Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

フェイルセーフの事例を解説!Azureを活用したクラウドの安全設計

Category: 入門編

2025.10.24

フェイルセーフを導入する際の注意点も詳しく解説

フェイルセーフは、エレベーターの非常停止ボタンや、ガスコンロの火が消えると自動的にガスの供給を止める安全装置のように、異常が起こったときに処理や機能を停止・制限することで被害を広げない仕組みです。

IT インフラの分野でも同様に、障害や誤操作が発生した際に被害を最小化する設計が不可欠です。特にオンプレミスからクラウドへの移行が進む近年は、業務を止めない仕組みやリスクを抑える仕組みの重要性が一層高まっています。

Azure では、フェイルセーフを実現する多様なサービスが提供されています。本記事では、クラウド・ IT システムに特化したフェイルセーフの事例を取り上げ、そのメリットと導入時の注意点も解説します。

1. フェイルセーフの例①イミュータブルストレージによるデータ改ざん防止

システム運用では、誤操作や内部不正、外部攻撃によって大切なデータが削除・改ざんされるリスクが常につきまといます。特にクラウド環境ではアクセス権限が複雑になりやすく、意図せぬ変更が起こることも少なくありません。こうしたリスクを防ぐフェイルセーフの一例が「そもそもデータを変更できない仕組み」の導入です。

Azure Storage には、この考え方を実現する「イミュータブルストレージ(不変ストレージ)」機能があります。イミュータブルストレージは WORM ( Write Once Read Many )形式で提供され、保存したデータを一定期間変更・削除できないようにすることが可能です。単なる誤操作防止にとどまらず、セキュリティ対策や内部統制の強化にも役立ちます。

規制が厳しい業界での有効性

金融や医療など規制が厳しい分野では、取引履歴や診療記録を確実に残す必要があります。イミュータブルストレージを使えば、データそのものを改ざん不可能な監査証跡として保持でき、コンプライアンス対応の信頼性を高められます。

ランサムウェア対策

ランサムウェアや内部不正による攻撃を受けても、保存済みの重要データは改ざんできないため、事後調査の根拠を確保できます。また、保持期間を柔軟に設定可能なため、法令や業務要件に応じて「消せない期間」を設計できる点もメリットです。

2. フェイルセーフの例②Azure Policyによる誤設定の強制防止

クラウド運用では、担当者のちょっとした設定ミスが大きなリスクにつながることがあります。たとえば、公開不要のリソースにパブリック IP を割り当てる、利用を制限しているリージョンに仮想マシンを作成するといった誤設定は、セキュリティ事故やサービス停止の原因となりかねません。

こうした人為的なミスを未然に防ぐ仕組みが Azure Policy です。 Azure Policy は、クラウド環境におけるリソースの構成ルールをあらかじめ定義し、それを強制できるサービスです。

管理者が「許可される構成」を決めておけば、利用者が違反するリソースを作成しようとしてもシステム側で自動的に拒否されます。つまり、危険な操作そのものを受け付けず、安全側に倒す設計思想=フェイルセーフを実現できます。

ポリシーの適用

たとえば「特定のリージョンには仮想マシンを作成できない」「パブリック IP の直接割り当ては禁止」といったポリシーを設定すると、それらに反する操作は自動的にブロックされます。これにより、誤ってリスクの高い構成を展開する事態を防ぎ、運用担当者の負担も軽減できます。

コンプライアンス対応

企業独自のセキュリティ基準や法規制をポリシー化すれば、組織全体で統一的なルールを徹底できます。結果として、コンプライアンス遵守や内部統制の強化にも直結する点が大きなメリットです。

3. フェイルセーフの例③AKSのPod自動再起動による異常復旧

アプリケーション運用では、コンポーネントが突然停止したり、応答しなくなったりすることがあります。従来であれば管理者が手動でログを確認し、対象のプロセスやサーバーを再起動して復旧させる必要がありました。この間はサービスが止まり、利用者に影響が及んでしまいます。

こうした復旧の遅れを防ぐ仕組みが、 Azure Kubernetes Service ( AKS )の自動再起動機能です。 AKS では、コンテナを稼働させる最小単位である「 Pod 」の状態を常時監視しており、クラッシュや応答停止を検知すると自動的に新しい Pod を起動して置き換えます。問題のある Pod は停止され、正常な状態に復帰する仕組みが標準で備わっているのです。

つまり、人手に依存せず「異常を検知したらすぐ安全な状態に戻す」設計思想=フェイルセーフを実現できます。

自動復旧

たとえば Web サービスの一部の Pod がクラッシュした場合、 AKS は直ちに異常を検知し、その Pod を終了させます。同時に新しい Pod を自動起動するため、利用者への影響を最小限に抑えつつ、可用性を維持することが可能です。管理者は復旧作業を行う必要がなくなり、対応時間を大幅に短縮できます。

信頼性の向上

利用者が多い Web サービスや、 24 時間稼働が求められる基幹システムにおいて、自動的に安全な状態へ戻せる仕組みは信頼性の確保に直結します。フェイルセーフを標準機能として取り入れることで、運用負荷を軽減しながら継続的なサービス提供を実現できます。

4. フェイルセーフを導入する際の注意点

フェイルセーフは有効な仕組みである一方、導入にあたってはいくつかの課題やリスクも存在します。主な注意点は以下のとおりです。

コストの増加

冗長化や多重化を行えば安全性は向上しますが、その分ハードウェアやクラウドリソースの利用料が増加し、システム維持に必要なコストが膨らみます。限られた予算のなかでは「どこまで冗長化するか」を取捨選択することが重要です。

柔軟性の低下

誤操作防止やアクセス制御のルールを強めすぎると、運用担当者が本来必要な作業まで制限され、開発や運用のスピードが損なわれるおそれがあります。安全性と俊敏性を両立させるためには、システム全体に影響を与えるルールと、限定的に適用するルールを適切に使い分けることが重要です。

安全設計への過信

「システムがすべてを守ってくれる」と考えてしまうと、利用者に対する教育や利用者自身の注意力が不足し、結果的に手順逸脱やヒューマンエラーによるトラブルを招きかねません。技術的な仕組みづくりとあわせて、ユーザー教育や運用ルールの徹底を並行して行うことで初めて、フェイルセーフは十分に機能します。

5. まとめ

フェイルセーフは、障害や誤操作といった予期せぬ事態に備え、被害を最小限に抑えるための重要な設計思想です。 Azure にはイミュータブルストレージ、 Azure Policy 、 AKS の自動再起動といった機能が揃っており、クラウド環境に適したフェイルセーフを実現できます。

ただし、導入にはコストや柔軟性、安全設計への過信といった課題もあるため、自社の要件に合わせてバランスの取れた構成設計を行うことが不可欠です。 Azure でのフェイルセーフ設計に不安がある場合は、 Rworks へご相談ください。要件定義から設計・運用支援まで幅広く対応し、業務特性に応じた最適な仕組みをご提案します。

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