリスクにつながるため注意が必要です。
【対策】
VDI をいきなり本番環境で導入するのではなく、まずは小規模なテスト環境で既存インフラとの互換性や統合の効果を検証しましょう。段階的なテストを実施することで、インフラや業務アプリケーションへの影響を最小限に抑えられます。
2. VDIの運用における一般的な問題点と対策
続いて、 VDI を運用する際によくある問題点と対策について解説します。
負荷の増大に伴うパフォーマンスの低下
VDI は、ユーザーが増加するほどサーバーの CPU やメモリ、ストレージの負荷が大きくなるのが一般的です。大きな負荷がかかることで、システム全体のパフォーマンスが低下する可能性が高くなります。
【対策】
ロードバランサーなどの負荷分散装置を導入すれば、サーバーの負荷を分散できます。これにより、安定した VDI 環境を維持できるでしょう。
リソース不足に伴う遅延
VDI を安定して稼働させるためには、サーバーの CPU やメモリ、ストレージなどのリソースが必要です。しかし、リソースの割り当てが不適切だと、仮想デスクトップの起動遅延につながりやすくなります。
【対策】
リソースの適切な割り当て
業務内容や利用頻度などを考慮し、各ユーザーに適切なリソース量を割り当てるようにしましょう。
サーバーの増設
負荷が大きくなった場合は、サーバーを増設し、リソースを拡張することで全体の処理能力を上げられます。
ネットワーク帯域幅の不足によるUXの低下
VDI 環境では、仮想デスクトップのデータがネットワークを介してリアルタイムで送受信されます。ネットワークの帯域幅が不足すると、通信の遅延が発生し、作業をスムーズに行えなくなります。その結果、業務効率の低下などにつながりかねません。
【対策】
SD-WANの導入
ネットワーク帯域を確保するためには、 SD-WAN ( Software-Defined Wide Area Network )の導入が有効です。SD-WAN とは、ネットワークの最適化とトラフィック制御を行う技術のことです。 SD-WAN を活用すれば、帯域幅の制約を緩和し、通信の安定性を確保できます。
定期的なモニタリング
ネットワーク環境に限らず、 VDI 環境のパフォーマンスを定期的にモニタリングし、負荷の変動や遅延が起きていないかを監視することが重要です。遅延が発生しそうな場合は、事前にリソースを調整したり、サーバーを追加したりするなどして、 UX の低下につながらないように注意しましょう。
3. VDIのセキュリティリスクと対策
VDIは多くのセキュリティ機能を備えていますが、固有のセキュリティリスクも存在します。ここでは、 VDI を運用する上で注意すべきセキュリティリスクと対策について解説します。
データ漏洩
VDI では、データを転送する際のセキュリティが不十分だと、データが盗まれたり漏洩したりするリスクがあります。
【対策】
データ暗号化
データを転送・保存する際は、必ずデータを暗号化しましょう。暗号化すれば、万が一データが外部に漏洩したとしても中身を解読できません。
VPNの導入
VPN( Virtual Private Network )を使用すれば、データを暗号化し、安全な経路を通して転送できます。外部から通信内容を見られたり、盗まれたりするリスクを軽減することが可能です。
不正アクセス
VDI 環境ではユーザーがリモートからアクセスするため、不正アクセスのリスクがあります。
【対策】
多要素認証 ( MFA )
不正アクセスを防止するためには、多要素認証 ( MFA )が有効です。多要素認証とは、パスワードだけでなく、ワンタイムコードや生体認証など複数の認証要素を組み合わせて認証する方式のことです。多要素認証を導入することで、万が一パスワードが漏洩しても不正アクセスが発生しにくくなります。

アクセス制御
アクセス制御も有効な対策の一つです。ユーザーや役職ごとにアクセス権限を細かく設定することで、不正アクセスのリスクを低減できます。
仮想環境の設定ミスや脆弱性
VDI の設定を適切に実施しないと、脆弱性につながりやすくなります。外部から攻撃されるリスクも高くなるでしょう。
【対策】
セキュリティパッチの適用
セキュリティパッチを一元的に適用し、自動更新することで、設定ミスや更新漏れを防げます。VDI のセキュリティレベルを維持することで、脆弱性が悪用されるリスクを軽減できます。
各仮想マシン間でのデータやリソースの共有を最小限に抑える
各仮想マシン間で必要以上にリソースを共有しないように設定しましょう。これにより、万が一 1 つの仮想マシンが攻撃を受けたとしても、影響を最小限に抑えられます。
内部不正
VDI 環境では、社内の従業員がデータを不正に利用するリスクもあります。
【対策】
アクセス権限の管理
定期的な権限の棚卸しを行い、異動や退職時には速やかに権限を削除することで、アクセス管理の適正化を図ります。
モニタリング
従業員の操作やアクセス状況を常にモニタリングすることで、異常なアクセスや操作が行われた際に速やかに発見・対応することが可能です。
監査ログの管理
操作履歴やアクセスログを記録し、定期的な監査を実施することも内部不正の抑止につながります。
ゼロトラストモデルの導入
ゼロトラストモデルとは、全てのアクセスを疑い、信頼せずに検証するというセキュリティ対策の考え方やフレームワークのことです。 VDI 環境でゼロトラストを導入することで、従業員やデバイスのアクセスを常に監視・検証し、不正アクセスや内部不正を未然に防ぐことができます。
VDI 環境でゼロトラストモデルを導入する際は、下記の方法が効果的です。
- 業務に必要な最低限のアクセス権のみを付与し、不必要なデータにアクセスできないようにする
- VDI にアクセスするデバイスの状態を定期的にチェックし、セキュリティパッチが適用されているか、ウイルス対策が最新かどうかを確認する
4. まとめ
VDI を導入すれば、 PC の管理・メンテナンスの手間を軽減できます。テレワークなどの柔軟な働き方を実現しやすくなり、 BCP 対策の一環にもなるでしょう。VDI を安全に利用するためには、本記事で紹介した問題点を理解した上で適切な対策を講じることが重要です。
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Tag: VDI
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