目次
Azureにおける2つのHorizon構成パターンと選定ポイントを整理
VMware Horizon をクラウド環境で利用したいと考えたとき、「オンプレミス構成と何が変わるのか」「どのような構成パターンがあり、自社にはどれが適しているのか」といった点で判断に迷うケースは少なくありません。
VMware Horizon は、仮想デスクトップ( VDI )をオンプレミスやクラウド環境で提供できるソリューションであり、構成や運用方法には複数の選択肢が存在します。そのため、仕組みや選択肢を整理できていないと、設計や導入に向けた検討がスムーズに進まなくなるおそれがあります。
本記事では、 VMware Horizon の基本構成を整理したうえで、クラウド実装の代表例として Azure を取り上げながら、構成パターンや検討時のポイントを解説します。
1. VMware Horizonとは
VMware Horizon とは、 VDI ( Virtual Desktop Infrastructure :仮想デスクトップインフラストラクチャ)を実現するためのソリューションです。
オンプレミス、クラウド、ハイブリッドなどが選べる柔軟な導入形態が特徴で、企業のIT環境に応じた最適な運用ができます。また可用性の高い仮想化基盤をもち、業務効率化やセキュリティ強化を目的とした仮想デスクトップ環境の構築をサポートします。
VMware Horizon はこれまで VMware の End-User Computing ( EUC )製品として提供されてきましたが、現在は事業移管により Omnissa が提供主体となっています。本記事では、 Omnissa 移行後の最新仕様・構成を前提に解説します。
VDIとは
まず、VMware Horizonを理解する前提として、VDIの基本的な考え方を簡単に整理します。
VDI とは、サーバー上に仮想化されたデスクトップ環境を構築し、業務で利用する PC などのクライアント端末へ画面を転送する技術です。クライアント側では通常のデスクトップ環境のように手元の画面でキーボードやマウスによる操作ができますが、実際の処理やデータの保存はサーバー側で行われます。
VDI には次のようなメリットがあります。
- 端末にデータが保存されないため、情報漏洩のリスクを削減できる
- オフィス以外の場所からでもネットワーク環境さえあれば業務データにアクセスできる
- OS のアップデートなどのメンテナンスはサーバー側で一括で行えるため、端末の管理業務の負担を減らせる
- 災害時や緊急時でもインターネット環境があれば業務システムにアクセスできるため、事業の継続性を確保しやすい
上記のように VDI にはメリットが多いですが、どのソリューションを選択するかが重要なポイントになります。 VMware Horizon は、高度な仮想化技術を活用し、企業の業務環境に最適な仮想デスクトップ基盤を提供する代表的な VDI ソリューションです。
2. VMware Horizonを構成する論理構造と全体像
VMware Horizon の導入形態には、オンプレミス環境に構築する方法( Horizon 8 )と、管理・接続制御をクラウド側で提供する方法( Horizon Cloud )があり、採用する構成によって利用するコンポーネントは異なります。しかし、いずれの導入形態を選択する場合でも、仮想デスクトップ環境として必要となる役割(論理構造)は共通しています。
VMware Horizonを構成する主な役割レイヤー
以下に、 VMware Horizon を構成する主な役割レイヤーと、導入形態ごとにそれぞれの役割を担う代表的なコンポーネントを整理しました。
| 役割レイヤー | 役割の概要 | オンプレミス型 ( Horizon 8 ) |
クラウド管理プレーン型 ( Horizon Cloud ) |
|---|---|---|---|
| 管理・制御 | デスクトップまたはアプリケーションの割り当て、ユーザー管理、ポリシー設定など、環境全体を管理・制御する。 | Connection Server | Omnissa Horizon Control Plane ※管理操作は Omnissa Horizon Universal Console を通じて行う。 |
| 接続・仲介 | ユーザーからの接続要求を受け付け、適切な仮想デスクトップ/アプリへ振り分ける。 | Connection Server | Omnissa Horizon Control Plane |
| 実行 | 仮想マシン上のデスクトップ環境、 RDSH によるアプリケーション実行環境を提供する。 | 仮想デスクトップ VM / RDSH ※各実行環境には Horizon Agent がインストールされる。 |
|
| アクセス・セキュリティ | 社外・インターネット経由での利用時に通信を保護し、安全なアクセスを実現する。 | Unified Access Gateway( UAG ) | |
| クライアント | 利用者が端末から仮想デスクトップまたはアプリケーションに接続するためのインターフェース。 | Horizon Client | |
※RDSH ( Remote Desktop Session Host )は、Windows Server 上で複数ユーザーがアプリケーションを共有利用するための実行環境を指す。
仮想デスクトップ/アプリケーション配信の基本的な処理の流れ
VMware Horizon における仮想デスクトップやアプリケーション配信は、導入形態にかかわらず、概ね以下の流れで行われます。
- 利用者が PC やモバイル端末から Horizon Client を起動する。
- 接続・仲介レイヤーによりユーザー認証と接続先の判定が行われる。
- 実行レイヤー上の仮想デスクトップまたはアプリケーション環境への接続が確立される。
- 画面転送を通じて、業務環境が利用者の端末に提供される。
処理やデータはサーバー側で実行・管理されるため、端末側に業務データが残りにくく、セキュリティや運用管理の観点でも大きなメリットがあります。
導入形態による設計・運用上の違い
上記の役割レイヤー自体は共通しているものの、どのコンポーネントがその役割を担うか、また管理責任がどこにあるかは導入形態によって異なります。オンプレミス型では、主要なレイヤーを自社環境内で構成・運用することが必要です。
一方でクラウド管理プレーン型では、管理・制御や接続・仲介の役割をクラウド側が担い、仮想デスクトップやアプリケーションの実行環境もクラウド基盤上に配置されます。こうした違いを理解したうえで構成を選択することが、 VMware Horizon を適切に導入・運用するための前提となります。
3. VMware Horizonのプラットフォーム構成の違い
本章では、 VMware Horizon 8 と VMware Horizon Cloud それぞれの特徴を整理し、基盤となるインフラや運用の考え方の違いを踏まえながら、自社環境に適した構成を判断するためのポイントを解説します。
VMware Horizon 8 の特徴
VMware Horizon 8 は、仮想デスクトップとアプリケーションを vSphere ベースの環境で提供します。オンプレミスに加え、 Azure VMware Solution( AVS ) などによりクラウド上の vSphere 環境へ展開することも可能です。
vSphere とは仮想化プラットフォームを構築するソフトウェア基盤を指します。現在は Omnissa が提供主体ですが、 VMware Horizon 8 の製品体系や基本的なアーキテクチャは引き継がれています。
VMware Horizon 8 環境では、ユーザーのクライアント端末上の Horizon Client から、セッションを管理する Connection Server を経由して、 Horizon Agent がインストールされた vSphere 上の仮想マシンに接続する構成です。ユーザー認証には Active Directory が用いられます。
Remote Desktop Session Host ( RDSH ) を導入して、仮想デスクトップ全体ではなくアプリケーションのみをユーザーに公開することも可能です。
VMware Horizon Cloud Service の特徴
VMware Horizon Cloud Service は基盤に vSphere を利用せず、ネイティブクラウド環境で仮想デスクトップとアプリケーションを提供します。クラウド事業者が提供するインフラを前提とし、コントロールプレーンをクラウド側で提供することで、インフラ構築や管理の負担を軽減できる点が特徴です。
VMware Horizon Cloud Service の例として VMware Horizon Cloud on Azure があります。Horizon Cloud on Azure では、 Azure 上に仮想デスクトップ環境を構築し、 Horizon Cloud Service のコントロールプレーンを通じて統合管理を行います。
オンプレミス環境と連携したハイブリッド構成にも対応しており、段階的なクラウド移行を検討する企業にとっても有力な選択肢となるでしょう。こちらも、現在は Omnissa が提供主体となっていますが、 Horizon Cloud Service および Azure 上での提供モデルは引き続き維持されています。
オンプレミス/クラウド/ハイブリッドでの違い
オンプレミス構成は既存資産を活かした運用に適しており、クラウド構成は拡張性や運用負荷低減に強みがあります。ハイブリッド構成は両者を組み合わせ、段階的なクラウド移行や要件に応じた柔軟な運用を可能にします。
VMware Horizon は、要件に合わせて適切な構成方式を選択することで、これらすべての形態に対応可能です。
4. VMware Horizonの特徴とメリット
VMware Horizon の主な特徴とメリットは下記の通りです。
- ハイブリッド・クラウド環境の簡素化
- データの保護とコンプライアンスの確保
- ROI (投資収益率)の向上
- 高可用性・サービス継続性の確保
ハイブリッド・クラウド環境の簡素化
VMware Horizon は、オンプレミス、クラウド両方に導入可能です。これにより、オンプレミスとクラウドをシームレスに管理でき、ハイブリッド・クラウド環境を簡単に構築できます。特に Azure との親和性が高く、これらを組み合わせることで、クラウドの拡張性や可用性を活かした柔軟な VDI 構成が実現するでしょう。
データの保護とコンプライアンスの確保
VDI 化により、端末のデータはすべてサーバー側で管理されます。そのためセキュリティが向上し、端末紛失・盗難などにより、社内の重要データが外部へ流出するリスクが低減されます。
ROI(投資収益率)の向上
ROI(投資収益率)とは、投資に対してどれだけ利益を上げたのかを知るための指標です。 VMware Horizon により個別に管理していた端末を一元管理できるようになり、端末の管理・運用コストに加え、運用属人化の解消や障害対応工数の削減といった間接的なコスト抑制にもつながります。
高可用性・サービス継続性の確保
VMware Horizon では、構成方式に応じた柔軟な高可用性設計が可能です。 vSphere ベースで構成する場合、仮想マシンの可用性を高める手段として VMware HA (High Availability) や vMotion を組み合わせることで、物理ホストの障害対策や、デスクトップを停止させないオンラインメンテナンスを行えます。
一方、クラウド環境では Azure などのクラウド基盤が提供する高い可用性構成を活用できるため、災害対策やBCP の観点からも有効な VDI 基盤を構築できます。
5. VMware Horizonのユースケース
以下に VMware Horizon のユースケースをいくつか紹介します。
リモートワーク/ハイブリッドワーク
業務に使用するデスクトップやアプリケーションへ、どのような場所からでも安全にアクセス可能な VDI 環境により、従業員の柔軟な働き方を実現します。
事業継続性の向上・災害対策(DR)
Horizon の導入に加えて、データのバックアップや冗長化、適切なネットワーク設計などの DR ( Disaster Recovery )対策を組み合わせることで、自然災害や大規模事故などの発生時にオフィスが使用不可になっても、普段と変わらない業務環境を維持できます。
Horizon はオフィスが使用不可になった場合でも、別の拠点や自宅から通常の業務環境にアクセス可能です。また、仮想デスクトップ環境を災害に強いデータセンターやクラウド上に配置することで、物理端末に依存せず、安全に業務を継続できます。
ゼロトラスト/ID連携を前提としたセキュリティ強化
Horizon はゼロトラストセキュリティ(「すべてのアクセスを信頼せず、常に検証する」というセキュリティモデル)を採用しています。そのため、 MFA (多要素認証)や SAML 認証、シングルサインオン( SSO )によるアクセス制御を強化できます。
6. VMware HorizonをAzure上で構築するには
VMware Horizon はクラウド環境に対応したサービスがあり、 Azure 上で利用するためには 2 つの選択肢があります。
Azure上でHorizonを利用する2つの構築パターン
パターン①:Horizon Cloud on Microsoft Azure
先に解説したように、 VMware Horizon はクラウド版も提供されており、この総称が Horizon Cloud です。このなかで、 Horizon Cloud on Microsoft Azure は、 Azure 向けに特化した仮想デスクトップ環境を提供するサービスです。
Azure 上で仮想デスクトップ環境を構築し、統合管理や他の Microsoft 製品とのシームレスな連携を実現します。クラウドベースのコントロールプレーンを通じて管理・運用を行うため、インフラ管理の負担を抑えつつ、 VDI 環境を比較的短期間で展開できる点が特徴です。クラウドネイティブな VDI 環境を構築したい場合や、 VDI 環境をスピーディーに整備したい場合に向いています。
パターン②:Azure VMware Solution(AVS)+ Horizon
図版出典:Microsoft公式サイト
Azure VMware Solution ( AVS )は、既存のオンプレミスの VMware 環境を Azure 上へ移行できるサービスです。
オンプレミスの Horizon 環境を変更せずにそのままクラウドへ移行できます。 Horizon を AVS 上に展開することで、従来の管理手法や運用ツールを維持しつつ、 Azure の拡張性や可用性を活用することが可能です。
既存のオンプレミスの Horizon からそのまま Azure へ移行したい場合や、既存の VMware ベースのワークロードを活かしたい企業に向いています。
AVS について詳しくは以下の記事をご覧ください。
構築パターンの決定方針
Azure 上での Horizon 構築方式は、既存環境の有無や運用負荷、クラウド活用の目的によって選択すべきです。
新規構築やクラウド前提の運用を志向する場合は Horizon Cloud on Azure 、既存の VMware 環境を活かしたい場合は AVS を組み合わせた構成が現実的な選択肢となります。
AzureネイティブVDI(AVD)との棲み分け方
Azure には Azure Virtual Desktop ( AVD ) というネイティブな VDI サービスも存在します。
Horizon は、オンプレミスやハイブリッド構成を含めた柔軟な環境を構築したい場合や、既存 VMware 環境との親和性を重視する場合に適しています。
一方、 Azure 環境に完全に統一したシンプルな構成を求めるのであれば、 AVD が有力な選択肢です。
7. Horizon Cloud on Microsoft Azureの制約・向き不向き
Horizon Cloud on Microsoft Azure は柔軟な VDI 構成を実現できる一方で、オンプレミス環境とは異なる制約や注意点も存在します。これらを整理し、どのような企業に適した選択肢であるかを解説します。
技術的・運用的な制約の考え方
Horizon Cloud on Microsoft Azure は、 Azure のクラウド基盤を前提として提供されるため、オンプレミス環境と同一の構成や運用をそのまま適用できるわけではありません。ネットワークや可用性の設計は Azure の仕様に基づいて行う必要があり、設計思想の違いを理解したうえで構築することが重要です。
また、クラウドベースのコントロールプレーンを利用する特性上、インフラ管理の自由度は一定程度制限されます。オンプレミス環境のように細かな設定変更や独自構成を前提とした運用を行いたい場合は、制約として認識しておく必要があります。
加えて、 VDI の利用体験はネットワーク品質の影響を受けやすい点も考慮しなければなりません。特にインターネット回線や拠点間通信の遅延・帯域が十分でない場合、操作性に影響が出るおそれがあるため、事前の検証やネットワーク設計が重要です。
Horizon Cloud on Microsoft Azureが向いている企業
Horizon Cloud on Microsoft Azure は、クラウドを前提とした VDI 環境を比較的短期間で構築したい企業や、インフラ運用の負担を抑えたい企業に適しています。また、オンプレミス環境から段階的にクラウドへ移行したい場合や、将来的な拡張性を重視するケースにおいても有効な選択肢となるでしょう。
一方で、オンプレミス環境と同等の自由度や細かな制御を求める場合、あるいは既存の vSphere 環境をそのまま活用したい場合には、 Azure VMware Solution 上で Horizon を構築する構成が適しているケースもあります。自社の運用体制や要件を踏まえ、構成の特性を理解したうえで選択することが重要です。
8. まとめ
VMware Horizon は、オンプレミスからクラウド、ハイブリッドまで柔軟に対応できる VDI ソリューションであり、セキュリティ強化やテレワーク対応、運用効率化といった課題解決に有効な基盤です。
特に Azure 環境では、Horizon Cloud on Azure や Azure VMware Solution など複数の構成パターンが用意されており、自社の既存環境や運用体制、将来計画に応じた選択が可能です。一方で、構成方式や可用性設計、ネットワーク設計を誤ると、十分な効果を得られないケースもあります。
Rworksでは、VMware Horizon をはじめとしたVDI環境の設計・構築から運用・監視までを一貫して支援しており、Azure環境への導入や既存環境からの移行についても豊富な実績を有しています。VDI導入やクラウド移行をご検討中の方は、ぜひRworksまでお気軽にご相談ください。
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Tag: VMware Horizon
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