成功事例を参考にして効果的なBCPを策定しよう
自然災害やサイバー攻などの突発的な事象は、ビジネス活動へ大きな影響をもたらします。 BCP (事業継続計画)を策定すれば、このような事象が発生した場合においても、迅速に復旧して事業を続けられます。企業の信頼性を高められ、競争力の維持にもつながるでしょう。
BCP を効率的に策定するためには、他社の事例を参考にするのがおすすめです。他社の成功事例から学ぶことで、自社に適した BCP 計画を策定できるでしょう。
本記事では、 Azure を活用した BCP 対策の事例を 6 つ紹介します。BCP 対策の運用のポイントも解説しますので参考にしてください。
1. Azureを活用したBCP対策の事例6選
Azure のサービスは BCP 対策を行う目的でも活用されています。はじめに、 Azure を活用した BCP 対策の事例を 6 つ紹介します。
①【製造】Azure FilesとAzure File Syncを組み合わせ、コストを半減しつつハイブリッド型の基盤を構築
日機装株式会社は、特殊ポンプからビジネスをスタートさせ、航空宇宙・メディカル・深紫外線 LED など、幅広い事業を展開しています。オンプレミスからクラウドへの移行を推進するために、 5 つの事業所の内、 2 拠点のファイルサーバーの一部データをクラウド ストレージへ移行しました。
クラウド基盤として採用したのが Microsoft Azure です。また、 Azure Files と Azure File Sync を組み合わせ、 Azure とオンプレミスを連携させました。
これにより、オンプレミスと同等のパフォーマンスを維持しつつ、容量を柔軟に拡張できる環境を以前の半分以下のコストで実現しました。さらに、ファイルバックアップなどの運用コストや作業負担を大幅に削減することができました。将来的には、他の事業所でも同様の移行作業を計画しています。
※参考:Azure Backup と Azure File Sync でハイブリッド型ファイル サーバーを構築した日機装 | Microsoft Customer Stories
②【製造】SAP on AzureでSAPシステムのクラウド移行プロジェクトを推進
ブラザー工業は、プリンター・複合機や工作機械、家庭用ミシン、業務用通信カラオケシステムなどをグローバルに展開している企業です。事業継続性確保のため SAP システムの移行が求められており、下記のステップで移行作業を実施しました。
- 第一ステップ( 2014 年)→本社ビル(名古屋市)のシステムを東京のデータセンターへ移行
- 第二ステップ( 2020 年~)→災害復旧( DR )対応を見据えたパブリッククラウドへの移行
移行先のクラウドとして Microsoft Azure を採用し、移行+ DR 対応として Azure Site Recovery を利用しました。週末 2 日間、トータル 30 時間という短期間で BCP 強化のための移行を完了させることができました。
※参考:SAP on Azure で基幹システムの DR 構成を実現、ブラザー工業が挑んだ大規模 SAP システムのクラウド移行プロジェクトとは | Microsoft Customer Stories
③【専門サービス】AVDとCitrix Cloudを組み合わせ、コスト削減と運用負荷軽減を実現
インテックは TIS インテックグループの中核企業として、 IT 技術の活用支援を実施しています。 2020 年 1 月に「マネージド型仮想デスクトップサービス」を開発・リリースしました。
インテックは、 Azure Virtual Desktop ( AVD )と Citrix Cloud を組み合わせ、短期間でクラウド VDI 環境を構築しました。構築したクラウド VDI 環境は、社内 LAN に障害が起きたとしても外から Azure の環境に接続できるため、 BCP の観点でも有効な構成となっています。
Azure Virtual Desktop ( AVD )と Citrix Cloud を利用し、約一ヶ月半の短期間で 1,000 ユーザーのクラウド VDI 環境を構築することができました。コスト削減や運用負荷の軽減にもつながっています。
※参考:AVD+Citrix Cloud のマネージド型サービスを自社導入、短期間の環境構築を実現したインテックのクラウド VDI 移行プロジェクト | Microsoft Customer Stories
④【専門サービス】Azureのマネジメントサービスを活用し、システムの機能性・生産性・保守性を大きく向上
FutureOne は、中堅中小企業向け ERP ・基幹業務システムを累計 6,000 社に提供してきた実績があります。基幹業務パッケージ「 InfiniOne® 」シリーズのクラウド対応を加速させる必要があり、 Azure のマネジメントサービスを積極的に活用しました。
FutureOne が導入したサービスは、下記のとおりです。
- Microsoft Entra ID(旧称 Azure Active Directory )
- Azure Monitor
- Azure Backup
- Azure DevOps
- Azure Database for PostgreSQL
Azure の PaaS サービスを活用したことで、「 InfiniOne® 」シリーズの機能性・生産性・保守性を大きく向上させ、 BCP 対策を強化しています。
※参考:「InfiniOne®」で中堅中小企業を支える FutureOne がデータベース刷新! Azureフル活用で要望に対応、新しいチャレンジへ | Microsoft Customer Stories
⑤【保険】Azure PaaSへリフトすることでシステムの抜本的な改善・効率化を実現
全国電力生活協同組合連合会は、組合員の生活向上を目的とした火災共済事業を運営しています。ハードウェア・ソフトウェアの老朽化により、システムの抜本的な改善・効率化に着手する必要がありました。
全国電力生活協同組合連合会は、 2018 年 からオンプレミス環境からクラウド( IaaS )へのリフトに着手。さらに、ライフサイクルの長期化(コスト削減)に向けて、 IaaS へのリフトに続き PaaS へのシフトを検討し、 2021 年 3 月からプロジェクトを始動させました。
PaaS 化を含めた今回のモダナイゼーションの取り組みは、 BCP 対策やユーザビリティの向上の実現に向けた基盤整備という位置付けになっています。
将来的な PaaS の活用を見据えて、 Azure SQL Database が利用できる Azure を採用しました。さらに、 Web アプリケーションサーバーやデータベースサーバー、管理ツールを Azure PaaS にリフトしました。今回の PaaS 化によってログが見やすくなり、従来よりも運用を効率化することができました。
※参考:汎用機から IaaS、PaaS へのシフト、段階的モダナイゼーションで Java on Azure を実践! 全国電力生協連のシステム変革 | Microsoft Customer Stories
⑥【高等教育】SAP on Azureを活用してSAPシステム基盤のクラウド化を実現
早稲田大学は、私立大学として日本初の SAP 活用による学校会計システムを構築しました。さらに次のステップとして、 SAP システム基盤のクラウド化を検討していました。
また、 BCP/DR 対策の強化や運用効率化を目指すため、オンプレミス環境で運用してきた SAP システムを「 SAP on Azure 」へ移行することを決定します。
SAP on Azure へ移行したことにより、下記の効果を得ることができました。
- BCP 対策の強化
- コスト最適化
- HW 運用保守からの脱却
- 運用性の向上 など

図版出典:Microsoft公式サイト
※参考:汎用機から IaaS、PaaS へのシフト、段階的モダナイゼーションで Java on Azure を実践! 全国電力生協連のシステム変革 | Microsoft Customer Stories
2. BCP対策の運用ポイント
ここでは、 BCP 対策の運用ポイントについて解説します。
バックアップ運用の自動化
手動のバックアップ作業は、作業ミスが発生するリスクがあります。バックアップ運用を自動化することで、ミスを防いでデータを確実に保護することが可能です。
また、バックアップ運用の自動化により、 IT 担当者の作業負担を軽減し、より重要なタスクに集中できるメリットもあります。バックアップ運用の自動化では、バックアップを取得する時間を計画的に設定することがポイントです。
セキュリティ対策の維持・強化
セキュリティ対策の維持・強化によって、 BCP (事業継続計画)を支える基盤を構築できます。サーバー攻撃が多様化する昨今では、セキュリティ対策を継続的に強化することが重要です。下記のようなセキュリティツールを活用することで、セキュリティレベルを高められます。
- Azure Firewall :ネットワークのトラフィックを監視・制御し、不正なアクセスを遮断する
- Microsoft Entra ID :ユーザー認証、シングルサインオン( SSO )、多要素認証( MFA )などを提供する
- Microsoft Defender for Cloud : Azure 環境全体のセキュリティを管理・強化できる
- Azure Monitor : Azure のアプリケーションやリソースを監視し、パフォーマンスや可用性のデータを提供する
復旧手順の継続的な改善
システムのアップデートに伴い、復旧手順は継続的に改善する必要があります。 そのため、過去の復旧訓練や実際のインシデントから得た教訓を手順に反映することが重要です。新しいツールや自動化技術を活用し、復旧効率を向上させる取り組みも必要になります。
文書管理の徹底
文書が分散していると、必要な情報を迅速に共有できず復旧の遅れにつながります。復旧手順や BCP 関連文書を適切に管理することで、必要な情報を迅速に共有でき、復旧作業を効率的に進めることが可能です。監査やコンプライアンス要件を満たすことにもつながります。
3. まとめ
BCP 計画を効率的に策定するためには、他社の事例を参考にすることをおすすめします。Microsoft Azure へ移行することで、事業継続性( BCP )を確保しつつ、柔軟な IT インフラを構築することが可能です。特に Azure Site Recovery は、企業の BCP を支援するサービスとなっています。
Azure Site Recovery の詳細については、下記のページをご覧ください。
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Tag: BCP対策
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