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効率的にフェイルセーフ設計を実現できるAzureのサービスも紹介
フェイルセーフ設計とは、システムに障害や誤操作といった異常が発生した際に、被害を広げず安全な状態を維持することを目的とした設計思想です。クラウド活用が進む現在、複雑なシステム環境や多様な利用者を前提とする以上、誤操作や障害を想定した設計の重要性は高まっています。
特に Azure には、フェイルセーフ設計を支える仕組みが数多く用意されています。本記事では、フェイルセーフ設計の基本概念からプロセス、設計のポイントまでを整理し、クラウド時代に求められる安全なシステム基盤の構築方法を解説します。
1. フェイルセーフ設計とは
フェイルセーフ設計とは、システムに障害や誤操作といった異常が発生した際に、処理や機能を停止または制限することで被害を広げないようにする設計思想です。たとえば、自動車のブレーキが異常を検知した場合に車両を強制的に停止させる仕組みや、工場設備に設置された非常停止ボタンは、すべてフェイルセーフ設計の例です。
この考え方は IT システムにおいても欠かせません。クラウドの普及によってシステムは複雑化し、利用者や運用担当者も多様化しています。誤操作や設定ミス、想定外の障害は必ず発生する前提で設計する必要があります。
フェイルセーフ設計を取り入れれば、データの消失やシステム全体の停止といった重大インシデントを未然に防ぎ、サービスの信頼性を高めることが可能です。
2. フェイルセーフ設計の基本プロセス
フェイルセーフ設計を進める際の基本的な流れは以下のとおりです。
1. リスクの洗い出し
どのような障害や誤操作が起こり得るかを整理し、発生頻度と影響度を評価します。
2. 要件定義
フェイルセーフをすべてのシステムや機能に適用するのはコストや運用負荷が大きく、現実的ではありません。そのため、どの部分を優先的に守るべきかを定義します。「顧客データ」「決済処理」など、障害が発生した際に影響が大きい領域に優先的にフェイルセーフを設計し、それ以外は別の手法で補うといった切り分けを行いましょう。
3. 対策の設計
洗い出したリスクと要件を踏まえ「どの異常をどのように安全側へ制御するか」を設計に落とし込みます。停止すべきか、制限すべきか、あるいは自動復旧させるのかを整理します。
4. 検証とテスト
設計通りに安全に制御されるか、シナリオごとに検証を行います。運用中も継続的にテストと改善を繰り返しましょう。
3. フェイルセーフ設計のポイント
フェイルセーフ設計は、障害や誤操作が発生した際に被害を最小化できる有効な仕組みですが、導入には課題も多くあります。たとえば、制御を強めすぎると運用の柔軟性が損なわれ、冗長化や多重化によってコストが増大するおそれもあります。
クラウドサービスである Microsoft Azure には、フェイルセーフ設計を支援するための機能が数多く用意されています。従来のオンプレミス環境では個別に実装・運用が必要だった仕組みを、比較的容易に組み込むことが可能です。
ここでは、フェイルセーフ設計を行ううえで意識すべき主要なポイントを整理し、 Azure の活用例を紹介します。
危険な状態を最小化する
フェイルセーフ設計の基本は、異常発生時に「危険な状態」に陥る範囲をできるだけ限定することです。システム全体を強制的に止めるのではなく、クリティカルな領域だけを重点的に保護することで、ほかの機能やサービスは利用可能な状態を維持できます。
Azure で活用できるサービス・機能例は以下のとおりです。
- Azure Policy :危険なリソース構成を禁止し、セキュリティ基準を満たさない環境をあらかじめブロックします。
- リソースロック:重要なリソースに対して削除や変更を防ぐロックを設定し、誤操作による重大な障害を回避します。
多層防御を組み合わせる
いくら強力な安全装置を導入しても、 100% の安全は存在しません。安全装置そのものが障害を起こす可能性や、外部からの攻撃を受けるケースも考慮すべきです。そのため、複数の層で防御を施し、どこかが突破されても全体を守れる構成にする必要があります。
Azure で活用できるサービス・機能例は以下のとおりです。
- Azure Application Gateway + WAF :外部からの攻撃や異常なアクセスを検知し、アプリケーション層で遮断します。既知の脅威への対応だけではなく、カスタムルールで業務に合わせた柔軟な防御が可能です。
- Microsoft Entra ID 条件付きアクセス:ユーザー / デバイス / 場所 / リスクに応じてアクセスを動的に制御できます。高リスク時は MFA (多要素認証)を強制、特定条件下ではアクセス拒否など、認証前後で被害を食い止めます。
現場の運用実態を踏まえてリスクを想定する
設計者が机上で考えるだけでは、実際の運用で役立つフェイルセーフ設計にはなりません。過去の障害事例や運用フローを踏まえ、どのような誤操作が起こり得るのか、どのタイミングで異常が検知されるのかを現場とすり合わせる必要があります。
Azure で活用できるサービス・機能例は以下のとおりです。
- Azure Monitor / Azure Log Analytics :システムの稼働状況やログを収集・分析し、現場で実際に起こっているエラーや傾向を可視化します。これにより、設計段階では想定しにくい運用上のリスクを把握し、フェイルセーフ設計に反映できます。
技術対策と人の運用ルールを組み合わせる
技術的な仕組みだけでは、人間のミスを完全に防ぐことは困難です。また、運用ルールを設定しても、利用者が守らなければ事故は発生します。したがって、ルール整備や教育と、技術的な仕組みを組み合わせることが欠かせません。
Azure で活用できるサービス・機能例は以下のとおりです。
- Azure RBAC (ロールベースアクセス制御):ユーザーやグループごとに必要最小限の権限だけを付与することで、誤操作や不正利用のリスクを低減させます。
自動復旧で障害の影響を最小化する
どれほど注意深く設計しても、障害や不具合を完全に防ぐことはできません。そのため、問題が発生した際に素早く復旧し、影響範囲を最小限に抑える仕組みを取り入れることが重要です。
Azure で活用できるサービス・機能例は以下のとおりです。
- Azure Kubernetes Service ( AKS )の自己修復機能:障害が発生したコンテナを自動で停止・再起動し、システム全体の停止を防ぎます。これにより、運用者が介入しなくても安定稼働を維持し、サービスの継続性を高められます。
4. まとめ
フェイルセーフ設計は、システムに障害や誤操作が発生した際に被害を広げず、安全に制御するための重要な仕組みです。クラウド時代のシステムは複雑化しており、すべてのリスクをゼロにすることはできません。そのため「どこを守るか」を見極め、優先度を踏まえた設計と運用を行うことが重要です。
Azure には、フェイルセーフを支える機能が多数用意されており、効率的に導入できます。自社の要件に沿ったフェイルセーフ設計を検討したい場合は、 Rworks にご相談ください。要件整理から設計・運用支援まで、最適なクラウド基盤の構築をサポートします。
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