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仮想化とクラウドの違いを理解し、自社に最適なソリューションを見つけよう
「仮想化」と「クラウド」はどちらも IT インフラを支える主要な技術であり、混同されることが多くあります。とくに仮想化プラットフォームのデファクトスタンダードとなっている VMware 製品と、 Amazon Web Services (以下、 AWS )や Microsoft Azure (以下、 Azure )などに代表されるパブリッククラウドサービスのどちらを導入するか迷うケースは多いのではないでしょうか。
本記事では、 VMware 製品とパブリッククラウドサービスの特徴をわかりやすく比較します。システム規模別の選び方も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1. VMwareとクラウドの関係
まず、 VMware (仮想化)とクラウドの関係性について解説します。
VMwareと仮想化とは
仮想化とは、物理的なハードウェアリソースを抽象化し、複数の仮想マシンを一つの物理サーバー上で稼働させる技術のことです。この技術によりハードウェアの効率的な利用が可能になり、リソースを柔軟に管理・運用できます。
VMware 社は、主にこの仮想化技術を活用した製品を提供する企業です。代表的な製品として、仮想化プラットフォームを構築するためのさまざまなソフトウェア・機能のパッケージである「 VMware vSphere (以下、 vSphere )」があります。

クラウドとは
クラウドとは、仮想化技術を利用し、インターネットを通じて IT リソースを提供するサービスのことです。クラウドサービスを契約すると、ユーザーはサーバーなどの物理的な環境を自社で用意しなくても、インターネット越しにリソースを必要な時に必要な分だけ利用できます。

vSphere は主にオンプレミスでの仮想化環境の構築・管理を目的とする製品であるのに対し、クラウドはインターネット経由でリソースを提供するサービスです。両者は仮想化技術を基盤としているものの、用途や運用方法が異なります。
2. VMwareとクラウドの違いを比較
VMware 製品とクラウドのどちらを導入するか判断するには、それぞれの違いについて理解することが重要です。ここでは、VMware 製品を利用する場合とパブリッククラウドサービスを利用する場合の主な違いを下記の表にまとめました。それぞれの項目について詳しく解説します。
比較項目 | VMware | クラウド |
---|---|---|
コスト | △(初期投資が高い) | ◯(初期投資は低く、利用料のみ) |
スケーラビリティ | △(ハードウェアの追加が必要) | ◎(オンデマンドで無制限に拡張可能) |
パフォーマンス | ◎(高いカスタマイズ性で最適化可能) | ◯(標準的な設定、用途に制限がある) |
構築期間 | △(長期間が必要) | ◎(迅速に構築可能) |
可用性 | ◯(高いが自社管理が必要) | ◎(冗長性が標準で組み込まれている) |
セキュリティ対策 | ◎(自社で細かくカスタマイズ可能) | ◯(プロバイダの標準設定に依存) |
災害対策 | △(自社での設計・実装が必要) | ◎(手間が少ない) |
導入・運用の容易性 | △(高度な専門知識が必要) | ◎(基本的な知識で利用可能) |
コスト
VMware 製品を利用する場合、ハードウェアの購入費やソフトウェアライセンス費が発生するため、初期投資が高くなります。運用開始後も、保守やアップグレードの対応が必要なため、継続的な人件費を考慮する必要があるでしょう。
一方、クラウドはハードウェアが不要なため初期投資が低く、使用したリソースに応じた従量課金制が一般的です。そのためクラウドは初期投資を抑えやすくなります。ただし、長期的に大規模なリソースを利用する場合、 VMware 製品を利用するよりもかえってコストが高くなる可能性もあるため注意しましょう。
スケーラビリティ
VMware 製品を利用する場合、リソースを拡張するにはハードウェアの追加が必要です。調達や設定などに一定の手間と時間を要します。また、大規模な拡張には物理的なスペースや電力の制約も考慮しなければなりません。
これに対し、クラウドはオンデマンドでリソースを即座に拡張できるため、非常に高いスケーラビリティをもつことが特徴です。ピーク時のトラフィック増加や急な需要増加にも柔軟かつ迅速に対応できる点がクラウドの強みになります。
パフォーマンス
VMware 製品は、自社で管理するためハードウェアや仮想マシンの設定を細かくカスタマイズできます。これにより特定の業務やニーズに最適化した高いパフォーマンスを提供することが可能です。
一方で、クラウドのパフォーマンスはサービスプロバイダの設定に依存します。カスタマイズはできるものの自由度は高くなく、特定の高負荷な用途には十分なパフォーマンスを引き出しにくい場合があります。
構築期間
VMware 製品を用いた仮想化環境の構築には、ハードウェアの調達・設定・テストなどの作業が必要なため、利用を開始するまでには一定の期間が必要です。とくに大規模な環境では、このプロセスに多くの時間と労力がかかります。
これに対し、クラウドではすでにプロバイダにより構築・整備されたインフラを利用できるため、数クリックで環境を構築し、迅速にサービスの利用を開始できます。
可用性
VMware 製品は高い可用性を提供することも可能ですが、ハードウェアやインフラの冗長性を確保するためには自社での管理が必要です。一方で、クラウド環境では多くの場合、内部で冗長性が確保されています。ただし、サービスによって冗長性の内容は異なるため事前に確認が必要です。
また、 VMware 製品を使用する場合、障害発生時にサポートは受けられますが、基本的には自社で対応する必要があります。一方、クラウドサービスでは物理インフラの障害に対してはプロバイダが対応することが一般的です。
セキュリティ対策
VMware 製品を使用する場合、セキュリティ対策は自社で設計・運用する必要があるため、細かなカスタマイズができます。特定の業務要件に応じた高度なセキュリティ設定も可能です。
一方、クラウドではプロバイダが標準的なセキュリティ対策を提供しており、基本的なセキュリティは確保されていますが、詳細な設定やカスタマイズは制限されることがあります。クラウド利用時には、プロバイダのセキュリティ対策と自社の要件をしっかりと見極めることが重要です。
災害対策
VMware 製品を単一の拠点やデータセンターで運用している場合、災害対策は不十分であるとが多いです。これは、物理的に離れた場所にバックアップが存在しないため、地震や停電などの災害が発生した際に、すべてのシステムが影響を受ける可能性があるからです。災害対策として冗長化や障害発生時の対応プロセスなどを整備するには、自社で設計・実装する必要があり、これには時間とコストがかかります。
一方でクラウドを利用する場合は、複数のデータセンターが用意されているため比較的簡単にデータの冗長化や物理的に離れた場所へのバックアップができます。クラウド利用により、災害対策にかかる手間とコストを大幅に削減することが可能です。
導入・運用の容易性
VMware 製品を導入・運用するには、仮想化技術、ネットワーク、ストレージなどに関する高度な専門知識を持つ人材が必要です。
一方、クラウドは物理的なインフラの構築・運用はプロバイダが担うため、ユーザーは一定の知識があれば基本的な操作を行えます。クラウドの利用は導入のハードルが低く、スキルセットが限られたチームでも運用しやすいといえるでしょう。
3. VMwareのメリット・デメリット
前章で紹介した特徴を踏まえたうえで、改めて VMware のメリット・デメリットを整理します。
VMwareのメリット
VMware の主なメリットは次のとおりです。
- 高パフォーマンス
- セキュリティ対策の柔軟性
- 環境構築の柔軟性
ハードウェアの選定や細かな設定などのカスタマイズが可能で、設定次第で高いパフォーマンスを提供できます。特定のニーズに最適化しやすいことが大きなメリットです。またセキュリティ対策やネットワーク設計なども自社で行えるため、自由度が高くなります。
VMwareのデメリット
VMware の主なデメリットは次のとおりです。
- コストが高額になりやすい
- 専門知識が必要
- スケーリングに制約がある
クラウドと比較すると、導入時のハードウェア購入費など、初期投資が高くなりやすい傾向があります。また、仮想化環境を構築・運用するには、専門的な知識と技術をもつ人材を確保しなければなりません。さらに物理的なハードウェアに依存するため、リソースのスケーリングには制約があり追加投資が必要です。
4. クラウドのメリット・デメリット
次に、クラウドのメリット・デメリットを見ていきましょう。
クラウドのメリット
クラウドの主なメリットは次のとおりです。
- 低初期コスト
- 高いスケーラビリティ
- 迅速な導入と展開
ハードウェアの購入は不要で、使用した分だけの従量課金制のため、初期コストを大幅に抑えられます。また、リソースのスケーリングが容易で需要に応じて迅速に追加・削減できるため、柔軟に運用できます。さらに、短期間で導入・展開できる点も大きなメリットです。
クラウドのデメリット
クラウドの主なデメリットは次のとおりです。
- カスタマイズ性が低い
- セキュリティ対策はプロバイダに依存する
- 運用コストが増加する場合がある
プロバイダが提供する標準的なリソースと設定を使用するため、特定のニーズに合わせた細かなカスタマイズが難しい場合があります。セキュリティ対策もプロバイダに依存する部分が多く、自社で完全にコントロールすることはできません。
さらに、使用量が増えると運用コストが予想以上に膨らむリスクもあるため、継続的なコスト管理が求められます。
5. システム規模別の選び方
VMware 、クラウドそれぞれの特徴を理解すると、自社に最適な選択をするために役立ちます。ここでは、システムの規模に合わせた具体的な選び方について解説します。
小規模システム
スタートアップ企業や、スモールビジネスなどで運用される小規模なシステムの場合、クラウドが向いています。
小規模システムでは、初期コストをできるだけ抑えてスピーディに進めることを最優先とする場合が多いです。 AWS や Azure などのパブリッククラウドは、初期投資が不要で低コストで始められ、使用した分だけ料金を支払う形態のため予算を抑えやすくなります。
また、迅速にシステム環境を構築できるため、時間とリソースを節約できます。小規模なシステムでは、クラウドの柔軟性とスケーラビリティがとくに役立つでしょう。
ただし、自社特有のセキュリティ要件やデータ保護要件がある場合、オンプレミスで運用できる VMware 製品を検討した方が良い場合もあります。クラウドと比較すると運用負荷やコストは増加しやすいため、慎重な検討が必要です。
中規模システム
成長期にある企業や、複数部門を持つ中堅企業などの中規模なシステムでは、クラウドがおすすめです。
中規模システムでは、クラウドのスケーラビリティとコスト効率が強力なメリットとなります。とくに、今後拡大が予想される企業である場合や、迅速な市場対応が求められる場合には、自由にスケーリングできるクラウドの柔軟性が非常に有効です。
また、クラウド上での運用は、新しいサービスの導入やアプリケーションの展開を迅速に行えるため、競争力を高めるためにも役立ちます。
ただし、すでに大規模なオンプレミスのインフラを構築しており、それを活用し続ける必要がある場合や、特定のコンプライアンス要件によりオンプレミス環境が必要な場合は、 VMware 製品の方が適している場合もあります。
大規模システム
大企業の社内システムや世界中に拠点をもつ企業のサービスなど、大規模なシステムにおいては VMware 製品がおすすめです。
大規模システムでは、カスタマイズ性や完全なリソースコントロールが重要です。とくに複数の拠点やデータセンターを運営する場合、 VMware 製品のメリットである高い管理性とパフォーマンスが重宝されるでしょう。
ただし大規模システムでも、迅速なスケーリングが必要な場合など、クラウドが最適な場合もあります。たとえば利用者数の増減が激しいサービスや、イベント時などの一時的なトラフィック増加に対応する場合には、クラウドが有効な選択肢となるでしょう。
6. ハイブリッドクラウド環境の検討もおすすめ
ここまで解説したように、 VMware 製品とクラウドにはそれぞれメリット・デメリットがあり、適した環境は異なります。
そこで、オンプレミスの VMware 環境とクラウド環境を組み合わせる「ハイブリッドクラウド」環境を構築することもおすすめです。これによりそれぞれの強みを引き出し、ビジネスニーズに柔軟に対応することが可能となります。
たとえば、日常的な業務や重要なデータの管理はオンプレミスの VMware 環境で行い、高度なセキュリティやカスタマイズ性を確保します。一方で、提供するサービスの一時的なトラフィック増加などに対応するため、柔軟なスケーリングを実現するクラウド環境を利用します。
両者を組み合わせ>ことで特定の要件に環境を合わせつつ、コストを最適化することも可能です。
また、「 VMware Cloud 」という、既存の VMware 環境をパブリッククラウドに拡張できるサービスも提供されています。 AWS や Azure など主要なクラウドプロバイダとシームレスに連携でき、オンプレミスとクラウドのリソース管理を一貫して行うことも可能です。
7. まとめ
仮想化とクラウドはどちらも IT インフラを支える技術のため混同されやすいですが、両者は異なるものでありそれぞれメリット・デメリットがあります。要件によりどちらが適しているかは異なるため、まずはそれぞれの特徴を理解することがおすすめです。
導入を検討されている方は、この記事を参考に自社の要件と照らし合わせてみてください。
Tag: VVMWare
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