Managed Service Column <システム運用コラム>

Category: 実践編

2026.08.28

本コラムは全4回シリーズです。
システム運用設計の重要性や伴走型支援について解説します。

属人化と運用負荷を解消する、社内・外部の最適な役割分担とは

新機能のリリースを急ぎたい一方で、夜間の障害対応や問い合わせ対応、監視アラートの確認に開発メンバーの時間が削られるケースは少なくありません。サービスが成長するほど、開発スピードと安定運用の両立に悩む場面も増えていくでしょう。

開発を優先するあまり運用改善が後回しになったり、反対に運用対応へ人員を割くことで開発時間が圧迫されたりする事態も起こりがちです。限られた人員で両方を支えようとするほど特定の担当者に負荷が集中し、ノウハウの偏りにもつながります。

こうした状況を改善するには、人員やツールを単に増やすだけでなく、開発と運用を並行して回せる役割分担と判断基準を整えることが重要です。

本記事では、開発と運用が衝突する構造を整理したうえで、両立を支える仕組み化の考え方、体制設計の選択肢、社内と外部の役割分担について解説します。

1. 開発優先・運用業務の増加・属人化――開発と運用の両立を難しくする3つの要因

開発と運用の両立を難しくしているのは、単なる人手不足だけではありません。開発優先による運用改善の後回し、サービス成長に伴う運用業務の増加、障害対応やノウハウの属人化という 3 つの要因が複合的に絡み合い、双方にしわ寄せが生じるためです。

本章では、これらの要因がどのように連鎖し、開発スピードと運用品質に影響を及ぼすのかを整理します。

開発と運用の両立を難しくする3つの要因

開発が優先され、運用改善が後回しになりやすい

新機能のリリースや改修は成果が見えやすく、事業側からの期待も大きくなります。一方で、監視設定の見直しや手順書の整備、障害対応フローの改善といった運用改善は、売上や機能追加といった形で直接成果が表れにくいため、問題が発生するまで緊急度を低く見積もられがちです。

そのため、短期的には開発を優先できても、不要なアラート、繰り返し発生する問い合わせ、手作業による定常業務などが残り続けます。こうして積み上がった運用上の小さな課題が、後から障害対応や調査工数として開発チームに跳ね返ってきます。

サービス成長に伴い、運用業務は「増え続ける」

利用者数やトラフィックが増えれば、問い合わせ件数や障害時の影響範囲、アラート確認の頻度も大きくなります。立ち上げ期と同じ体制のまま運用を続けると対応件数が膨れ上がり、開発計画にも支障をきたしかねません。

特に BtoC サービスでは、キャンペーンや大型リリースのタイミングで負荷が急増するため、平常時のみを前提とした運用体制では限界を迎えやすくなります。

障害対応や運用ノウハウが属人化する

「この障害はあの人しか分からない」という状態は、一見すると頼れる担当者がいるように見えます。しかし、システムの構成や過去の対応経緯、判断基準が共有されていなければ、その担当者が不在の際に判断が遅れる原因となります。

開発と運用を両立させるには、個人の頑張りに依存するのではなく、役割や判断基準、改善の進め方を体制として整えなければなりません。

2. 開発と運用の両立を支える「仕組み化」─ 押さえるべき3つの鍵

開発と運用の両立が難しくなると人員追加やツール導入を検討しがちですが、役割や判断基準が曖昧なままでは確認・調整の負担は減りません。

限られた人員で安定した運用を続けるには、役割と運用フロー、判断基準、改善の流れを仕組みとして整えることが重要です。ここでは、仕組み化を進める「 3 つの鍵」を解説します。

役割と運用フローの明確化

1 つ目は、役割と運用フローの整理です。障害やアラートが発生した際に「誰が最初に確認するか」「どこまで一次対応を行うか」「どの条件で開発チームへ連携するか」を決めます。たとえば、運用担当者がサービスの稼働状況やログを確認し、ユーザーに影響がある場合や手順書で復旧できない場合は開発責任者へ連携する、といった流れです。担当者、対応範囲、連携条件、完了条件まで明文化することで、対応の抜け漏れや判断待ちを減らせます。

判断基準の標準化

2 つ目は、判断基準の標準化です。障害の優先順位を担当者の経験だけで決めると、対応スピードや品質にばらつきが生じます。影響を受けるユーザーの範囲、サービスの利用可否、売上やユーザー体験への影響、代替手段の有無などを基準に、緊急度を整理しておくことが重要です。たとえば、「全ユーザーが購入できない」「代替手段がない」といった事象は優先度を高く設定し、一部機能の不具合で代替手段がある場合は通常対応とするなど、判断の目安を共有しておきます。

改善の流れを日常業務に組み込む

3 つ目は、改善の流れを業務として定着させることです。障害から復旧した時点で対応を終えてしまうと、同じ問題が再発しかねません。原因、暫定対応、恒久対策、再発防止策を記録し、担当者と実施期限を決めて監視設定や手順書へ反映するところまでを一連の業務とします。たとえば月1回の振り返りで、繰り返し発生しているアラートや問い合わせを棚卸しし、改善の優先順位を決める場を設けると、日々の対応を継続的な運用品質の向上につなげやすくなります。

仕組み化できると、開発と運用の関係が変わる

仕組み化が進むと、運用は特定の担当者の経験や善意に依存するものではなく、チームで継続的に回せる業務へ変わっていきます。開発チームはすべての運用対応に巻き込まれることがなくなり、本当に判断が必要な業務へ集中できるようになります。

開発と運用を両立させるには、まずこの土台を整えたうえで、自社だけで担うのか、外部と分担するのかといった運用体制の選択肢を検討することが重要です。

3. 仕組み化を支える体制設計 ─ 3つの選択肢を比較する

開発と運用の両立を図るには、仕組みをどの体制で運用していくかまで設計する必要があります。

運用体制には、大きく次の3つの選択肢があります。

A:開発チームが運用も兼任する
B:定型的な運用業務を外部へ委託する
C:外部と協業しながら運用改善を進める(伴走型支援)

それぞれ、運用負荷や社内へのノウハウの蓄積、改善活動の進めやすさが異なります。自社の成長フェーズや運用課題に合わせて、適した体制を選択することが重要です。

仕組み化を支える体制設計 ─ 3つの選択肢を比較する

A:開発チームが運用も兼任する

立ち上げ期や小規模サービスでは、開発チームが運用を兼任する体制が現実的なケースが多く見られます。開発者自身がシステム構成やコードを熟知しているため、障害発生時の原因調査や暫定対応を素早く進められます。事業方針や開発計画と運用判断が近く、リリース直後の不具合や細かな改善にも柔軟に対応できる点がメリットです。

一方で、監視や問い合わせ対応、定常作業が増えるにつれ、本来の開発業務が中断されるリスクが高まります。日中の業務がアラート対応や問い合わせ対応で中断され、夜間休日にも対応が発生する状態が続けば、開発スピードや運用品質にも悪影響を及ぼしかねません。

兼任体制は初期の身軽さが強みである一方、成長期以降は特定の担当者への負荷集中と属人化が顕著となるおそれがあります。

B:運用を外部へ委託する

監視やアラートの一次対応、定常作業などについて、あらかじめ業務範囲や対応手順を定めたうえで外部へ委託すれば、社内の運用負荷を大幅に削減できます。開発チームは日々のアラート確認や定常作業から解放され、新機能開発やサービス改善に注力しやすくなります。特に 24 時間 365 日の監視や夜間・休日対応など、自社内だけでカバーしにくい業務において有効な選択肢です。

一方で、一般的な運用委託は、決められた範囲の実務を安定して回すことに主眼があります。そのため、対応結果を受け取るだけでは「どの作業に負荷が集中しているのか」「どの手順を見直すべきか」といった改善課題が社内から見えにくくなる懸念もあります。

運用代行型を機能させるには、委託する業務、社内へ連携する条件、対応結果の報告方法を明確にしたうえで、運用品質や課題を社内でも定期的に確認する必要があります。

C:外部と協業しながら運用改善を進める(伴走型支援)

3 つ目は、外部の専門知見を取り入れながら社内チームと共同で運用改善を進める伴走型の選択肢です。

単に作業を代行してもらうのではなく、課題の整理、判断材料の提示、運用フローの見直し、再発防止策の検討、手順化や標準化までを継続的に支援してもらえます。社内がサービス方針や事業影響を踏まえて改善の方向性を決める際も、外部の専門家が客観的な分析や改善案を提示してくれるため、意思決定をスムーズに進めることが可能です。

また、対応履歴や判断理由、改善活動を共有し、手順書や監視設定に反映することで、外部の知見を自社資産として蓄積できるのも利点です。外部へ任せきりにするのではなく、自社が運用状況と改善方針を把握・コントロールできる状態を目指せる点が大きな特徴といえます。開発スピードを維持しながら運用品質の向上や継続的な改善を目指す場合には、伴走型支援が有効な選択肢となります。

どの選択肢を選ぶべきか

自社サービスの規模や運用負荷、外部支援に求める役割によって、求める選択肢は変わります。

サービス規模が小さく運用負荷も限定的で、開発チームが無理なく対応できる段階であれば、 A の「開発チームが運用も兼任する体制」を継続するのが合理的です。定型的な監視や夜間対応など、明確に切り出せる実務の負担を軽減したい場合は、 B の運用委託型が適しています。

一方、日々の実務負荷を減らすだけでなく、社内に判断力や改善力を残しながら運用品質を高めたい場合は、 C の伴走型が有力な選択肢です。ただし、伴走型支援では社内と外部が協働する領域が広いため、社内に残すべき判断、外部の専門知見を活用する領域、双方が協働で進める領域を明確にしておく必要があります。

次章では、伴走型支援を効果的に活用するための役割分担を整理します。

4. 伴走型の体制を機能させる役割分担

ここでは、伴走型体制を機能させ、自社の運用力向上と自走化につなげるための役割分担について解説します。

社内に残す役割 ─ 事業判断に関わる領域

社内に残すべきなのは、サービスの方針や事業影響に関わる判断です。たとえば、どの程度のコストを投じて安定性を高めるか、リリースを予定どおり進めるか延期するか、どの障害を最優先で復旧するかといった判断は、自社で担うべき領域といえます。

特に BtoC サービスでは、キャンペーン期間中、繁忙時間帯、大型アップデート直後など、同じ障害でも発生タイミングによって影響度が変わります。こうした背景を踏まえた優先順位付けは、事業計画やユーザー体験を理解している社内でなければ適切な判断を下しにくいのが実情です。

外部から判断材料や改善提案などの支援を受ける場合でも、最終的な意思決定は自社で担う姿勢が欠かせません。

外部の専門知見を活用する役割 ─ 調査・設計・実行支援

障害原因の分析、技術検証、設定変更、改善策の設計などは、外部の専門知見を活用しやすい領域です。

たとえば、同じアラートが頻発している場合、通知条件を変更するだけでは根本解決に至りません。システム構成やログ、過去の対応履歴を確認し、監視設定、運用フロー、システム設計のどこに原因があるのかを調査する必要があります。

社内リソースだけで調査や検証に十分な時間を割けない場合でも、外部の専門家から分析や改善案の提示、施策の実行支援を受けることで、運用改善を推進しやすくなります。

協働で進める役割 ─ 改善とナレッジ移転

運用改善やナレッジ移転は、社内と外部が協働で進めたい領域です。

障害対応の現場では、復旧作業だけで終わらせず、根本原因の分析、暫定対応の評価、恒久対応の検討、監視設定や手順書への反映まで行わなければ、同じ問題が再発しかねません。外部の知見を活用すれば、監視項目の見直し、対応フローの改善、手順書の整備などをスムーズに進められます。

一方で、改善の優先順位決定やサービス方針への反映には社内の判断が不可欠です。月次の振り返りでインシデントや運用課題を棚卸しし、改善案を決定して運用基準へ反映する流れを作ることで、外部支援を活用しながら自社内にもノウハウを蓄積できるようになります。

役割分担が機能すると、現場はこう変わる

役割分担の考え方

役割分担が最適化されると、開発チームはリリースや機能改善といった本来の業務へ注力できるようになり、運用対応による作業中断を大幅に減らせます。また、監視や一次対応、定常作業を外部と分担することで、日々の運用負荷も抑えやすくなります。

一方で、運用課題の整理、改善提案、手順化、ナレッジ移転は、単なる作業代行だけでは進みにくい領域です。開発スピードと運用品質を両立させるには、事業判断や優先順位付けを社内に残し、負荷の高い実務は外部と分担する設計が重要です。

また、改善活動やナレッジ移転を社内と外部が協働で進めることで、運用を改善し続ける体制を構築できます。伴走型支援は、外部へ任せるための仕組みではなく、自社の運用力を高めながら改善を継続するための体制づくりといえるでしょう。

5. まとめ

開発と運用が両立しない原因は、担当者の努力不足ではなく、サービスの成長に合わせた仕組みや体制の未整備にあります。人員やツールを増やす前に、まずは役割、判断基準、改善フローを整理し、限られたリソースでも運用が回る土台を築くことが重要です。

そのうえで、自社の成長フェーズや運用負荷に応じて適切な運用体制を選択し、事業判断は社内に残しながら、必要に応じて外部の知見やリソースを活用することが、開発スピードと運用品質を両立するポイントとなります。

Rworks の伴走型運用サービス「 OPS-AID Works 」は、運用実務の支援に加え、課題整理、改善提案、運用フロー整備、ナレッジ移転まで並走し、開発スピードと安定運用の両立を後押しします。

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