Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

BYODとは?メリット・デメリットとBYODのセキュリティ対策について解説

Category: 入門編

2025.02.21

BYOD の導入を成功させるステップも詳しく解説

近年、社員が個人所有する端末を業務利用する BYOD が注目されています。BYOD は業務効率向上や機器コスト削減などのメリットがありますが、セキュリティリスクのデメリットもあります。

一方、私物端末を断りなく業務利用するシャドー IT の問題も広がりを見せており、こちらも大きなセキュリティリスクとして課題となっています。シャドー IT の問題を防ぎ、適切に BYOD を運用するためにはどうすればよいのでしょうか。

本記事では、BYOD の概要とメリット・デメリットを明確化した上で、BYOD を利用する際のセキュリティ対策の方法について解説します。

1. BYOD とは

BYOD はあまり耳慣れない言葉かもしれません。まずは BYOD がどのようなものかについて解説します。

BYOD とは

BYOD とは

BYOD は「 Bring Your Own Device 」の略称で、個人が所有するパソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末を職場に持ち込み、業務利用することを指します。例えば、私物のパソコンへ業務用メールアカウントを設定して利用する、業務で利用しているクラウドサービスへ私物スマートフォンなどからアクセスして業務を行うなど、さまざまな方法で利用されます。

BYOD は、高性能なスマートフォンやタブレット、インターネットさえあればどこでも利用が可能なクラウドサービスの普及により利用が広まっていると言えます。

業務における端末利用形態

BYOD の他、一般的に業務用で利用する端末には下記のような利用形態があります。

会社から支給された端末

会社が所有する端末を社員に支給する形態で、最も一般的な形態と言えます。端末の機種やセキュリティ対策、管理方法などを会社のポリシーに従って決めることができますが、端末購入コストや管理コストがかかり、社員もポリシーに則って端末を適切に管理する必要があります。

シャドー IT

シャドー IT とは、会社が許可していない個人所有の端末やデバイスを、社員が会社の許可を取らずに勝手に利用する形態です。端末の存在を会社が知りえないため管理することができません。そのため、さまざまなリスクが考えられますが、特に会社のセキュリティポリシーから外れた不適切な端末による不適切な行為が行われる可能性があるため、会社としては最も避けるべき利用形態と言えます。

2. BYOD のメリット・デメリット

BYOD にはセキュリティリスクがあるとお伝えしましたが、BYOD にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは BYOD のメリット・デメリットについて解説します。

BYOD のメリット

BYOD を利用するメリットは下記の通りです。

コスト削減

BYOD により、業務用の端末・デバイスを購入する必要がなくなるため、コスト削減につながります。 1 台あたりのコストはそれほど大きいものではありませんが、社員数分の端末ともなると、中~大企業では大きなコスト削減効果となる可能性があります。

さらに、端末・デバイスの保守管理やアップグレードなどのコストも削減することが可能です。従業員が自ら端末を管理するため、 IT 部門のリソースを他の重要な業務に集中させることもできます。

業務生産性の向上

BYOD では社員の私用端末を利用できます。社員が使い慣れた端末・デバイスを利用でき、時間や場所を選ばない働き方ができるようになることで業務効率・業務生産性の向上が期待できます。

従業員満足度の向上

社員が私物・業務用と複数の端末を管理する必要がなくなり、また使い慣れたデバイスを利用することで操作面でもストレスが少なくなるため、従業員満足度の向上を期待できます。

シャドー IT 対策

シャドー IT 対策

先ほど解説したように、シャドー IT とは企業が使用を許可していないハードウェアやソフトウェア、クラウドサービスなどを従業員が独自に利用することです。企業が管理していないデバイスやサービスは、ウイルス感染やハッキングなどのセキュリティ脅威に対する対策が不十分である可能性があります。これにより、機密情報の漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まるため注意が必要です。

シャドー IT はセキュリティリスクが大きいため企業として最も避けるべき状況です。BYOD の導入により、社員は未許可の私物端末を使う必要性が減るため、企業内のシャドー IT の抑止効果が期待できます。

BYOD のデメリット

BYOD を利用するデメリットは下記の通りです。

セキュリティリスクが増大する

BYOD は私物端末を利用するため、自宅や外出先でも業務利用が可能となります。そのため、紛失により端末内に保存された機密情報の漏洩や、第三者による端末利用やのぞき見などによる情報窃取などといったセキュリティリスクが考えられます。

端末に対して定期的にアップデートを実施しないと脆弱性が放置された状態になり、不正アクセスやマルウェアなどの攻撃を受ける可能性が高くなるでしょう。

労務管理が難しくなる

BYOD により社員は時間や場所を選ばず業務ができるようになるため、休日でも手軽に業務をすることが可能となります。深夜に自宅などでも業務が可能なため長時間労働に陥りやすく、また社員によって勤務時間にばらつきが出ることで労務管理が難しくなる可能性があります。

さらに労働時間の明確な区切りが難しくなるため、過労や長時間労働が発生しやすくなるでしょう。その結果、従業員の健康問題や企業の法令遵守などの問題にもつながります。

運用ルール策定や社員の教育コストがかかる

会社が BYOD を適切に利用・運用するためには、端末利用ルールの策定が必要です。また会社によっては就業規則の改定などが必要となる可能性があります。こうしたルールや規則の策定や改定及び、それらを徹底させるための教育コストなどが必要となります。

さらに従業員が利用する端末や OS の種類が多様化すると、それに対応するためにサポート体制を整備しなければなりません。その結果、 IT 部門の負荷増加につながります。

3. BYOD のセキュリティ対策

BYOD はコスト削減や業務生産性の向上などメリットが多い一方、セキュリティリスクもあることは企業にとって大きなデメリットとなります。ここでは BYOD のセキュリティリスクへの対策方法について解説します。

社内のガイドライン・セキュリティ教育の徹底

BYOD をセキュアに利用・運用するためには、下記のような対策が考えられます。

  • 業務データを端末にダウンロードしない
  • マルウェア対策など、端末に必要なセキュリティ対策を実施する
  • 不特定多数の人がいる場では端末を利用しない

社内でこのような対策を整理し、BYOD 利用に対するセキュリティ・ガイドラインを策定する必要があります。その上で社員に対してセキュリティ教育を行い、ガイドラインの遵守を徹底させることでセキュリティリスクの低減が可能です。

サポート体制を整備する

社員がデバイスを安全に利用できるように、 IT 部門が迅速にサポートできる体制を構築します。たとえば、専用ヘルプデスクの設置や 24 時間対応などを検討することをおすすめします。万が一情報漏洩が発生した際の対応手順も策定しておきましょう。

アクセス制限を実施する

アクセス制限とは、業務システムやデータに接続できるデバイスやユーザーを制限し、不正なアクセスや情報漏洩を防ぐための仕組みのことです。アクセス制限を実施する代表的な方法は、下記のとおりです。

  • 社員のデバイスに証明書をインストールし、証明書を持つデバイスだけがシステムにアクセスできるように設定する
  • 多要素認証( MFA )を採用する
  • 企業ネットワークに接続できる場所・手段を制限する

VDI を導入する

VDI は「仮想デスクトップ」と呼ばれる、サーバー上で仮想的なデスクトップ環境を生成する技術です。サーバーから端末側に画面を転送することで、利用者側からは手元の端末上でデスクトップを操作できるように見えます。

VDI では端末側にファイルやデータを保持しないため、端末に対するサイバー攻撃や、紛失・盗難・物理的な破壊、従業員の悪意による情報漏洩を防ぐことが可能です。

クラウドベースの VDI サービスである Azure Virtual Dektop や、 AWS WorkSpace などは、仮想デスクトップ環境をクラウドベンダが提供するために、導入や運用のハードルが低くお薦めです。

デバイス管理サービスを導入する

クラウドベースで提供されるモバイルデバイス管理 ( MDM:Mobile Device Management )、モバイルアプリケーション管理 ( MAM:Mobile Application Management )を利用することで、社外に持ち出されたデバイスの安全を確保することができます。

MDM、MAM とはパソコン、スマートデバイス、携帯電話、タブレットなど、企業が管理するあらゆるデバイスとアプリケーションを制御する管理機能です。例えばデバイスの情報や、状態を一元管理する、インストールされるアプリケーションを制限する、特定のユーザーに電子メールが送信されないようにするなどが可能です。

Microsoft 社が提供する Microsoft Intune を利用すれば、インターネットに接続できる環境であれば、管理側のブラウザでデバイスの状態の一元管理が可能となり、デバイスの管理業務を大幅に効率化できます。

Intune が提供する機能:
  • デバイス管理:誰がどのデバイスを利用しているかを管理し、登録したデバイスは管理者が設定したポリシーやルールを受信することができます。
  • アプリケーション管理:デバイスに対しインストールできるアプリや、使用できるアプリを制限することができます。
  • 更新プログラムの管理:Windows Update などの OS の状態を常に最新に保つため、更新状況を管理することができます。
  • 条件付きアクセス:様々なパターンのアクセス制御を管理することができます。
  • 暗号化によるセキュリティ対策:対象のデバイスにソフトウェアをインストールするだけで暗号化の機能を導入することができます。

4. BYOD 導入を成功させるステップ

続いて、 BYOD 導入を成功させるステップについて詳しく解説します。

どの業務・部署でBYODを適用するのかを決める

BYOD の導入を成功させるためには、まず適用する業務や部署を明確にすることが重要です。すべての業務や部署に一律で導入するのではなく、業務内容やリスクを考慮して適用範囲を段階的に決めることで、効果的かつ安全に運用できます。

たとえば、下記のような業務は BYOD が適用しやすいでしょう。

  • リモートワークやテレワークが多い業務(営業、コンサルティングなど)
  • 外部とのコミュニケーションが頻繁に行われる業務(カスタマーサポート、広報など)
  • デジタルツールの活用が中心の業務(デザイン、システム開発など)

一方で下記のような業務は BYOD の適用を慎重に検討する必要があります。

  • 高い機密性が求められる業務(財務、人事、法務、研究開発など)
  • 特定のシステムや専用デバイスが必要な業務(製造、医療など)

BYOD ポリシーを策定する

BYOD を安全かつ効果的に運用するためには、明確なポリシー(利用規定)を策定することが重要です。たとえば、下記の項目についてポリシーを策定する必要があります。

  • 利用可能なデバイスの種類(どのようなデバイスが業務利用可能かを明記する)
  • セキュリティ要件(ウイルス対策ソフトの導入や OS の更新、パスワード設定など、デバイスに必要なセキュリティ基準を定める)
  • 業務利用範囲の明確化( BYOD を使用して行う業務と私的利用の範囲を区別する。業務に関連しない使用は禁止する場合はその旨を明記する)
  • デバイス紛失・盗難時の対応(紛失や盗難が発生した際の報告手順や対応について規定する)
  • 費用負担(デバイスの購入費用や通信費、修理費用など、企業と社員のどちらが負担するかを明確にする)

従業員へのセキュリティ教育を実施する

BYOD の運用では、社員一人ひとりがセキュリティリスクを正しく理解し、安全にデバイスを使用できることが重要です。下記のようなセキュリティ教育を実施しましょう。

  • 公衆 Wi-Fi のリスクやマルウェア感染の危険性について
  • フィッシング詐欺やなりすましへの対処方法
  • 策定した BYOD ポリシーの内容や社員が遵守すべきルールに関する説明など

ツールを導入・運用する

BYOD の安全性と利便性を確保するためには、 MDM や MAM などのツールの導入・運用が不可欠です。ツールを導入したら、まず一部の部署や限られた範囲で試験的に運用を開始しましょう。試験期間中にツールの実際の効果や操作性、社員の満足度などを評価します。試験運用で確認した課題が解消された後に適用範囲を徐々に拡大しましょう。

5. BYOD に適したソリューション

続いて、 BYOD に適したソリューションを2つ紹介します。

Microsoft Entra ID

Microsoft Entra ID とは、統合型のクラウド ID およびアクセス管理ソリューションのことです。 BYOD 環境でセキュリティを確保しつつ、スムーズなアクセスを実現するために活用できます。 Microsoft Entra ID では、下記の機能を利用できます。

多要素認証(MFA)

パスワードに加え、スマートフォンアプリや生体認証を使用した多層的な認証を実施することが可能です。 BYOD デバイスのセキュリティを強化し、なりすましや不正アクセスを防止できます。

シングルサインオン(SSO)

一度のログインで、 Microsoft 365 や他の業務アプリケーションにアクセスすることが可能です。煩雑なログイン操作を減らすことで、生産性向上につながります。

条件付きアクセス

ユーザーの場所やデバイスの状態、アプリケーションの種類に基づいたアクセス制御が可能です。たとえば、公衆 Wi-Fi からのアクセスを制限したり、セキュリティ要件を満たしていないデバイスのアクセスをブロックしたりといった対策が可能になります。

Microsoft Entra ID の詳細については、下記の記事をご覧ください。

Azure Virtual Desktop(AVD)

Azure Virtual Desktop( AVD ) とは、 Microsoft 社が提供している DaaS( Desktop as a Service )のことです。 AVD を利用すれば、クラウド上の仮想デスクトップに接続して安全に業務を行えます。たとえば、下記のような形で活用することが可能です。

  • 従業員が自身の PC から AVD に接続し、社内デスクトップと同じ環境で作業する
  • 外出中の営業担当者がタブレットから AVD に接続し、顧客情報や提案資料に安全にアクセスする

AVD の詳細については、下記の記事をご覧ください。

6. まとめ

BYOD は業務効率向上や機器コスト削減、シャドー IT 抑止など企業にとって大きなメリットがありますが、一方でセキュリティリスクのデメリットもあります。

企業が BYOD のメリットを最大限享受するためには適切なセキュリティ対策を施すことが重要です。特に VDI を導入することで、端末に業務データを保持することがなくなるため、抜本的なセキュリティ対策となります。

コスト削減や業務生産性向上のために、VDI や Microsoft Intune 、 Microsoft Entra ID の活用を含めて BYOD の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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Tag: Azureセキュリティ BYOD VDI

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