Managed Service Column <システム運用コラム>

Category: 実践編

2026.08.17

運用対応に追われる状態から抜け出すための改善のヒント

「セールやキャンペーンのたびに運用負荷が集中する」「新機能のリリースやイベント対応のたびに、監視設定や運用手順の追加・見直しが発生する」。こうした状況に心当たりはないでしょうか?

サービスの成長に伴い、利用者の増加や機能追加に合わせて運用業務も複雑化していきます。一方で、多くの現場では日々の対応を優先せざるを得ず、改善活動や標準化は後回しになりがちです。その結果、特定の担当者へ負荷が集中するなど、運用体制そのものに課題を抱えるケースも少なくありません。

こうした状態は、すぐに大きな問題として表面化するとは限りません。しかし、開発や改善に十分なリソースを割けなくなることで、新機能の投入が遅れたり、サービス品質の維持が難しくなったりと、担当者個人の問題にとどまらず、将来的なサービス成長そのものへ悪影響を及ぼすおそれがあります。

本記事では、サービス成長企業で起こりやすい運用負荷の実態を整理するとともに、運用負荷がサービス成長へ及ぼす影響や、成長を支える運用の考え方について解説します。

1. なぜ「リリースするたびに忙しくなる」のか?運用負荷が積み上がる3つのケース

運用負荷が積み上がる3つのケース

サービスの成長に伴い、追加機能の開発が進むことで運用負荷も高まっているケースは少なくありません。ここでは、サービス成長企業で起こりやすい運用負荷の実態を 3 つのケースで紹介します。

ケース①:新機能の追加に伴い、運用業務が増え続けている

新たなシステムや外部サービスとの連携を伴う機能を追加するたびに、監視設定やアラートルールの追加、手順の整備、通知時の対応といった運用業務が発生します。

また、機能が増えるほど障害発生時に確認すべき範囲も広がります。自社システムだけでなく、連携先のサービスや通信状況まで確認する必要があるため、原因の切り分けや関係者との調整に時間がかかりがちです。

機能追加に合わせて運用方法を十分に整理できないまま対応を続けると、一時的に追加した監視設定や手順が残り、開発を重ねるたびに運用業務が積み上がっていきます。

ケース②:日々の運用対応に追われ、改善活動へ手が回らない

このように積み上がる運用業務に対して、自動化やドキュメント整備、監視設定の最適化、運用ルールの標準化といった改善活動に取り組む時間を確保するのは容易ではありません。運用の現場では、障害対応や問い合わせ対応、セール・キャンペーン対応、リリース対応など、優先度の高い業務が日常的に発生するためです。

特に、アクセスが集中するイベントや緊急対応が重なると、予定していた改善活動を中断せざるを得ない場面も出てきます。改善の必要性を感じていても、目の前の業務への対応を優先せざるを得ず、運用負荷を軽減するための取り組みに着手できない状態に陥ってしまうのです。

ケース③:特定の担当者へ運用負荷が集中している

運用業務が増えるにつれてシステム構成や運用ルールも複雑化し、ノウハウや技術的な判断が特定の担当者へ集中しやすくなります。たとえば、「この設定変更は担当者しか分からない」「障害発生時の対応はベテラン社員の判断に頼っている」といった状況です。手順や判断基準が十分に整理・共有されていなければ、担当者への依存度はさらに高まるでしょう。

また、特定の担当者へ問い合わせや確認が集中することで、本人の負荷が増えるだけでなく、ほかのメンバーが経験を積む機会も奪われてしまいます。

さらに、担当者自身も日々の運用対応に追われるため、手順書の整備やナレッジ共有まで手が回らず、属人化が解消されないまま運用が続いてしまうケースも少なくありません。

こうした状態では、担当者の異動や退職だけでなく、休暇や急な不在が発生した際にも対応が滞るリスクがあり、組織として安定した運用を維持しにくくなります。

2. 運用に追われる状態がサービス成長を止める3つの理由

運用に追われる状態がサービス成長を止める3つの理由

運用負荷の増加は、現場のエンジニアだけでなくサービス全体にも大きな影響を及ぼします。日々の運用対応に多くの時間を費やす状態が続けば、開発や改善活動に割けるリソースが減少し、サービス全体の成長スピードが鈍化しかねません。ここでは、運用負荷がサービス成長に与える主な影響を 3 つに整理して解説します。

①開発・改善へ十分なリソースを割けなくなる

障害対応や監視設定の見直し、セール・キャンペーン対応などに工数を取られると、本来取り組むべき新機能の開発や既存機能の改善に十分なリソースを確保しにくくなります。特に、開発とインフラ運用を同じ担当者が担っている組織では、優先度の高い運用対応が発生するたびに開発スケジュールの見直しを余儀なくされることもあるでしょう。

こうした状況が続くと、改善施策の検討や新機能の企画そのものが先送りになり、サービスを成長させるための取り組みが進みません。その結果、顧客の要望への対応が遅れたり、適切な時期に新機能を提供できず市場投入の機会を逃したりするおそれがあります。

運用工数が想定以上に膨らみ、開発・改善とのバランスが崩れた状態が続けば、サービスの成長速度は明確に落ちてしまいます。

②エンジニアが運用対応に追われ、生産性やモチベーションが低下する

運用対応が常態化すると、エンジニアは障害対応や問い合わせ対応、調査業務などに多くの時間を費やすことになります。本来は新しい技術への挑戦やサービス改善に取り組みたくても、日々の運用対応を優先せざるを得ない状況が続けば、生産性だけでなくモチベーションの低下にもつながりかねません。

さらに、計画していた開発作業が頻繁に中断されたり、突発的な対応でタスクの優先順位を何度も変更させられたりすると、業務全体の効率が大きく低下します。

近年はエンジニア人材の確保に難航する企業も増えてきました。経済産業省の資料でも、IT人材の不足は 2030 年に最大約 79 万人まで拡大すると予測されています。限られた人材が運用対応だけに追われ、付加価値の高い業務へ時間を割けない状態は、人材育成や定着の観点からも深刻な課題です。

引用:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果|経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 p.7

③改善活動が進まず、運用負荷がさらに増える

運用の改善や標準化は、短期間で効果が見える取り組みではありません。そのため、目の前の運用対応を優先する状況が続くと改善活動は後回しにされがちです。

しかし、改善が進まなければ運用手順や監視設定、ドキュメントなどを見直す機会も失われ、機能追加やサービス拡大のたびに運用業務が積み重なっていきます。その結果、その場しのぎで追加した運用ルールや監視設定が整理されないまま残り、運用そのものが複雑化していくリスクもあるのです。

こうして、運用対応が増えることで改善する時間が減り、改善できないことで運用がさらに複雑になるという悪循環が生じてしまいます。

「忙しいのはサービスが成長している証拠」と感じることもあるでしょう。しかし、運用負荷が増え続ける状態は、開発・改善のリソース不足や生産性低下を招き、組織の成長体制そのものを揺るがします。

特に運用負荷の慢性化は、短期的には表面化しにくいため注意が必要です。新機能投入の遅れやサービス品質の低下など、深刻な事業リスクとして現れてからでは手遅れになりかねません。

障害や大きな遅延が発生してからではなく、「今は回っている」と感じている段階で、運用負荷の蓄積に目を向けることが重要です。

3. 運用負荷を抑えながらサービスを成長させる理想の状態

運用の進め方や体制を見直せば、運用負荷を抑えつつ開発や改善へ十分なリソースを確保し、安定したサービス運営を継続できます。ここでは、サービス成長を支えるために目指すべき 3 つの状態を紹介します。

開発・改善へ継続的にリソースを確保できる状態

サービスの成長を継続させるには、障害対応や定型的な運用業務だけでエンジニアのリソースが埋まらない状態を目指すことが望ましいです。たとえば、監視設定の最適化や手順の標準化を進めることで、新機能の開発や運用改善へ継続的にリソースを割きやすくなります。

実際、 Google の SRE では、運用作業( Toil )が業務時間の 50 %を超えないよう管理し、残りの時間を改善や自動化などのエンジニアリング業務へ充てる目標を掲げています。これは、運用対応だけに追われる状態ではサービスの持続的な成長が難しくなるという考え方に基づくものです。

こうした状態を維持できれば、新機能の開発や改善を計画的に進められるようになり、サービス成長へとつながるでしょう。

参考:Google SRE – Operational Efficiency: Eliminating Toil

特定の担当者に依存せず、チームで運用できる状態

サービスを安定して運営するには、運用上の知識や判断を特定の担当者だけに集中させず、チーム全体で共有・分担できる状態を整えることも欠かせません。

たとえば、「このアラートは誰が確認するのか」「どの条件でエスカレーションするのか」「リリース前後に何を確認するのか」といった判断基準や運用手順が可視化されていれば、担当者の不在時にも対応が滞りにくくなります。

また、定型業務の分担や一次対応の切り分けができる体制があれば、特定の担当者への問い合わせの集中を防げます。その結果、個人の経験に頼る運用から、チームとして再現性のある運用へ移行でき、サービス品質も維持しやすくなるでしょう。

サービスの成長に合わせて、安定した運用を維持できる状態

サービスの利用者数や機能が増加しても、運用品質を維持しながら柔軟に対応できる体制を整えておくことも重要です。

たとえば、運用手順や判断基準の標準化に加え、自動化ツールや IaC ( Infrastructure as Code )、サーバーレスアーキテクチャなどを採用し、人手に依存しにくい運用基盤を整備することが効果的です。また、新機能の追加やアクセス増加を見据えて拡張しやすい構成を採用しておけば、アクセスが増えるたびに発生する手作業の負担や設定ミスを未然に防げます。

このように運用体制の整備と技術的な工夫を組み合わせることで、サービスの変化にも対応しやすくなり、長期的で安定したサービス提供を実現できます。

4. サービス成長を支えるために必要な視点

日々の運用対応に追われる現場では、改善活動にまで手を回すことは容易ではありません。だからこそ、運用の進め方や体制そのものを継続的に見直していく視点が不可欠です。ここでは、サービス成長を支える運用を実現するために意識したいポイントを整理します。

運用を日々の対応だけで終わらせない

まずは、日々発生している運用業務を「障害対応」「問い合わせ対応」「監視設定の見直し」「リリース対応」などに分類し、どの業務に工数がかかっているのかを把握することが重要です。

そのうえで、繰り返し発生している作業や、特定の担当者へ確認が集中している作業から優先的に見直すと、改善すべきポイントを整理しやすくなります。日々の運用を「対応して終わり」にするのではなく、改善へつなげる視点を持つことが、サービス成長を支える運用の第一歩です。

属人化を前提としない運用を目指す

属人化を防ぐためには、担当者を増やすだけでなく、判断基準や対応手順をチームで共有できる状態を意識しましょう。

たとえば、「どのアラートを誰が確認するのか」「どの状態になったらエスカレーションするのか」「リリース前後に何を確認するのか」といったルールを整理しておけば、担当者以外でも適切な一次判断を下しやすくなります。

属人化を完全になくすことは難しくても、特定の担当者へ過度に依存しない運用体制を少しずつ構築していくことが重要です。

継続的に運用を見直し、改善できる仕組みを持つ

改善活動を担当者個人の努力だけに委ねず、日常業務の一部として組み込む仕組みづくりも欠かせません。たとえば、週次・月次で運用を振り返る時間を設けたり、リリース後やキャンペーン終了後に運用上の課題を整理したりすることで、改善点を継続的に洗い出しやすくなります。

また、 24 時間 365 日の監視体制を社内で確保できない場合や、リソース不足で改善活動まで手が回らない場合は、運用業務の一部を外部へ委託したり、運用改善を伴走してくれるサービスを活用したりすることも有効な手段です。

5. まとめ

サービスの成長に伴い、新機能の追加や利用者数の増加に合わせて運用業務が増えることは避けられません。しかし、日々の運用対応に追われる状態が続けば開発や改善へのリソース確保が困難となり、エンジニアの生産性低下や改善活動の停滞など、サービス成長そのものを阻害するリスクにつながります。

そのため、「今は何とか回っているから大丈夫」と捉えるのではなく、自社の運用体制が今後のサービス成長にも対応できる状態なのか、早い段階で見極めることが重要です。サービス成長を支えるためには、日々の運用対応だけでなく、運用の標準化や改善を継続できる仕組みづくりも欠かせません。

Rworks の「 OPS-AID Works 」は、運用業務の代行にとどまらず、運用改善や標準化の取り組みを伴走型で支援するサービスです。運用負荷の増加や属人化に課題を感じている場合は、こうした伴走型支援サービスも視野に入れつつ、まずは自社の運用体制を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

次回(第2回)は「リリース後の手戻りはなぜ起こる?開発段階で考えたい運用設計のポイント」を解説します。ぜひご覧ください。

Free

資料ダウンロード

課題解決に役立つ詳しいサービス資料はこちら

資料ダウンロード
  • 伴走型運用サービス OPS-AID Works カタログ

    エンジニアの知見や経験を活かし、課題の整理や意思決定、実効性のある運用改善までをトータルにサポートする、OPS-AID Worksのサービス内容をご確認いただけます。

Tag: OPS-AID Works

Contactお問い合わせ

お見積もり・ご相談など、お気軽にお問い合わせください。

single.php