Managed Service Column <システム運用コラム>

パブリック・プライベート・ハイブリッドクラウド比較

Category: 入門編

2021.03.04

はじめに

事業の効率化やセキュリティ面などの要素を総合的に見た場合、1つのクラウドだけを利用すると、不便な点が出てくることがあります。そのようなときに便利なものが、複数のクラウド環境やサービスを組み合わせて構築するハイブリッドクラウドです。

この記事では、そんなハイブリッドクラウドについて、具体的にどのようなものなのか、どのようなメリットが期待できるのかを解説します。ハイブリッドクラウドの運用を考えている場合や、ハイブリッドクラウドについて詳しく知りたい方はぜひ目を通してみてください。

ハイブリッド環境とは

まず、ハイブリッドクラウドとはどういったものなのかについて、簡単に解説します。

ハイブリッドクラウドとは、パブリッククラウド(複数ユーザで共有するクラウドサーバー)やプライベートクラウド(自社専用のクラウドサーバー)、オンプレミスの物理サーバーなど、異なる種類のサービスを組み合わせた環境のことです。

それぞれのサービスにはメリットとデメリットがあるため、タイプの異なるサービスを組み合わせることで、それぞれの弱点を補うことができます。

パブリッククラウドのメリット・デメリット

パブリッククラウドとは、クラウドプロバイダーが提供するクラウドコンピューティング環境を、インターネットを介して複数ユーザで共有して利用するサービスのことです。

パブリッククラウドのメリットとデメリットは、それぞれ以下のようになります。

メリット

  • 複数ユーザでシェアするので、コストを抑えられる
  • クラウド基盤の運用保守はクラウドプロバイダーが行うため、システム管理者の負担が減る
  • 自動フェールオーバーなど障害対策がとられている
  • リソースの追加や縮退が即時にできるなど、拡張性に優れている
  • 必要な分だけいつでも利用可能

デメリット

  • クラウド基盤の障害発生時に、ユーザは状況把握もコントロールもできない
  • 閉域ネットワークではないので、セキュリティ面で不安が残る

プライベートクラウドのメリット・デメリット

プライベートクラウドとは、自社専用のクラウド環境を構築し、社内でのみ利用する形態のことです。プライベートクラウドのメリット・デメリットには、以下が挙げられます。

メリット

  • 自社で占有できるため、クラウド基盤のカスタマイズや障害時の対応がしやすい
  • 自社専用の設備やネットワーク・サーバー環境を限定したユーザが利用するため、パブリッククラウドと比較してセキュリティ面で優れる

デメリット

  • 自社専用のクラウド基盤を構築する必要があるため、ハードウェア調達など初期費用が高くなる
  • クラウド基盤全体のリソース増減に対応しにくい
  • パブリッククラウドに比べて、利用開始まで時間がかかる

ハイブリッドクラウドのメリットと課題

ここまで、パブリッククラウドとプライベートクラウドのメリット・デメリットを見てきました。ハイブリッドクラウドをうまく使うことで、それぞれのデメリットを解消し、より信頼性の高いシステム構築が実現します。
ハイブリッドクラウドのメリットと課題について見ていきましょう。

メリット

セキュリティ確保と負荷分散

プライベートクラウドは、セキュリティは強固なものの、利用できるリソースの増減には対応しにくいという特徴があります。一方で、パブリッククラウドはリソースの増減には柔軟に対応できるものの、セキュリティ面では比較的プライベートクラウドに劣ります。

ハイブリッドクラウドを構築すれば、複数のサービスを用途に応じて使い分けられるため、それぞれのメリットを活かすことができます。

例えば、リソースの増減に対応しやすいパブリッククラウドで短期的なアクセス集中への対応やデータ処理を行い、セキュリティの高いプライベートクラウドに機密性の高いデータを置く、などの使い方が考えられるでしょう。

リスク分散

ハイブリッドクラウドの運用には、単純に複数のクラウドにシステムを分けることによる、リスク分散効果もあります。
物理的にシステムの稼働場所が分けられていることにより、災害時やマルウェア感染などの被害を受けた場合でも、別のクラウドに保管していたデータは無事を保つことが可能です。

コストの最適化

ハイブリッドクラウドの運用には、コスト面のメリットもあります。
パブリッククラウドが従量課金によるコストがかかるのに対し、プライベートクラウドはシステムの初期導入費とシステム全体の月次の運用コストがかかり、それぞれコストのかかり方に違いがあります。

以下のように、それぞれの特性に合わせて利用することで、無駄なコストの削減が可能です。

  • パブリッククラウド:短期的にリソース増減があるシステムや、リソースが少なくて済むシステムに利用
  • プライベートクラウド:セキュリティを確保しながら長期間使うシステムに利用

構築・運用時の課題

システム構成・運用が複雑になる

ハイブリッドクラウドには、上記のように多くのメリットがありますが、システムの構成・運用が複雑になる点が課題です。

ハイブリッドクラウドは、複数のクラウド、あるいはオンプレミスを組み合わせるため、必然的に構成が複雑になります。さらに、各クラウドサービスやオンプレミスに関する知識も必要なことに加え、管理項目も異なります。
そのため、ハイブリッドクラウドのメリットを最大限活かすには、各環境に合わせた監視・運用設計が必須となり、その分運用の手間やコストは増大します。

ハイブリッドクラウドを導入する際には、システム構築・運用を担当する人材の確保や、リソースの問題など実際の運用にどれだけのコストがかかるのか、見極めることが重要です。

ハイブリッド環境の用途例

上述した内容と一部重複しますが、ハイブリッド環境の用途について、具体的な例をご紹介します。

メリットを組み合わせる例

例)会員の個人情報はプライベートクラウドで、アクセスが集中する会員向けWebサービスを提供するサーバーはパブリッククラウドで構成する

この例は、ハイブリッドクラウドの代表的な運用方法の一つです。
個人情報という機密性の高いデータをセキュリティに強いプライベートクラウドに保管し、アクセスが集中するWebサーバーはリソースの増減への対応に長けたパブリッククラウドに置きます。そうすることで、それぞれのクラウドサービスの利点を活かした運用をすることができます。

また、ハイブリッドクラウドには、以下のような用途もあります。

BCP対策の例

例)BCP対策の一環として、物理的にシステムやデータを複数のクラウド上に置くことで、災害発生時に可能な限り迅速に復旧できるよう構成する

こちらは、純粋にリスク分散のために、複数のクラウドを利用している例といえるでしょう。

おわりに

ハイブリッドクラウドは、複数のクラウドサービス(オンプレミス環境も含む)を組み合わせて使う環境を指す言葉で、うまく運用することでそれぞれのサービスのデメリットを打ち消し、メリットを活かすことができます。

ハイブリッドクラウドの運用によるメリットは、セキュリティの向上と負荷分散の両立、リスク分散、コストの適正化など多岐にわたりますが、一方でシステム構成や運用は複雑になります。ハイブリッドクラウドの導入を検討する際には、各環境に合わせた監視設計、運用設計のためのリソースやコストについても十分に考慮する必要があるでしょう。

あわせて、オンプレミスとクラウドを安全に接続する方法を解説した「オンプレミスとクラウドを接続するには?VPN接続など安全な方法を紹介」もチェックしてみてください。

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Tag: ハイブリッドクラウド パブリック・プライベート・ハイブリッドクラウド比較

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