Managed Service Column <システム運用コラム>

Category: 入門編

2026.06.10

VMware環境からの移行を中心に、 HCI の選択肢と選び方を解説

オンプレミス環境の見直しや仮想化基盤の刷新を検討するなかで、 HCI ( Hyper-Converged Infrastructure )への注目が高まっています。

HCI は、従来のサーバー・ストレージ・ネットワークを分離した構成に比べ、シンプルで拡張性に優れた次世代インフラです。評価が高まる一方で、具体的な仕組みやメリット・デメリットを理解できていない担当者も少なくありません。

本記事では、 HCI の基本概念や従来構成との違い、代表的な選択肢、ユースケース、移行時のポイントを解説します。

1. HCIとは?基本概念と仕組みをわかりやすく解説

HCIが注目される背景、従来の 3 Tier 構成やCIとの違い、導入のメリット・デメリットを整理します。

HCIの定義と注目されている背景

HCI ( Hyper-Converged Infrastructure )とは、サーバー・ストレージ・ネットワークのインフラ要素をソフトウェアで統合し、 1 つのシステムとして管理するインフラ構成です。

従来は物理的に分離されていた各要素を仮想化技術で集約し、単一の管理基盤で運用できます。近年、 HCI への関心が高まる背景には、主に 2 つの要因があります。

①インフラ運用の複雑化

従来の 3 Tier 構成では、サーバー・ストレージ・ネットワークを個別の製品で構成・管理する必要があり、専門スキルや運用工数の増大が課題でした。クラウドの普及に伴い「シンプルで柔軟なインフラ」へのニーズが強まるなか、運用の複雑さを解消する手段として HCI が注目されています。

②VMware ライセンス体系の変更

2023 年末の Broadcom 社による VMware 買収後、 ライセンスがサブスクリプション型へ統合され、コスト負担の増大に直面する企業が増加しました。これを受け、 Nutanix をはじめとする別の HCI プラットフォームや、ハイブリッドクラウドへの移行検討が進んでいます。こうした状況下で、 HCI は VMware 環境リプレイスの有力な選択肢となっています。

従来型インフラ(3Tier構成)との違い

従来型インフラ(3Tier構成)との違い

IT インフラは、サーバー・ストレージ・ネットワークをそれぞれ独立した機器で構成する「 3 Tier 構成」が一般的です。機器が独立しているため、個別の接続設定が必要であり、構成が複雑化しやすい難点があります。

一方の HCI は、各サーバーの内蔵ストレージを統合ソフトウェアで共有管理し、コンピュート・ストレージ・ネットワーク全体を単一のリソースプールとして扱います。インフラ全体を一元管理できるため、ノード追加による容易なスケールアウトが可能です。

CIとの違い

HCI と似た概念に「 CI ( Converged Infrastructure )」があります。 CI は認定済みの機器を組み合わせたパッケージ製品であり、物理的な統合にとどまります。対する HCI は、ソフトウェアでリソースを統合するため、より柔軟なスケーリングと一元管理を実現可能です。

HCIのメリット・デメリット

HCIの主なメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
  • 設計、構築、運用がシンプル
  • 単一ツールでの一元管理により、工数やスキル要件を抑制
  • ノード追加による段階的な拡張が可能
  • 特定ノードの障害が全体停止に直結しにくい
  • 専用ソフトやライセンス費用が必要で、小規模構成では割高
  • ベンダーロックインのリスクがある(再移行時の負荷大)

2. HCIの代表的な4つの選択肢と選び方

HCIの代表的な4つの選択肢と選び方

HCI は「オンプレミスとクラウドの中間」に位置するインフラです。データを自社内に保持しつつ、運用負荷の軽減と段階的な拡張を両立できます。

「クラウドへ全面移行するほどではないが、従来の 3 Tier 構成のまま運用を続けるのも難しい」と考える企業にとって、 HCI は有力な選択肢です。

選択肢 向いている企業 主な特徴
vSphere + vSAN 既存のVMware資産を活かしたい 親和性が高い
ライセンス費用が課題
Nutanix 運用のシンプル化とコスト最適化を両立したい 直感的な管理UI
Azure Stack HCI Microsoft環境が中心 Azure連携前提
オープンソース系 コスト抑制と柔軟性を優先したい 技術リソースが必要

VMware vSAN + vSphere

既存の仮想化基盤で広く利用されている VMware 製品をベースとした HCI で、既存の VMware 資産や社内の運用ノウハウを活かしたい場合に有効な選択肢です。

既存の vSphere 基盤に、分散ストレージ機能の vSAN を組み合わせて実現します。管理ツールや運用フローを大きく変えずに導入できるため移行ハードルが低い一方、ライセンス費用が高額になりやすい点が課題です。

Nutanix

HCI 専業ベンダーとして市場を牽引してきた Nutanix 社の代表的な HCI プラットフォームで、運用効率化とライセンスコストの最適化を優先する場合に有効な選択肢です。

独自のハイパーバイザー( Acropolis Hypervisor )と、ストレージ機能を担う Controller VM ( CVM )、管理機能が統合されています。

直感的でわかりやすい管理 UI が評価されており、専任エンジニアが少ない環境でも容易に運用可能です。 VMware と比較してライセンスコストを抑えられるケースが多い反面、対応ツールや外部製品の選択肢が限定される場合があります。

Azure Stack HCI

Microsoft が提供する HCI であり、Windows Server 中心の環境で、 Azure とのハイブリッド連携を活かしたい場合に有効な選択肢です。

Hyper-V と Storage Spaces Direct を組み合わせ、クラウド連携を前提に構成されます。 Azure Backup や Azure Monitor と統合することで、ハイブリッドクラウド的な運用が可能です。

Active Directory など既存の Microsoft 製品との相性が良く、 Windows 中心の環境であればスムーズに導入できます。ただし、 Azure 連携が設計の前提となるため、純粋なオンプレミス運用のみを求める場合はオーバースペックになる点に注意が必要です。

オープンソース系

ライセンスコストを抑えつつ、インフラの柔軟なカスタマイズ性を重視する組織向けの選択肢です。

代表例として、 Proxmox VE ( KVM + Ceph などを統合した OSS 仮想化基盤)や、 OpenStack (クラウド基盤として機能する大規模 OSS )を利用するパターンがあります。

ライセンス費用を抑えられる点や、構成の柔軟性が高い点が大きなメリットです。一方で、設計や運用の難易度が高く、社内に十分な技術リソースと OSS 運用の知見が必要となります。商用サポートを受ける場合は、対応可能な国内ベンダーの慎重な選定が不可欠です。

3. HCIはどんなケースに適しているのか(ユースケース別)

HCI は万能なインフラではなく、強みを最大限に活かせる場面があります。特に効果を発揮する3つのユースケースを紹介します。

仮想化環境の運用をシンプルにしたいケース

HCI は既存の仮想化基盤において、構成の複雑さや運用負荷に課題を抱えている環境に適しています。

3 Tier 構成では、サーバー・ストレージ・ネットワークが独立しているため、障害対応や設定変更の際に複数領域を横断した対応が必要です。この場合、調査や切り分けに時間がかかります。

一方、 HCI はリソースを一元管理できるため、運用のシンプル化が可能です。特に「 1人 情シス」や、中小企業の IT 部門で大きな効果を発揮します。

スモールスタートをしたいケース

初期投資を抑えつつ、段階的にインフラを拡張していきたいケースにも HCI は有効な選択肢です。

従来の 3 Tier 構成では、将来の負荷を見越して潤沢なリソースを導入せざるを得ず、初期コストが膨らむ傾向があります。

対する HCI は最小構成からスタートし、必要に応じてノードを追加してスケールアウトできます。「小さく始めて必要な分だけ拡張する」柔軟な投資計画を立てられるため、成長途中の企業や負荷予測が難しいシステムで有効です。

拠点を分散したいケース

複数拠点へインフラを展開する要件にも、 HCI は威力を発揮します。

従来構成では、拠点ごとにサーバーやストレージを個別設計・構築しなければならず、運用負荷が増大しがちです。しかし、拠点ごとに専門人材を配置するのは現実的ではありません。

HCI であれば、小規模なノード構成を各拠点に配置し、本社から一元管理できます。現地の IT リソースを最小限に抑えつつ統一された運用を維持できるため、エッジ環境やリモートオフィスとの相性が抜群です。

4. VMware環境からHCIへ移行する際の注意点

既存の VMware 環境から HCI への移行は、「単なるリプレイス」ではなく、インフラ構成や運用設計そのものを見直す好機です。

一方で、 HCI への移行は選択肢や影響範囲が多岐にわたります。事前に要点を押さえておかなければ、想定外のコスト増加やトラブルを招きかねません。

注意点① 仮想マシン互換性の確認

VMware 継続 ( vSAN )の場合、互換性の問題は基本的に発生しません。一方で Nutanix や Azure Stack HCI 、オープンソース系へ移行する場合は、ディスクフォーマットや仮想ハードウェア仕様の違いにより変換作業が必要となります。

移行後のトラブルを避けるため、アプリケーションの動作検証を含めた事前検証( PoC )の実施が不可欠です。

注意点② ネットワーク再設計の必要性

HCI では、ストレージ通信も同じネットワーク上で行われるため、ストレージトラフィック用ネットワークの帯域確保、レイテンシ要件、冗長構成( NIC チーミングなど)を、 HCI の特性を踏まえて全体的に見直す必要があります。

注意点③ バックアップ/DR設計の見直し

既存のバックアップ製品が移行先に対応しているか、 HCI 標準のスナップショット・レプリケーション機能で要件を満たせるか、 RPO ・ RTO (目標復旧時点・時間)を達成できるかを確認します。

クラウド連携型 DR ( Azure Site Recovery など)への切り替えが必要なケースもあるため、「従来の手法が通用するとは限らない」前提で整理しましょう。

自社で進められるか、外部支援を検討すべきか

HCI 移行の難易度は、選択するプラットフォームで大きく異なります。自社のリソースや体制に応じ、内製と外部支援を適切に使い分ける視点が欠かせません。

自社で進められる目安
  • vSphere + vSAN への移行であり、既存の運用ノウハウを活用できる
  • 社内に HCI の設計・構築経験者が在籍している
  • PoC や移行計画の策定に十分な時間と人員を確保できる
外部支援が有効なケース
  • 運用経験のないプラットフォームへの移行や、業務影響を最小化する段階移行が必要
  • ネットワーク、バックアップ、 DR 設計を含めた包括的な見直しが求められる
  • 複数製品の比較検討や、ライセンスコストの試算段階から支援を受けたい

5. まとめ

HCI はサーバー・ストレージ・ネットワークを統合し、シンプルで拡張性の高いインフラ運用を実現するアーキテクチャです。従来の 3 Tier 構成に比べ、運用負荷の軽減や容易なスケールアウトなどのメリットがある一方、コストや設計面での注意点も存在します。

また、 HCI には複数の選択肢があり、特徴や適したユースケースが異なるため、自社の環境、体制、将来像に合致するシステムを選定することが重要です。

特に VMware 環境からの移行は単なる機器更改ではなく、インフラ全体の最適化を見据えた再設計の好機です。互換性やネットワーク、バックアップ、移行計画などのポイントを事前に整理し、段階的に進めるアプローチが成功の鍵を握ります。

「最適な HCI 構成がわからない」「移行の進め方に不安がある」といった課題があるなら、専門パートナーの活用が有効です。

Rworks では、 VMware 環境からの移行サービスを提供しており、移行先環境がオンプレミス・クラウドに関わらず、お客様の環境に適した構成設計から構築・運用までを一貫してサポートできます。HCI の導入検討時にも、ぜひ Rworks へご相談ください。

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